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新しかった靴

靴擦れができた。
両足に。

右足の方がひどくて
新しい靴の踵部分が汚れてしまった。
ショックではあるが、
それ以上に期待度の高かった
大切にしまっておいた靴が
足に合わないことに
一番ショックを受けている。

買ったのはコロナ禍がちょうど始まった頃。
初回の緊急事態宣言が出される直前だった。
買い物へ出かけることができなるかもと思って
私は最後の自由で身軽な買い物に
靴を買うことを選んだのだ。

黒にラメが入っていると表現すればいいのか
それともシルバーの靴と言えばいいのか。
拙くて申し訳ないが、
とにかく黒黒ともしておらず
ぎらぎらとも違う
落ち着いているがきらりと光る
黒地の靴を買った。

それまで自身で選んだものは違い、
専門の店員さんに選んでもらったその靴は
歩いても踵が抜けてしまうことはなかった。
私の足にぴったりで軽く歩きやすい。
それが2年ほど前のこと。

コロナ禍の生活では「お出かけ」とは疎遠になり、
買い物はもっぱらスーパーのみ。
私は気楽なスニーカーしか履かなくなってしまっていた。
いつか来るその日までと大切にしまっておいた靴。
決して安くはなかった靴。

近頃の感染者数の落ち着きもあってか
子の学校へ行く機会があり、
それまでは同様の機会があっても
また今度と先送りにしていたが、
さすがにそろそろと下駄箱最上段から
薄ピンクの箱をそっと取り出し開けてみた。
何も変わらず靴はそこにあり、
時を止め、息を潜めて
待っていてくれたようにさえ思えた。

履く直前の期待感。
いざ履いた時のフィット感。
一歩踏み出した時につま先がきつい不安感。
歩き出したら速攻で足が痛い焦燥感。
そのうち馴染むさとそのまま出かけて
結局私の足は悲しい結果に至ってしまった絶望感。

この2年で私の足が変わったのか
靴が変形したのかはわからない。
こんな結果になっても手放そうとは思えず
私はまた挑戦して痛い目を見ているのが容易に想像できる。

ちょっとおしゃれした気分にしてくれる靴は
自分の気持ちも少し高めてくれる。
靴が伸びるか
私の足が縮むかしないかなと願いつつ
いつでも履けるように下駄箱にしまった。

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