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【洋書多読】The More of Less(202冊目)

『The More of Less』を読了しました。

こちらは『より少ない生き方 ものを手放して豊かになる』という邦題で日本語訳が出ています。

邦訳版は読んだことはないですが、これはたいへん示唆に富んだ良い本だと思うので、ぜひ手にとって読んでいただきたいと思いました。

ミニマリズムを超えたミニマリスト本

本書がいいなと思ったのは、ものを手放して豊かに暮らそう!といういわゆる「ミニマリズム」の少し向こう側をのぞかせてくれていると思ったからです。

ものが少なくなると人生が豊かになるというのは、僕自身が今から6年前に部屋中を埋め尽くしていた色んなモノを手放して世界一周の旅に出た経験からよくわかっているつもりですし、あの時感じた自由の感覚が、この本では著者の経験を踏まえて詳細に描かれています。

本書のいいところは、単に「モノを捨ててシンプルに暮らそう!」というありきたりの(あまり断捨離系の本を読んだことがないのでわからないけど)提案にとどまらず、ものを手放すことがもたらしてくれる「利他」の精神に言及してくれていることです。

自己の利益の追求のためだけに断舎離する=浮いたお金でどこか旅行に行ったり、美味しいものを食べたり、というのは、それはそれでとっても素敵なことなのだけれど、最終的にはそれが「他者のためになる」ということに喜びを感じられるようになるという点が、著者のジョシュア=ベッカーが本書で強調しているところです。

これを持って他の断捨離本とは一線を画する一冊になっていると言って差し支えないんじゃないかな?と思っています(あまり断捨離系の本を読んだことがないのでわからないけど)。

自分のためにミニマリストになると、モノの代わりに心の荷物が増えていく

これは自分自身の経験ととても平仄があっています。

僕は色んなものを放棄して世界一周のたびに出混した。それはとても素敵な経験でしたし、僕に新しい世界のパースペクティブを提示してくれました。

まさに本書に書かれてあるとおりのことを、僕にもたらしてくれたというわけです。

でもそうやって手に入れた生活が長く続いてくると、モノがない生活や少ないお金で満足できる生活という現状自体が「荷物」になってきたんです。

これは僕が最近とみに強く感じているところで、今のこのお気楽な生活を維持するためにどうすればカネを効率的に稼げるかとか、今のこの人間関係にじゃまになっている人間関係はどれか…というふうに、ミニマリストになることで生じる心の荷物に振り回されているんです。

著者のジョシュア某さんはそのこともすでに見越して、そのソリューションを提示してくれています。それが利他的に生きるということの喜びで、ミニマリズムによる自己利益の追求が陥りやすい陥穽から逃れて、本当の「ミニマリスト的快楽」を提示してくれる、ミニマリストが心に目指すべきところ、それが利他なんだということを滔々と語ってくれています。

人のためにミニマリストになる、ということです。

人によってはちょっとスピリチュアルでしんどくなる記述が残り本書の3割くらいのところにあふれていますが、個人的にはここが僕的には一番のハイライトと思ったところでした。というのもこれはまさに今流行りの「マインドフルに生きる」思想にガッツリつながっているからです。

この方、何らかの仏教的思考を持ち合わせているんじゃないか?と思わず勘ぐってしまいたくなるくらい、ミニマリズムの実践を通じて「利他」を体現されているんですが、冒頭から述べられているとおり、彼自身は結構経験なクリスチャンぽいんですね。

ま、宗教的なバックグラウンドとかはさておき、スピリチュアルなレベルで幸福に生きる人のマインドセットって共通しているような気がします。

その具体的な実践方法として「ミニマリズム(断捨離)」を提示していることろに、本書の唯一無二性を感じているところです。

英語は難しいけど、いい勉強になります!

本書の英語は決して易しいとはいい難いです。

まず難解な英単語がちょいちょい出てきます。おそらく普通に日本で学習している分には出くわさないような単語があちこちに出てくるので、ちょっと面食らうかもしれません。

また、英文も決してシンプルとはいい難いです。難関大学受験の入試で要求されるような文法知識がないと、ちょっと太刀打ちできなかもしれないです。No(Never/Not)の倒置文ですとか、連鎖関係代名詞節などなどの英文法のオンパレードですし。あと内容の特性から必然的に「仮定法(過去完了)」がものすごく出てきます。多分慣れてないと読みにくいでしょう。

でも、英文そのものは大変ちゃんとしていて、変な修辞的表現はないですし、カチッとした本なのでスラングのたぐいも出てきません。高校卒業程度の英文法知識にプラスして然るべき語彙力があれば、却ってちょっとした児童書〜ヤングアダルト小説よりも読みやすいくらいです。

もちろん内容も素晴らしいので、日本語ででも読んでいただきたいと思うんですけど、それなりのまとまった期間英語を学習してこられた方なら原書にチャレンジする価値がある一冊かな、と思いました。文法がわかれば、わからない単語はKindleでちゃちゃっと調べさえすれば済むことですしね。

語彙力的には英検一級の一次試験に合格できるくらいの語彙力で十分に対応できるレベルだと思います。意外と良い英検一級の一次試験リーディング対策になるんじゃないか?という気がしています。

本書を読んで(物理的に豊かでないからこそ)「奉仕の精神」が大切!と思いました

そんなわけで『The More of Less』でした。

冒頭から述べているとおり、本書はミニマリズムの実践を通じて「利他的なマインド」がもたらしてくれる本当の喜び(joy, fulfillment)について教えてくれる本当に素晴らしい一冊です。

特に本書の第11賞以降が個人的には必読だと思いました。「とりあえず断捨離のメリットと方法論を知りたい」という方にとってももちろんリーダブルな一冊であることは論を待ちませんけれど。じゃないとこんなに売れないですよね。

本書に大変感銘を受けた僕は、物質的に豊かでないからこそミニマリスト的マインドで生きることが必要だという思いを強くしました。

本書では、手放したものをチャリティに回したり、第三世界の貧困にあえぐ人に物理的な援助をすることの素晴らしさがミニマリズムの文脈で語られていますが、本当に大切なことは「物質的に貧しいように見えるひとにも、人に与えられる素晴らしいものがあるんだ」というメッセージじゃないかな、と思ったりしています。

ものを手放すだけでなく、心も然るべき方法できちんと断舎離することで、より豊かな精神世界を経験できるようになるんだ、というメッセージは僕には結構パワフルでした。今実践しているマインドフルネスメディテーションの目指すところと強くリンクしているとも感じました。

そんなわけなんで、本書を読み終わったあと、無償でできるボランティアをネットで探し始めた次第です。

また周囲からは「カネにならんことしやがって…」と嘲笑されるのかもしれないけれど、僕は本書から、本書の行間から、溢れんばかりの愛を感じ取ったので、ここはジョシュア某さんを信じて、もう少し今の「物質的・経済的に豊かでない生活」の向う側にある「心が豊かな生活」を続けていこうと思っています。


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