新宿の空
新宿駅南口を出てから左。
御苑の方へ向かって歩き出せば、
そこはとても広い歩道になっている。
たくさんの人々が行き交う中、
外国人観光客とすれ違った。
彼女は私より少し背が低く、
中肉でワンピースを纏い、
長い髪を背中に垂らしている。
とてもキュートで、
その笑顔もまた可愛らしくて、
右手でスーツケースを引き、
左手でスマホを構えて
私の背後の景色を
見上げるように撮っていた。
きらきらした表情から
この東京新宿という都市に対する
想いが伝わってくる。
私もこの街が好きなので
そういう人を見掛けると素直に嬉しい。
すれ違い終えた後、
私はそっと振り返って
彼女を笑顔にした景色を見てみた。
ビルがでん、その背後にもでん。
真ん中を甲州街道がどっと通り、
空は狭く、統一感のないビルが
雑多に立ち並んだ見慣れた景色だった。
私の日常が、旅人にとっては
非日常だということはよくわかる。
でもこうした景色よりも、
自宅近所で見掛けた
手前にサルスベリが並んでカラフルに咲き、
その背後にそびえ立つビルの方が
ずっときれいと思えるのだ。
私の素敵と彼女の素敵は違う。
私は年々空が狭くなっていく
新宿上空を窮屈に感じるが、
わくわくする人もいるだろう。
そうした異なった当たり前や日常、
喜び感動、淋しさ切なさ、
色んな気持ちが交差するこの街を、
私は見つめるのが好きだ。
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