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ダイナモ人材(自燃型な人)を呼び起こせ!

こんにちは、秋山です。
今日は積読解消シリーズ「ダイナモ人を呼び起こせ」です。
2021年に出版された本で、もっと話題になってもいいのにな〜と思う一冊。Xでダイナモって調べると、スプラトゥーンのダイナモローラーしか出てこない。ダイナモ人材バズらせたい。


3行サマリー

  • ダイナモ人材とは、解くべき課題や目的を自ら設定し、解決に向かって情熱的に突き進む人たち

  • ダイナモ人材を無力化してきたのは、予測可能な未来を前提に、効率化を重要視しすぎた管理的経営プリンシプル

  • ダイナモ人材を呼び起こし、おもろい組織を作るには、経営プリンシプルの総取替が必要。有形資産から無形資産を重視するパースペクティブ変容が求められる。

ダイナモとは

ダイナモは、発電機という意味のことば。この言葉を組織活性の源泉となる層として最初に使ったのは、プロフェッショナルサービスファームのデービッド・メイスターです。

彼は、働く人を3つに分類しました。

  • ダイナモ(発電機):目的を持ち、自律的、精力的に働く人々

  • クルーザー(遊覧船):社内を遊覧(クルーズ)する処世術で生きている人々。フリーライダー

  • ルーザー(負け馬):組織、業務に適応できない人々

一番問題なのは、実はルーザーではなく遊覧しているだけのクルーザーだという。優秀な人材の中にクルーザーが何割いるだろうか?そして、自分自身の仕事時間がどの程度、ダイナモ的だろうか?

自分の権利を主張するが、現状を変えるアクションを起こさないクルーザーやルーザーが多ければ、問題が解決されるスピードよりも問題が生み出されるスピードの方がはるかに早く、組織はどんどん不活性化していく。

活力ない組織が生まれた理由

ダイナモ人材が減る・不活性化する理由は何か?それは、経営システムとその背後にあるプリンシプルの問題である。

①つぎはぎで、実行力を伴わない経営システム

1970年代の日本は輝いていた。日本にもファンの多いピーター・F・ドラッガーは、日本的経営を絶賛した。

課題中心の意思決定と実行力(Nemawashiで調整して組織的に実行)、雇用保障と生産性追求のバランス、人材の継続的育成(長期視点とOJTを通じた育成)が特徴だといった。

1980年代に入っても、製造業が生産性と品質で世界を凌駕し、平成元年時点で時価総額トップ15のうち11を日本企業が占めていた。

しかし、1990年前半にはいりバブルが弾けると、日本企業の強みだと言われていた部分が一点して、弱みとして糾弾されるようになった。うろたえた多くの日本企業の多くは、日本的経営の良さを十分に振り返ることをせずに、強みを捨て米国型の経営手法を次々と取り入れた。

株主重視やROE、ガバナンスとコンプライアンスの重視。30年かけてつぎはぎの経営システムになり日米の「悪いとこ取り(株主至上主義、過度な短期成果へのフォーカス、スピードと柔軟さを欠く官僚制組織)」が出来上がってしまった。

詳しくは、以下のnoteにもまとめている。

一方米国は2019年のビジネス・ラウンドテーブル(日本の経団連に相当)で株主至上主義から目的意識への変更と題して、企業が継続的に発展していくためには業績だけではなく、社会にいかに貢献していくかを示さねばならないとしている。

②オーバー〇〇の横行

過去の成功体験とアメリカ型の分析的な経営手法を過剰適応してしまった結果、現在の日本経営の危機が起きている。具体的には、オーバープランニング(過剰計画)、オーバーアナリシス(過剰分析)、オーバーコンプライアンス(過剰規則)だ。

戦略や計画には、意味付けや価値づけが必要です。ただ並んだ数字には実効性はありません。意味付け・価値づけが創造性のもとになるのに、計画すれば分析すれば創造性が高くなると勘違いして、失敗を恐れて、決めようとしない。

科学的分析や合理性など客観的な裏付けをひたすら求め、人間的主観を退けてきた経営プリンシプルを見直す必要があるのではないでしょうか。

③階層間の相互不信

効率化重視のため、対話やコミュニケーションの時間が削られてきた。経営・ミドル・ジュニア。階層間のコミュニケーション不足により、考えていることや悩みがお互いに察知・近いできず「聞いて・見て知っている事実」に「不信感に基づく創造」が重なることで溝が深まってしまったのだ。

