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秋の予感

  季節の内で、一番ゆっくり去っていくのは夏だと思う。
春も秋も冬も、いつの間にか次の季節に移り変わっていくのに、夏は日差しの中にだらだらと長くとどまり続ける。九月に差し掛かってもなお、昼間の陽射しはずっと眩しくて暑い。

 でも最近の夜の風はちゃんと、もう秋の肌触りがする。
夜道は怖いので歩けないけれど、夕暮れ時に歩くコンビニまでの道すがらとか、夜ベランダ向きの窓から灰って来る風だとかから、夏の名残はもうちっとも感じない。これから秋がやってきて、たぶんすぐに冬になる。

 季節の中で、私は冬が一番好き。
だからここから冬に向かっていける、これからの季節も好き。なにせ私は暑さに滅法弱いのだ。これからどんどん、外を歩いても肌がじりじり痛むのに苦しまなくってよくなるし、肌がじっとり汗ばむことにうんざりしなくてもよくなる。なにより寒くなったら、あったかいものが嬉しくなる。毛布でもストーブでもマフラーでもホットコーヒーでも。あったかいものを嬉しい、と感じられる季節が好き。

 でもまだ当分は寒くなる前の涼しくなっていく季節だ。ゆっくり寒くなっていくのが楽しみ。袖を通すものに少しずつあたたかいものが増えてきて、どんどん生活を好きになる。

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