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LayerXが研究開発を進めるAnonifyを用いた請求ワークフローのデモを公開

いつもお世話になっております。Osukeです。LayerXでは、ブロックチェーンのプライバシー保護プロトコルであるAnonifyの研究開発を行っており、先日、ホワイトペーパーや実装を公開しました。

さらに、先週のBlockchain TokyoでこのAnonifyをベースにした請求ワークフローのデモを公開しました。

この記事では、Anonify上での請求ワークフローとは一体なんなのか、現状の請求フローと比較してどういったメリットがあるのか、といったことを紹介していきます。

Blockchain TokyoでAnonifyを解説

毎月開催しているBlockchain Tokyoですが、今月はTEEとAnonifyを解説するオンラインイベントとして開催されました。最初に日本IBMの櫻井さんからAnonifyにおける重要な要素技術であるTEE(Trusted Execution Environmenrt)という技術について解説をいただき、そのあとにAnonify開発者のOsukeからAnonifyの理論的な内容の解説、そして同じくAnonify開発者のCipeからAnonifyをベースにした請求ワークフローのデモを行いました。

イベントの内容は全て以下の動画で公開されています。

https://www.youtube.com/watch?v=G9U_5CabLhU

Anonifyを用いた請求ワークフローの仕組み

ここで言う請求ワークフローとは、企業間取引で発生する一連の業務フローのことです。例えば、契約の締結から請求、送金、消込作業など一連のフローが挙げられます。そして、この企業間のやり取りは現状、紙やPDFで送られており、特に構成する業務から次の業務へ移るときに多くの人手による確認・突合作業、二重入力が存在します。つまり、現状の請求ワークフローはデジタル化されていません。今回のAnonify上でのデモは、デジタル化された請求ワークフローの一部である「請求をトリガーにした送金処理」を実装したものになります。

全体的な仕組みは下図のようになっており、会計SaaSとしてMoney Forwardを、銀行APIとしてGMOあおぞらネット銀行のsunabarを利用しています。

受注者が利用しているMoney Forwardで新たな請求書が作成されると、それをトリガーにバックエンドで動作しているAnonifyへ請求データが送られ、発注者側にも共有されます。さらに、それをトリガーに発注者の銀行APIを介して振込指示が送られます。そして、発注者は画面上でそれを承認することで送金が完了します。(実際の業務フロー・承認フローを簡略化した形としています。)

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ここでの利用者側にとってのポイントは、バックエンドで動作しているAnonifyを意識する必要がなく、フロントのSaaSのみを操作することで一連のフローが自動的に行われることです。なので、SaaSを利用する実際の業務を一切変える必要なく請求ワークフローのデジタル化がされることになります。

Anonify上で請求ワークフローを行うメリット

この請求ワークフローをAnonify上で行うメリットはなんなのでしょうか。考えられる請求データの連携方法を比較したのが下図になります。

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現状は各社がそれぞれ請求書データを送り合っていますが、ワークフローがデジタル化されていないので多くの人手による作業が発生してしまっています。一方、ブロックチェーンをベースにすると、複数企業をまたぐ業務フローが自動で行えるようになり効率化しますが、ブロックチェーン技術の性質上、請求データなどが他企業に見えてしまうプライバシー問題が生じてしまいます。

Anonifyをバックエンドにすることでブロックチェーン由来の企業間コラボレーションの容易性を備えつつ、取引に関係のない企業に対してはデータを秘匿化しながら請求データを共有することができます。加えて、共有をトリガーに次のワークフローである送金処理まで行ったのが今回公開したデモとなっています。

おわりに

LayerXではこのようなコアとなるチャレンジな技術の研究開発も進めています。特に、プライバシー保護はブロックチェーンの応用を進めていくと必ず直面する技術課題です。その課題解決のために必要となる技術は積極的に取り入れて研究開発を進めていきたいと思っています。

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