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【洋書多読】How to Win Friends and Influence People(224冊目)

How to Win Friends and Influence People by Dale Carnegie
 
総語数:74,016 words (by Wordcounters)
 開始日:2023年7月15日
 読了日:2023年7月25日
 多読総語数:8,763,866 words

1931年、大戦間期のアメリカで刊行されて以降一世紀近く読みつがれているというDale Carnegieの名著『How to Win Friends and Influence People』を読了しました。

邦題は『人を動かす』。著者はデール・カーネギーという人で、僕が読んだバージョンは彼の死後、奥さんによって若干内容に変更が施されたもののようです。

原作のニュアンスを損なうことなく、時代にそぐわない部分をカットするなど最小限の変更のみ施されたという本書を2023年に読めるということの幸せと、本書がKindleでわずか46円(!)という幸せ。読む前からすでにダブルでハッピーな気持ちにさせてくれた本書。肝心の内容はどうだったでしょうか?

1世紀以上前に書かれたにもかかわらず、現代においても十分リーダブルな一冊

僕は実用書の類、具体的には『○週間で〇〇万円稼ぐ方法!』とか『SNSでフォロワー〇〇人増やした俺が教える・・・』的な本を唾棄すべきものとして忌み嫌っています。

だから「人を動かす方法を知って自分の思い通りにビジネスを展開しよう!」的な主題で書かれた本書は、「多読」という文脈でなければ、たとえ数十円の負担だったとしても絶対に購入しなかったと思います。

が、実際の内容はとても示唆に富むものでした。とりわけ本書に底流している「人は自分のことを大切な存在だと思いたがる(だから、その自己肯定感を損なわないように人と接することが成功の秘訣である)」という視点はとても有益だと思っています。

他者に応接するに敬意を持ってす。

社会生活における作法の王道で、古今東西あらゆる共同体で勧奨されていた人間存在の振る舞いです。

しかしながら近年は、他者に対して尊敬の念を抱くことを避けたがるだけにとどまらず「尊敬すべき人間の前で不遜な態度を取ることができるオレ/ワタシすごい」と言わんばかりに目上の人や他者に不遜な態度を取る人間が跋扈しているようです。

長期的にみれば不利益にしかならないような行動を慎むよりも、今その場での短期的・近視眼的な「快」を求めて行動することをよしとする現代の価値観の敷衍したことによるものと思われます。

昨日、50歳にして今流行りのFIREを果たし、悠々自適に暮らしておられる男性と、絶品スペアリブを絶品シングルモルトウイスキーでいただきながらお話していた時のトピックがまさにこれでした。

その男性しかり、社会的に成功されている方あるいは日常生活を軽やかに楽しく過ごしておられる方というのは、基本的な他人に対する振る舞いが「リスペクト」にあふれています。

僕のような人間に対してですら、その中に何か光るものを見つける努力を惜しまれず、あくまでも対等な一個人同士として接してくださる。

でも、Dale Carnegieが生きた20世紀以降の世知辛い世の中では、そのような振る舞いがなぜだか自分の「負け」を認める記号として作用しているようです。とりわけ昨今においては、むしろいかに相手のマウントを取るかに関心が焦点しているように思います。

SNSのフォロワー数を競ったり、TOEICの点数を比べたり、シンプルに収入の多寡を比較して論じたり。そこで勝つためなら相手を蹴落とそうが罵ろうが、無礼な態度を取ろうが関係ない、と。

無礼で偉そうな態度をとってみせたりすることで、とにかく他人より0.1ミリでも自分が優れているように見せようとする。今その場で自分がいいカッコできればそれでいいわけです。

そういう振る舞いが当為の世の中で、この『How to Win Friends and Influence People』が今もってリーダブルであるということは、寿ぐべきことではなくてむしろ悲しむべきことなのかもしれません。

それくらい、現代人である今の僕たちにとっても古さを感じさせない一冊、それが本書だと思いました。

英語レベルは中級〜上級(の入口付近)

気になる本書の英語レベルですが、TOEICでいうと800点台のスコアが取れる方以上向け、英検だと準一級以上所持者くらいがちょうどいいかな、という感じがしました。

決して楽ではありませんが、このあたりの英語レベルの方が、本書に出現する難単語を少しずつ習得していくことでTOEIC900over,英検一級といったところに手が届き始めるんじゃないかと思います。

文章自体の難易度ですが、いわゆる英語系資格試験の長文読解問題としてそのまま採用されそうなシンプルでクセのない英文であるがゆえに、内容が硬い割にそんなに難しくは感じられません。この手の英文をたくさん読むことで、ある種の試験で測ることができる系の英語力はぐんぐん伸びていくと思います(会話力とかはあまり伸びないと思います)。

先日読了した20世紀を代表する名著の一つ『What I wish I knew when I was 20』にもまた似たような感覚を抱きましたが、英語は『How to win〜』のほうが全体的にちょっと難しいかもです。古い英語というのも関係しているかもしれません。

『How to win friends and influence people』が内容的に、あるいは英語的に気に入った方は、同じくデール・カーネギー著の『How to stop worrying and start living』を手に取って見るのもいいでしょう(まだちゃんと読んでないけど)。

こちらのKindle版、『How to win〜』と比べてお値段は倍以上とはなりますが、それでもわずか99円(2023年8月8日現在)ですから、決して高い買い物でもないと思います。


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