経営の頭の中….
管理職と若手の元気のなさを嘆く。私が若い頃は…といった武勇伝がくちぐせ。一方で大胆な提案が上がってきても、エビデンス不足でなかなか承認しない。

ミドルの頭の中…
経営陣の不甲斐なさを隠れて批判しつつ、下には上の指示をそのまま下す。俺も本当はおかしいと思ってるんだけどさ…が口癖。おかしい!と上に物申すことはない。手柄は自分のもの、責任は部下もの。といった現象が起きたりもする。

ジュニアの頭の中…
会社の未来にも自分のキャリアにも希望を持てない。どうせうちの会社は…が口癖で管理職になりたくない。最低限の労力で業務こをこなして、及第点の評価とできるだけ早く変えることの両立が目標。

計画・分析をしすぎる組織では、現場から得た経験や人間の直感、実践しながら軌道修正するダイナモ人材は、無力化されてしまうのです。

新しい経営プリンシプル

本書では、人間中心経営の6要素を新しい経営プリンシプルとして掲げています。

perspective「視点」20世紀とは異なるモノの見方
・利己主義から利他主義へ
・短期(実績主義)から長期(ビジョンに基づく自律性)へ

purpose「目的」創造を駆動する相互主観性
・計画と実行から目的と実践へ
・情報処理のための組織から知識創造のための組織へ

passion「共感」人間の感情、共感、主観の復権
・理論分析から共感と相互主観性へ
・他者ストーリーから自ら語るナラティブへ

place「場」組織図でhなあい人間の場から構築される組織
・階層型組織から勇気的な場の組織へ
・同質性から認知多様性へ

prudence「賢慮」実践的知恵とリーダーシップ
・意思決定から実践的判断へ

partnership 共創のための「協力」
・自社中心からエコシステム主導へ

ダイナモを呼び起こすには

ダイナモの行動様式

  • 目的に尖る

    • 共通善の実現に向けた課題解決や、未来づくりに向けた利他的な問いと目的を立てる

    • 個人的な野望ではなく、社会的な大志につき動かされる

  • 行動主義

    • 精緻な分析をするよりもまず行動し、行動から得られる学びやネットワークを重視する

  • 可能性主義

    • できない理由よりも、できるかもしれない可能性に重きをおいて、物事を考え、組み立てる

  • 圧倒的熱量

    • 本気度が高く、突拍子も無い目標もできると信じて疑わない

  • 巻き込み力

    • 高潔な目的と良い未来を信じる熱量は他者に伝播して、仲間を増やす

  • 勇気と鈍感力

    • 自分のものの見方や行動が世間からずれていることを気にしない

  • 共感力

    • 世の中をマクロではなく、喜怒哀楽をもった人の集合体だと捉えている

  • 越境する力

    • 自分の組織や業界を超えて、新しい組み合わせや知を作る

  • 知的奔放さ

    • いたずらっ子のような好奇心とそれを言動に移す大胆さ

    • 目的に向かった時の一途さ

    • 夢や志を臆面なく語る純粋さ

    • 個人の打算ではなく、寛容・謙虚・思いやりからくる3つの心に基づく利他的な目標


ダイナモ組織をつくるには?

  1. 長期の視点に基づく利他的な目的を掲げる

  2. 試行錯誤の場やプロジェクトを作る

  3. 自ら思いを語るダイナモを集め、対話や実践行う

  4. 個の思いを、みんなの共通目的に昇華する

  5. 実践的判断を繰り返しながらプロジェクトを実行する

  6. 活動は常に外のエコシステムとつながりながら行う

  7. 多様な視点を確保する

  8. 同様の活動を次々と生み出し、仕組み化する

上記のように、旗をたてダイナモをあつめ、コトを起こしオオゴト化する。一回の打ち上げ花火ではなく、問題解決や組織づくりの基盤として仕組み化する。継続的に行うことで、会社は変われるんだ!!という空気を醸成し続ける。

その中で、ダイナモが活躍し、ダイナモ予備軍がダイナモへの成長していく。


個人的感想

経営のお題目として「ダイナモを呼び起こすぞ!」と息巻く会社は少なくないが、けっきょくのところ意思決定プロセスの中で、オーバープランニング・オーバーアナリシスから抜け出せず、ダイナモが無力化されていく姿をよく目にする。

組織システム(目標設定、評価)の中で、完全なダイナモ治外法権を認めるか、ダイナモ的行動や思考を高く評価する仕組みがないと実現は難しいのだろう。

例えば、成果は求めず、プロセスからの学びを評価の対象とする。一定期間は評価の対象としない。決めたことは問答無用で実現できる。本業と切り離して専任プロジェクトにする。

ミドルやジュニア層にいるダイナモ人材を殺さないためには、経営がダイナモを認めるしかない。それができなければ、ダイナモは辞めていくだろうし、無力化してルーザーになってしまうのがオチだ。エネルギーのあるルーザーは怖い、怖いぞ….


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