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早朝

なんとなく予感はしていた。
夜中に目が覚めた割に頭ははっきりと冴えていて、今日の予定を考えてしまうほどだったからだ。
いけない、いけない、考え事をしては目が完全に覚めてしまう。
私は用を済ませたあと、薄暗闇の中手を洗い、再び布団へと潜り込んだ。

自分の体温が残っていて、こたつに潜り込んだみたいな幸福感を得る。
じんわりと温かい布団にくるまって目を閉じたのだが、しばらくすると左腕のApple Watchが微かに振動する。

無視を決め込んで布団の中で丸まるも、一定間隔を開けてやはり振動する。
そして大きく振動したところで布団の中の暗闇の中でちらりと見てみると、「おはようございます」の文字がそこにはあった。

夜中に目が覚めてしまうことは仕方がないとして、目覚ましよりも少し早く目が覚めてしまったときの悔しさは大きい。
あと5分寝られたのにと、くっと歯を噛みしめる。
少しでも抗いたくて必死で目を閉じ見なかったことにするのだが、毎日の習慣でこの時間には意識は完全に覚醒してしまう。

外は暗い。
家の中も暗い。
この暗闇の中、どうして朝だと思えようか。
反抗的な私とは裏腹に、家電たちは優秀でいつものルーティーンを始めている。
洗濯機は洗濯を始めているし、リビングの照明は朝を知らせるために徐々に明るくなってきている。
私の人差し指がスイッチを押すのを今か今かと待っている家電もある。

私がここで欲に屈すれば、家族全員が今日一日を平穏に過ごすことができなくなる。
「お母さん」という職業はなんて責任が重いのだろうか。
諦めてようやく体を起こし寝室を出る。
ほんの10分ほどでは、外はまだ暗いままだ。

もうすぐ朝がやってくる。
家族全員のなんの心配事のない目覚めをつくるために、今朝も私は一番に起きる。

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