社会リポート 急に「退職して」→「新会社」に転籍 有休放棄させるGS受託「大器」〜すべてがNになる〜

                       2023年6月25日【社会】
 いきなり退職届にサインさせ、同じ経営者の同じ仕事の新会社に転籍させられる―。そんな不可解なことを契約スタッフに求めたのは「大器キャリアキャスティング」(東京都港区)というガソリンスタンドの運営受託会社です。転籍したスタッフは「これまで1回しか有給休暇を使ってない。有休を放棄させて、チャラにするための新会社ではないか」と憤っています。(矢野昌弘)
 「大器キャリアキャスティング」(略称、大器)は、エネオスなどのガソリンスタンドにスタッフを出しています。
 2019年に同社と契約する男性=当時(73)=がエネオスのガソリンスタンド(GS)で深夜1人体制の連続勤務の末、亡くなっています。大器は男性の遺族から、過労死だとして損害賠償を求める裁判を東京地裁で起こされています。
 複数の関係者によると、大器は昨年夏に「所属会社変更について」と題した文書を契約スタッフに配布。スタッフに大器を退職した上で10月から新たにつくった会社での勤務を求める内容でした。
 文書は「新事業会社における勤務シフト、日給、交通費の労働条件は現行どおり」とし、「幹部も全員この新会社へ異動します」としています。

訪ねてみたら

 大器の契約スタッフだったAさん(60代)。西日本のスタンドで週2回、午後8時前から翌日の午前8時まで働いていました。昨年9月、勤務中に同社幹部が突然、訪ねてきました。幹部は「移行に必要なのでサインを」「急いでいるから、早く」と、せかしました。
 見せられた書類は「9.転籍先会社」とだけあり、それが気になりましたが、裏面を読ませてもらえないまま、サインしました。
 Aさんは「大器の契約スタッフだった間にたまりにたまった有給休暇を消化した上で退職するものだと思っていたが、とれずじまいで退職となった。説明すらなく、チャラにされた」といいます。
 Aさんが転籍した会社は「エナジースタッフ西日本」(大阪市北区)。登記等にあるビルを本紙が訪ねたところ、エナジースタッフ西日本が入っているはずの部屋番号にまったく別名の会社がありました。この会社は「バーチャルオフィス」。ビジネスに必要な住所と電話番号を事業者に貸すサービスをする会社でした。

健康診断なし

 Aさんは「そもそも会社を転籍するために退職する必要があるのかも疑問」と投げかけます。エナジースタッフ西日本の代表取締役は、大器の取締役が務めています。
 Aさんは、大器と契約してから1度も健康診断をしていないと証言します。労働安全衛生法は、午後10時から午前5時までの深夜業務に週1回または月4回以上従事する人は、年に2回の健康診断を受けることを定めています。これを受けさせなかった事業者には罰則があります。
 Aさんは「亡くなった男性の遺族が声を上げていただき、ありがたい。この会社の働かせ方、いま働いているスタッフの労働環境を広く知ってもらいたい」と語ります。本紙は大器キャリアキャスティングに取材を申し込みましたが、24日までに回答がありませんでした

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