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ハラスメント横行 自衛官中途退職増 軍拡で労働環境悪化さらにジャーナリスト 三宅勝久さんに聞く

2023年3月20日【2面】

 自衛隊内のハラスメントやいじめが深刻となる中、自衛官の2021年度の中途退職者が新規採用者の4割を超えました。安保3文書で「戦争国家」づくりの重要な柱として「人的基盤の強化」を掲げる中、矛盾に直面しています。自衛隊内のいじめや自殺を取材してきたジャーナリストの三宅勝久さんに聞きました。(聞き手・写真 斎藤和紀)

 自衛隊では、「指導」という暴力や暴言、深刻なセクハラが横行し、過酷な長時間勤務で休みもまともにとれません。心身を病む人が続出し、人生に絶望し命を絶つ人もいます。

深刻な人員不足

 部隊の指揮をとる「曹」や幹部自衛官の退職が目立ちます。「曹」以上は定年制で、家族がいる人が多い。中途退職は人生設計も変わる大きな決断です。それほど過酷になっているのでしょう。

 特に海上自衛隊の艦船は、人員不足もあって労働環境は過酷なようです。長期間の海外勤務を立て続けに命じられ、代休も取らせてもらえない隊員がいます。上官が辞表を受理せず、なかなか退職できないケースは、陸海空を問わずあるようです。

 政府は安保3文書に基づき、防衛予算を大幅に増やし、新たな装備を大量に購入しようとしています。新装備への対応で負担が激増する恐れがあります。すでに疲弊しているのにトマホークを400発も買って運用する人員がいるのでしょうか。

 職場の負担が増えれば事故が起きやすくなるし、ストレスからパワハラ・セクハラも悪化するでしょう。政府は「人的基盤の強化」のため有識者会議を行いますが、成功の見通しは暗いと思います。

 自衛隊は20年前から「いじめをなくす」と言ってきましたが悪化しています。自浄能力のなさの証明です。

 営内舎や艦船の居住区、防衛大学校の宿舎といった場所は密室性が高く、無法地帯になりがちです。

 また、自衛隊内の犯罪行為は警務隊が捜査しますが、問題があります。警務隊は本来部隊から独立した捜査機関ですが、実態は必ずしもそうではありません。部隊の上の意向で捜査がゆがめられたり、無実の隊員にぬれぎぬを着せようとした事件も起きています。証拠能力のない「ポリグラフ」(ウソ発見器)を使い、虚偽自白を迫ることもあります。

外部捜査機関を

 民事裁判は、いじめなどの被害者が権利回復をはかる重要な手段ですが、多大な労力を要します。証拠は自衛隊側にあり、しばしば隠ぺいされます。

 自衛隊を外部からチェックする制度や機関が必要です。

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