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【洋書多読】Tuck Everlasting(184冊目)

『Tuck Everlasting』を読了しました。

個人的には結構気に入っているお話ではあります。以下に、僕がこのお話が好きだと思った理由について、簡単に述べてみたいと思います。

理由1.テーマが深遠

『Tuck Everlasting』は、ある泉の水を飲んで不老不死になってしまった家族と、その家族と関わることになった少女の物語です。

「死ねない恐怖」というのが物語の経糸になっていますが、管見の及ぶ限り、このテーマを扱っている作品の白眉は手塚治虫の『火の鳥』だと思っています。

不老不死は人類が古代から求めてやまない究極の力です。どの時代のどの社会的成功者も、ほとんど間違いなく最終的には「健康」「長寿」に金をかけ始めます。これには例外がないようです。

けれど一方で、「死ねない恐怖」ついてはあまり語られることはありません。また、人というのは老いて死んでいくからこそ繁栄してゆくのだ、という逆説に対する想像力というのは、凡人にはなかなか理解し難いものがあります。

本書は児童書でありながら、この深遠なテーマに真っ向から取り組んでいます。児童書であるがゆえに、回りくどいメタファーもなく、正々堂々とこの問題を論じているんです。あるいは、児童書であるがゆえに、真正面から切り込みやすい主題になっているのかも知れません。

いずれにしても、「死ねないことの恐怖」は、自分たちの生について考える本当に良い機会になります。『Tuck Everlasting』も、間違いなくそのような書籍の一つであると思います。何十年もの長きに渡って読みつがれているのもそのためでしょう。

理由2.情景描写が秀逸

僕を含めた一般的な英語学習者は、フィクションにおける情景の描写が美しくて詩的になればなるほど、文章の構造を見失ってしまいがちです。だから、英文はシンプルでくせのないものを読むほうが、日本人として求められているような(試験に合格するとか)英語力向上には効果的なんです。

それが児童書が多読に向いている理由だったりします。児童書は英文の構造がシンプルで修辞的な表現の盛りだくさんなものが比較的少ないので、とっつきやすいんですね。

一方で、そういうシンプルな文章ばかり読んでいると、英語が持つ独特のリズム感とか音の響きと言ったものに対する感性が磨かれません。以前ネイティブの知人が「Oxford Bookwormシリーズは確かに英語の勉強にはいいんだけど、英文に抑揚がなくて、読んでてしんどくなるんだよね」っていってました。

これは「ラダーシリーズ」などにも言えると思うんですが、英語学習者向けに使用する語彙や文法を制限していたりするような「Graded Readers」と呼ばれる読み物は、この感受性の獲得の機会奪ってしまう可能性を孕んでいるので、ある意味で諸刃の剣なんですね(もちろん「Graded Readers」が英語学習集に大変有効な読み物であることは論を待ちません)。

けれどこの『Tuck Everlasting』には、その心配がありません。とにかく文章がとても美しいです。児童書のなかでも優れていると思います。

先の「不老不死」という深遠なテーマと相まって、独特の世界観をこの小説に与える、そんな英語で書かれていると思いました。

理由3.適度に骨のあると思われる「YL4.5」レベルの英語

個人的にはYLレベル4.0〜5.0くらいの英語を大量に読むことが、その人のその後の英語力の向上に大きくいい影響を及ぼすと思っています。

この辺のレベルの洋書ということですぐに思いつくのは『Wonder』ですが、これ以外にも、『Charlie and the Chocolate Factory』とか、結構いいのがいっぱいあります。

これより少し易しいレベルの洋書ももちろん多読にはとてもうってつけなんです。例えば『Who was 〜?シリーズ』がそうですし、不朽の名作『Frindle!』とかもYLレベルは4以下ですが、かなり読ませてくれます。『Holes』のルイス・サッカーの作品群でも『The boy in the Girl's Bathroom』はオススメですし、『Judy Moody in the Mood』とか『A to Z Mystery』とか挙げればいくらでもでてきます。

でも、ここからもう一段上に行くためには、やっぱりYL4〜の洋書を大量に読みこなして、こなれた英語表現、より洗練された英語表現に慣れていきたい。その取っ掛かりとして、この『Tuck Everlasting』はとってもオススメな洋書なんです。

この辺りになると、ちょっと難しい表現なんかがでてきたりして、TOEIC900点とかあっても、それなりに骨のある印象を読み手に与えてくれます。

自分の英語力より若干易しめの英語を大量に読む「パンダ読み」も英語力向上にはもってこいなんですが、たまに物足りなさを感じてしまう。でも、この『Tuck Everlasting』クラスの英文は、そうは問屋がおろしてくれないところがあって、「あー英語読んでるなぁ!」っていう気持ちにさせてくれます。

「効いてる」感じがするんですね。

というわけで、『Tuck Everlasting』はオススメです!

そんなわけで、かなり独断と偏見に塗れたレビューでしたが『Tuck Everlasting』をご紹介してみました。

いま僕は岡山県の備前市というところにある港町で過ごしているんですが、この宿泊先の窓の外に広がる穏やかなヨットハーバー(と漁港)を眺めながら本書を多読できたことは、本当に素敵な経験でした。

この街は牡蠣の養殖で有名な街なんですが、そんな海辺のほとりの漁師町で、英語の本を読みながら、人生について考える時間を持つことができたというのは、なかなか得ることのできない贅沢な時間だったと思っています。

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