白書が描く経済 デジタル・AI岸田政権 軍事利用に拍車〜すべてがNになる〜


2023年8月26日【経済】
 現代社会は、情報通信・デジタル技術が発達して情報通信インフラが発展し、時空を超え、国境を超えて大量の情報が交錯し、膨大なデータを処理・活用できる時代になっています。

炎上助長の構造

 デジタル化時代の申し子であるプラットフォーマー(基盤提供者)はサービスの提供などを通じて膨大なデジタルデータを収集・蓄積しています。プラットフォーマーは、利用者の時間、関心を引くため、その利用者が最も強く反応するものを予測することができます。そのため弊害も生まれています。2023年版の「情報通信白書」は、「プラットフォーム上では過激なタイトルや内容、憶測だけで作成された事実に基づかない記事等が生み出される」ことがあると指摘しています。また、偽・誤情報の拡散やインターネット上での炎上を助長させる構造を有していると、白書はいいます。
 また、人は「自らの見たいもの、信じたいものを信じる」という心理的特性を有しており、ユーザーは、自身の興味のある情報だけにしか触れなくなり、あたかも情報の膜につつまれたかのような「フィルターバブル」と呼ばれる状態となる傾向にある、といいます。このバブルの内側では、自身と似た考え・意見が多く集まり、反対のものは排除されるため、その存在そのものに気づかなくなる危険もはらんでいます。
 2進法で表現されたデジタル情報によってなりたつのが人工知能(AI)です。中でも急速に利用が広がっているのが生成AIです。白書によると、世界全体の生成AIの市場規模は20年の1・2兆円から30年までに約14兆円に拡大。22年~30年の期間の年平均成長率は35・6%と予測されています。地域別にみると、21年ベースで最大のシェアを持つのは「北米」市場(40・2%)です。
 AIをはじめとする新技術は、軍事への利用が進んでいます。指揮・意思決定の補助、情報処理能力の向上に加え、無人機への搭載やサイバー領域での活用が活発化しています。

無人艦など開発

 23年度の「防衛白書」は、米国の国防総省高等研究計画局(DARPA)が空中射出・回収・再利用が可能な情報収集・警戒監視・偵察用の小型無人機のスウォーム(群れ)飛行、潜水艦発見用の無人艦など、多様な無人機の開発を公表していることを紹介しています。
 中国では18年5月、中国電子科技集団公司がAIを搭載した200機からなるスウォーム飛行を成功させ、20年9月には中国国有軍需企業が無人航空機のスウォーム試験状況を公開していることを紹介しています。
 このような状況の中で「防衛白書」は、AI技術の軍事への活用を積極的に進める姿勢を示しています。
 「戦いを制するためには、人工知能(AI)を含む各種手段を最大限に活用し、情報収集・分析などの能力をさらに強化していくことを通じ、リアルタイムで情報共有可能な体制を確立し、これまで以上に、わが国周辺国などの意思と能力を常時継続的かつ正確に把握する必要がある」
 岸田文雄政権の軍拡は、デジタル・AI技術の軍事利用に拍車をかけています。(おわり)


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