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【洋書多読】Aristotle and Dante Discover the Secrets of the Universe(201冊目)

『Aristotle and Dante Discover the Secrets of the Universe』を読了しました。

本書はTwitterでフォローさせていただいている「ふぇい」さんと仰る方が、ご自身の多読ブログで絶賛されているのを拝見して、ずっと気になっていたものです。

今から10年ほど前に出版された本で、各方面で絶賛された本のようですが、僕は寡聞にして本書ことを知らず、ふぇいさんに教えていただいてやっと手にとったような次第です。

渡辺由佳里さんも、「洋書ファンクラブ」のなかで「周囲の人をすべて抱き締めたくなるような読後感」と最高の賛辞を送っておられるように、とても素晴らしい物語で、その圧倒的な長さにも関わらず、一気に読めてしまいました。
(ネタバレを思いっきり含んでいますので、ここではあえてリンクを貼ることはしないでおきます)

YAにしてはとても読みやすかった『Aristotle〜』

本書は渡辺さんの「洋書ファンクラブ」でもヤングアダルト小説として紹介されているように、児童書を読み慣れている僕にとっては、その対象年齢が少し上がるということで、ちょっと躊躇する部分はありました。

タドキストの間で有名なYA小説としては『The fault in our stars』とか『Stargirl』なんかがまず思いつきます。僕もどちらも読みましたが、英語圏のティーンエージャーの繊細な心を描写する英語はちょっと僕には手に負えず、読了する度に「自分の英語力はまだまだだ…」と痛感させられる羽目になったものです。

でも、こちらの『Aristotle〜』は、使われている英語はシンプルで、そんなにむずかしくありません。もちろん僕にはまだまだわからない表現もたくさんありましたが、それでもグイグイ読み進めることができました。

理由はおそらく、平易な英語表現だけにとどまらないとおもっています。

と言うか、ノンネイティブの僕にも十分理解できるようなシンプルな英語で、ここまで繊細に少年たちの揺れる心を描写できるということに驚きを隠せません。難しい英語で書けば何でもいい、ってもんじゃないなんだなってことはこの手の小説を読んでいると痛感します。

日本語だと、あまりにシンプルな表現のものはちょっと手に取りにくいですが(おっさんだから、というのもあるけど)、英語だとかえってそれがよくって、ついつい読んでしまいます。

先日読了した『Tokyo Ueno Station』同様、柔らかな、シンプルで飾らない文体に乗せて精密に綴られる登場人物の物語は、まさに「テクスト(TEXT:織られたもの)の意にふさわしい、ある種の芸術作品のような繊細さと美しさを備えていると思います。

ネタバレは辛いけど…

上でも少し触れましたが、これだけ評価の高い本なので、当然ですがどういうお話かという情報はネット上に出回っています。

僕は前述のふぇいさんのブログを気にこの本を購入し読み始めたのですが、実はこの本が何を主題にして書かれているか、というのは頭に入ってなかったんですね。

で、やや冗長とも言えるような序盤の展開に(単に僕が「いらち」なだけかもですが)最初は「こんなもんか…」と淡々と読み進めていったんですが、何かの拍子にふと渡辺さんの『洋書ファンクラブ』を見て、「え、そういう話やったん…」とちょっとネタバレしてがっかりしたのを覚えています。

でも、逆にそれがわかってからは、主人公であるAristotleとDanteの交わす会話のヒダと言うか、細かい部分がかなり迫ってくるようで、かえってそれを知ってから読み進めるほうがいいんじゃないか、という気がしてきました。

もし、首尾よく最後までネットその他の情報に翻弄されずに本書の主題に気づかないままで読みおおせることができたなら、これはぜひもう一度最初から読み直してみるべきだと思います。きっと気づかずにスルーしていた表現とか心情、何気ないセリフなどにあふれているはずだからです。

これは再読してよりその価値が出る、そういうたぐいの小説なんじゃないかな?と思いました。

そんなわけなんで、渡辺さんの「洋書ファンクラブ」の記述をけなすつもりは毛頭ありません。ふぇいさんのブログはかなりその辺りに配慮して、物語の本質的な部分に触れることをきちんと避けてくださっています。

今までに読んだ本の中でどうしようもないぐらいに好きで、どうしても世に出したくて、全ページ翻訳して日本語で17万字以上になった本の話【Aristotle and Dante Discover the Secrets of the Universe】【LGBT】【全ページ試訳済】【TIMEの選ぶYA向け書籍ベスト100にも選出】 | 1100万語読破のふぇいが紹介する洋書ブログ 今までに読んだ本の中でどうしようもないぐらいに好きで、どうしても世に出したくて、全ページ翻訳して日本語で17万字以上になった本の話【Aristotle and Dante Discover the Secrets of the Universe】【LGBT】【全ページ試訳済】【TIMEの選ぶYA向け書籍ベスト100にも選出】 私はこれまで数え切れないほどの英語の本を読んできました。短い絵本も含めれば数千冊になりますし、語数に換算する今まで読んだ t.co

「洋書ファンクラブ」へのリンクは張っておきますが、ネタバレがないようにちょっと細工しておきますね。「洋書ファンクラブ」での書評は→コチラから

すべての英語学習者(とそうでないひとにも)読んでもらいたい

そんなわけで『Aristotle and Dante Discover the Secrets of the Universe』でした。

ぜひ、全ての「英語が読める人」にこの本を読んで頂いて、AristotleとDanteが見つけたこの宇宙の秘密に触れていただきたいと思います。

いろんな意見があると思いますが、僕はポリコレ云々とかそういう政治的な話よりも、純粋に物語が持つ力強さとか、テクストが織りなす温かさ、美しさのうちに、この本の真髄は宿っているとおもっています。

英語もそんなに難しくなく、チャプターも細かく別れているので、まさに中級以上の方の多読にピッタリの条件を兼ね備えている一冊だと言えるでしょう。

惜しむらくは、ぼくが47歳のおっさんになってからこの本を読んでしまったということ。まあ高校生〜大学生のときなんて(外大に行ったにもかかわらず)今の10分の1くらいしか英語ができなかったので、もし当時本書が存在していたとして、読もうと思っても読めやしなかったでしょうけれど(笑)。

それにしてもこのような美しい小説を手に取れることの奇跡。ぜひぜひ原文で味わってみてください!あとふぇいさん、翻訳をぜひ世に出してください!

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