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愛のかたちのひとつとして

-「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。
「百年、私の墓の傍そばに坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」-

                     夏目漱石『夢十夜』「第一夜」より


私は学生時代、付き合っている人がいたが、しばらくして泣く泣くその人と
別れることになった。

そんな時、同級生から告白をされた。

話を聞くと私が彼と付き合っている時から  
密かに想いを寄せてくれていたという。

当時、
好きになったら気持ちを伝える主義だった私は(いい迷惑だ)、その事実に衝撃を受けた。

14年も前の話を今でも覚えている位に。

(あぁ、この人は気持ちを押し付けるのではなくこの時を待ってくれていたんだな。)

これが今でも心に残る、
〈相手を想い、待つこと〉
の尊さを知った出来事である。

返事を待つ、帰りを待つ、成長を待つ……
直接何かを伝える訳ではない。
ただ、それでも相手のことを信じて
ひたすらに待つ。

「待つ」ということは
立派な愛のかたちのひとつだ。

待った後に残るのは
どんな気持ちだろうか。

そんな機会が私にも訪れるのなら
また言葉にして書き留めようと思う。



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