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【洋書多読】The Devotion of Suspect X(168冊目)
東野圭吾の大ヒット小説『容疑者Xの献身』の英訳版である『The Devotion of Suspect X』を読了しました。
日本語版を読んだことのある書籍の英訳版を読むというのはとても学習効果の高い多読法の一つですが、本書は日本語で読んだことはありませんでした。ただ、映画は見たことはあったので、ある程度情景を思い浮かべながら読み進めることができたと思います。
ただ、もしそういうのがなかったとしても、本書は大変読みやすい一冊でした。その理由を考えてみたいと思います。
YLレベル5.0〜5.5 非常にリーダブル
全体的な印象は「とても読みやすい」というものでしたが、その理由として「1.英語がリーダブルであること」「2.日本が舞台であること」「3.展開が面白すぎる」があげられると思います。
1.英語がとてもわかり易い
1つ目の理由として、英文が非常に「カチッと」していて砕けていないところが読みやすさにつながっている印象です。
なので、このYLレベルは純粋に英単語の難しさを示していると言えます。
とは言え、難しい英文法はたくさん出てきますし、時制についてきちんと意識しながら読み進めないと時系列が混乱して何の話をしてるんだかわからなくなる、ということは中級者くらいの英語学習者であれば起こり得ると思います。
けれど、英文そのものはまるで英検やIELTSなどの資格試験の長文問題のように端正です。妙な修辞的表現もありませんし、砕けた会話表現もそんなにたくさん出てくるわけではありません。
英検に関して言うと、2級に合格できる=高校卒業程度の英文法をすべて理解しているということになりますので、理論的にはそのレベルの方にも読める、ということになると思います。そして事実、英文に対して「勘がいい人」なら、文章の流れを見失う、ということはなさそうです。
ただ、英検2級レベルの「語彙力」では太刀打ちできないと思われます。
2.日本が舞台であること
洋書を読み進める上で「背景知識の有無」というのは難易度に大きく影響を及ぼします。その点で、日本が舞台の小説を読む、というのは圧倒的に洋書多読の敷居を下げてくれる、そんな風に思っています。
洋書の多読が難しい事の意外な理由の一つが「固有名詞がわからない」というものです。例えば彼の地で流通している食品の名前であるとか、もっというと地名であるとか、一般名詞にしても聞き慣れないものが多かったりすると、意外と話の筋を見失ってしまうものです。
僕が先日読了した『Stargirl』という洋書は僕にとってその典型で、アメリカのティーンが好むような服装なり食べ物なりの名前が頻繁に登場することに加えて、舞台であるアメリカアリゾナ州、フェニックス辺りの荒野に広がる野生動植物(サボテンのたぐいと思われる)の名称などが頻出する鋼板などは、何が書かれているんだか全くわからなくなってしまい、読むのを諦めようかと思ったくらいです。
日本の小説では、そういう事が起こる心配はありません。『Benten-Tei』という固有名詞も、ちょっと読めばすぐに弁当屋であることが分かりますし、near the bank of Edogawa River〜というフレーズもただ単に「江戸川のほとり」と言うだけでなく、土手の部分がコンクリートの人工物で覆われ、低い位置に芝生が敷設された河川敷の、その側にそびえる東京の下町あたりのマンション群とその向こうに見える陸橋‥みたいなものまで一気にばーっと頭の中に思い描くことができます。
こういう情景がイメージとして頭の中に描けるかどうかというのは英文法の知識とか理解以上に読解力そのものに大きく影響しているので、「あ、読めている」というポジティブな感覚を醸成してページをめくる手をより進めてくれることに、大きく貢献してくれたりするものです。
3.展開が面白すぎる
そして何より大切なのが「話が面白い」ということ、これに尽きるでしょう。
話が面白ければ少々分からなくてもページをめくる手を止めずにどんどん読み進めていくことができるというものです。不思議なもので、読んでいておもしろい話というのは少々英文が難しくてもスルスルと頭の中に入ってきます(スルスルと頭の中に入ってくるから面白い、という可能性もありますが)。
結果、少々難しい英文もなんとなく理解しながら読めていたりする。実際の英語力より難しい英語を知らない内に楽しんでいる経験というのは知らない内に英語力をあげてくれるものなので、読み終わったあとにはたいていちょっと難しいものが読めるようになっていたりするものです。
つまり成長しているんです。
そんなふうにして少しずつ、取り立てて学習した記憶もないのに英語力が伸びている。そういう不思議なインプルーブメントともたらしてくれるのが多読の素晴らしい所だったりするわけです。
気になった表現集
1.turn in〜
自首する、です。こういう探偵者の小説を読んでいれば間違いなく覚えちゃう句動詞です。
2.skip out on
「〈人を〉置き去りにする」「捨てて逃げる」「…を支払わずに立ち去る」など、色んな意味があるようですが、本書の文脈では「捨てて逃げる」っぽいですが、ちょっとここは難しかったです(「支払わずに立ち去る」を採用したいところだったけど、それだと文法的に変な文章になるので)。
3.which puts you home at
4.when I get a slow day.
これは直訳ではちょっとわからないですが、文脈から「時間があったら」とか「暇な日があったら」ということなのかな?と想像しました。DeepLでは「暇な日があったら」をいう訳が出ました。
5.feel 人 out
「”人”の意向を探る」です。
6.suits me.
suitsは「合っている/適合している」という動詞なので、自分(の考え)にあっている→つまり「それでいいよ、いいですよ」というふうに同意を与えるときの表現だそうです。
これ好き。いつか使ってみたいです。
ちなみに「suits you」は「勝手にしろ」となります。
7.take it out on
これは『パス単英検一級』の熟語編にでてくる表現で「八つ当たりする」とか「当たり散らす」とかいう意味です。本とかの中で実際に使われているのを見たのははじめてでした。
8.throw the ball on one's court
これは「あなた次第です」ということを表す表現のようです。ボールを相手のコートに投げたということですが、ボールが相手のコートにある、ということが本意なので、the ball is on one's courtなど、色んな使い方のバリエーションが有るようです。
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というわけで『The Dovotion of Suspect X』でした。
日本語のフィクションの英語訳の読みやすさ、面白さを痛感したので、次は村上春樹の『Men without Women』を読んでいます。
こちらもとってもリーダブルですが、英文は少しむずかしいのがあリます。でも好きな作家の小説なので、英訳版でもスルスル読めて快適です。
英語力を一弾あげたいなら、今日ご紹介した「背景情報がある」「日本が舞台」の英語を読むのがいいと思います。
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