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子供を窒息から守ろう


私の仕事である言語聴覚士は言葉に加えて、実は食べる機能に関する専門家でもある。

今日は飲み込みの機能(嚥下機能)から見る窒息について書いていきたい。


子供の死亡原因を見ていると、窒息事故は非常に上位にある。

消費者庁によると2010〜2015年の間に食べ物を原因とする14歳以下の窒息死事故は103件。

六歳以下が8割超を占めていた。


ここで、食べ物による窒息はなぜ起こるのかを考えてみたい。


消費者安全調査委員会(消費者事故調)の調査によると、球形や楕円形だけでなく、立方体やブロック型のすべてで気道がふさがれ、窒息のリスクがあった。

さらに、球形の場合は6~20ミリで窒息につながるリスクがあるとしている。


例えば1歳児の口の大きさは3cmくらいだが、気道は1cm未満ともっと細いのでスポッと入ってしまうと容易に窒息し得るのだ。


これらは色んなところに書いてあり、よく注意喚起されていること。


今度は機能的に考えてみたい。
まずはこの画像を見てほしい。

引用:熊本回生会病院


これは、鼻から内視鏡を入れて、人の喉を上から見た時の写真。

通常時はこういう感じで食道入口部(食道の入り口)は閉じており、声帯は開いている。

呼吸をしないといけないから。


もちろん、口の中に食べ物が入ってモグモグカミカミしている時も、呼吸はしているので声帯は開きっぱなし。


いざ飲み込もうとゴックンと嚥下反射が起きた時に初めて、一瞬だけ息を止める。

この時、画像の手前に映っているフタ(喉頭蓋)が閉じて食道の入り口が開くことで、喉から食道に食べ物が通過していく。


ゴックンという反射
呼吸を止める
喉のフタを閉める
食道の入り口を開ける


これらのどのタイミングがズレてもうまくいかない。

すなわち、窒息または誤嚥をしてしまう。

誤嚥というのは、誤って気管の方に空気以外の異物が入ってしまうこと。



特に、子供の場合は口の機能、手の機能、呼吸機能、歯の生え揃いどれをとっても大人よりも未熟。


自分の口に合った大きさのものを口の中で噛み砕いてすり潰し、頬や舌を使って飲み込めるようにまとめて、喉奥に送り込む。

6歳未満の子供は特に、この過程のどこかで躓いてしまうことが多い。


よって、健常な大人よりも窒息が起こりやすいのだ。


☑️丸くてツルッとしてる物は口の中で保持できずに滑り、吸気と一緒に気道に吸い込まれる。

☑️粘り気が強いものは唾液を吸って、喉のフタや気管の入り口にひっついてしまう。

☑️固くて噛み切りにくいものはそのままの大きさで送り込まれしまい、気道を塞いで引っかかる。

☑️ペラペラの薄いものは声帯のところを覆うように引っ付いてしまう。


この4つのどれが起こっても気道が塞がり窒息に繋がる。

普段何気なく食べているので分かりにくいが、窒息というのはものすごく容易に起こり得る事故。


そのため、窒息が起こるだろう『環境要因』と『食品側の要因』をできるだけ減らす必要がある。


『環境要因』として注意することは、

✅食べることに集中させる
✅水分を摂ってのどを潤してから食べさせる
✅よく噛んで食べさせる
✅一口の量を多くしない
✅口の中に食品があるときはしゃべらせない
✅寝ている状態でたべさせない
✅なが食べをさせない
✅食事中に驚かせない
✅年長の子どもが乳幼児に危険な食品を与えることがあるので注意する


『食品側の要因』としては、

✅丸くてツルッとしているもの

プチトマト、ブドウ、さくらんぼ、うずらの卵、球形のチーズ、カップゼリー、ソーセージ、こんにゃく

▶️食べさせる方法
・1/4カットにして小さくする
・ソーセージは縦半分に切る
・こんにゃくは使用しない
・1㎝に切った糸こんにゃくを使用

✅水分を吸って粘り気が強くなるもの

餅、ごはん、パン類、焼き芋、カステラ、せんべい

▶️ 食べさせる方法
・水分を摂ってのどを潤してから食べる
・一口量を守って詰め込まない
・良く噛む

✅固くて噛み切りにくいもの

リンゴ、イカ、肉類、生のにんじん、棒状のセロリ、水菜

▶️食べさせる方法
・小さくする
・水菜は1-1.5㎝に切る
・イカは小さく切って加熱すると更に固くなるので注意

✅ペラペラの薄いもの

ワカメ、キャベツ、レタス、ほうれん草、小松菜

▶️食べさせる方法
・ワカメは細かく刻む
・柔らかく煮て、小さくする


ちなみに、


ピーナッツなどの豆類
ラムネ

などの丸くてツルッとしているかつ固いものは4歳以下に食べさせるのは推奨されていない。


今回の記事はかなり恐怖を煽るような感じになってしまって申し訳ありません。

パンなどで不幸な事故が起こってしまったというニュースが流れる度に本当に胸が締め付けられる思いなのです。

命を守るためには怖いと感じているくらいがちょうどいいと思っています。


今一度、ご家庭・保育所などでも食品の見直しをしてみませんか?


ここまで読んでくださりありがとうございます。

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