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満たされない

疲れていたのか何なのか。
今日はどこか空虚な感じが抜けずにいる。

午後、食材の買い出しに出かけたのだが、どうも鬱々として気持ちが晴れないまま歩いた。
ついでに衣服のリサイクルを出そうと思っていたのに、持ってくるのを忘れて落胆。
ついでに銀行に立ち寄ったのに、古い通帳を持ってきてしまう失態を犯し、用を済ませられずに落胆。
大したことではないのに、落ち込むことが続いて気分が沈んだ状態のまま、次の買い物へ。

必要なものを探しに百均へ入ったものの、何を買おうと思っていたのか忘れ、思い出せてもなかなか見つけることができなかった。
――完全に頭が働かなくなっている
自分でそう気付いたがどうすることもできない。
無駄にお菓子を買って自分をごまかす。

残りはドラッグストアへ行って歯ブラシを買うことと、やおやさんへ行ってフルーツを買うこと。
しかしどうも足がそちらへ向かない。
気分が乗らないとはこういうことなのか、帰りたくなくて予定した買い物をする気が起こらなかった。

買わなくてはならないものは買いたくないのに、今必要のないものを買いたくて仕方がない。
雑貨屋でお弁当の除菌シートを探して見つからない。
文房具屋で自分のためにお金を使うつもりが、結局子どもの、しかも非常に下らないものを買ってしまう。
服屋で子どもの靴下でも買おうかと思ったが気分が乗らず買わず仕舞い。
心が満たされず、それを埋めるために買い物がしたいのに、日頃不要なものを買う習慣がないため「何でもいいから買う」ができなかった。

もやもや、もやもやと街を彷徨いながら、なんとかドラッグストアに入って歯ブラシを買う。
――一緒に買ったお菓子、リップクリーム、ハンドクリームはどれも子どものためのもの
やがて小腹が空いたとカフェに入り、カフェラテのLサイズをホットで注文し、ぐいぐい飲む。
そしてそこで「満たされない」と文字を書く、書く、書く。
腹に液体流し込めば幾分かは満たされ、また書くことで胸の内を吐き出すことができたようで、少しだけ気分をマシにすることができた。

やおやさんでは今年は特に甘くて美味しい豊水と、今季初めての柿を買って、左肩に担げばずしりと重みがかかる。
右肩にはあちこちで買いあさった雑多なものがぶら下がっているが、大した重さはない。
右と左の重さはアンバランスで、価値の重さと同じなのではと気がつく。
もしかしたら左だけあれば、心は満たされていたのかもしれない。
右の重さは気休めだったが、果たしてどんな価値があるのか。

左右ぶらさげながらの帰り道。
道ばたにはたくさんの小枝が転がっている。
昨日の台風の痕だ。
まだ緑色の銀杏は、風に負けることなくしぶとく枝に付いていた。
空はきれいな水色で、真っ白な雲がもくっと浮かんでいる。
雲が太陽をたまに隠すから、陽射しが出たりなかったりを繰り返す。
私ははつらつとは言いがたい足取りで、家歩いた。

――
本日一番下らない買い物は、文房具屋で買ったハムスターの卓上クリーナー(手動)。
ほんと下らない。

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