直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN / 読書感想文
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発売日:2019/3/6
著者:佐宗 邦威
「カイゼン思考」「戦略思考」「デザイン思考」に次ぐ、妄想から創造性をドライブさせる思考法「ビジョン思考」についての解説と実践方法をまとめた本。
序章 「直感と論理」をめぐる世界の地図
カイゼン思考
ひたすらPDCAを回していくやり方は、VUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)の時代にはついていけなくなってる
戦略思考
市場の陣地取りをしていると、データに依存して新しい価値を生み出せない
デザイン思考
みんなで共創していくやり方は、「他人モード」に偏りがちで自分が見えなくなっていく
なぜビジョン思考が必要なのか
問題解決型のアプローチが限界を迎えている。
意思決定してる間に市場のニーズが移り変わる、他社に先を越される。
個人がフラットにビジョンを作る、ティール組織の時代になっている。
第1章 最も人間らしく考える
ビジョン思考は、妄想 → 知覚 → 組替 → 表現の4つのサイクルを繰り返す。
・妄想
自分の内面・欲望・潜在意識と向き合い、「本当の関心」と出会う
・知覚
妄想の解像度を高め、絵や設計図にまとめ上げていく
・組替
アウトプットしたものを他人目線で眺め直し、独自のコンセプトを作る
・表現
プロトタイプを作り、他者からのフィードバックを得て次へ活かす
うまくいかなくても、妄想から表現までのプロセスを楽しみ、夢中になることが大事。
第2章 すべては「妄想」からはじまる
ビジョンを明確にして、ビジョンと現状との距離(ギャップ)を受け入れたときに初めて、ギャップを埋めるモチベーションが生まれる。
「妄想と現実とのギャップ」を認識しないと、人はクリエイティブモードにならない。
10%の成長ではなく10倍の成長を目指すムーンショット型アプローチは、 目標に行きつく過程で様々な技術が生まれ、世の中を変えることができる。
同じ未来を見ている人が集まりやすくなり、投資や協業などにもプラスになる。
実現可能 / 不可能な目標は思考法によって使い分ける
頑張れば実現可能な目標は、すでにある課題を解決していくイシュードリブンな思考法に有効。
途方もない目標は、理想状態から思考をドライブさせるビジョンドリブンな思考法に有効。
妄想を引き出すメソッド
・自分の感情・欲望・妄想などをジャーナリングする
・「自分モード」になる時間をスケジュール予約する
妄想を膨らますためのメソッド
・自分の好きなものでコラージュを作る
・「お題」に対して限られた時間で作品を作る
・妄想に対して、「もし〇〇ならどうなるか?」という問いかけをする
第3章 世界を複雑なまま「知覚」せよ
普段触れている情報は世界の全てではなく、個人に最適化された「断片」でしかない。
個人に合わせて「シンプル」に「わかりやすく」するほど視野は狭まっていき、思考や発想が無個性化する。
例:トランプの当選を望んでなかった人たちのニュースやSNSは反トランプ派の意見ばかりになる。それが世界の全てだと勘違いしてしまいがち。
VUCA時代は、センス・メイキング(状況を感じ取り、意味を作り出すこと)の力が問われる。
センス・メイキングの3ステップ
感知:言語モードをオフにして、ありのままに見る
解釈:自分なりのフレームにまとめる、図や絵にして考える
意味づけ:まとめた考えに意味を与える
思考を発散させるために、まずは視覚だけからスタートする。
収束させていく時には言語情報が必要。視覚と言語を往復して考える。
第4章 凡庸さを克服する「組替」の技法
組替=分解+再構築
分解
・「当たり前」を洗い出す
・「当たり前」の違和感を探る
・「当たり前」の逆を考える
再構築
再構築にはアナロジー思考が有効。自分のアイデアに類似したものから発想を広げていく。
分解した要素から似ているもの(メタファー)を探し、そこからアナロジーを考える。
アナロジー:未知のAと既知のBの間の類似性Cを元に、Aの性質を類推する
一定の時間制限やフォーマット制限の中で強制的に発想することが、再構築では有効。
デザイン思考のロールプレイのように、視覚だけでなく体感覚を使うのも良い。
第5章 「表現」しなきゃ思考じゃない!
一般的な開発とイタレーションする開発では、後者の方が早くアウトプットの質を上げられる。
与えられた時間の中で、どれだけイタレーションできるかが重要。早く失敗して気づきを得よう。
プロトタイピングの成否は 、どれだけ 「次の改善につながる意見 」をもらえるかで決まる。
プロトタイプを見せる時は、相手に合わせて伝え方を工夫する。
説明の中にメタファーを組み込むと有効。(出版業界の人には「これは図書館みたいなものです」とか)
どんなにアイデアが優れていても一人では実現できないので、人を巻き込むスキルも大事。
表現を見た人が「面白いね!」で終わらず、「私も手伝いたい!」と共感するレベルを目指す。
人を共感させるにはストーリーを使う。
共感を生み出す「英雄の旅」フレーム
・ユーザー、課題、サービスからなる7ステップの物語を作る
・ストーリーに面白味が足りないと思ったら、味付けを変える
→アップダウンを激しくする、問題や苦労を詳細に描く…etc
・それぞれのステップを表すビジュアルを描く
終章 「妄想」が世界を変える?
成功するプロジェクトと成功しないプロジェクトの違いは、「妄想」を持った人がいるかどうか。
VUCAな現代は変化が多いので失敗や障害も多く、結果が出るまでに長い停滞期がある。
それに耐えるには、「好き」や「関心」からなる「自分モード」を軸にすることが重要。
テクノロジーが進化する時代だからこそ、「何のためにテクノロジーを活用するのか?」という価値観が必要。
「真善美」という価値基準を、ビジネス・教育にも取り入れていくべき。
妄想をより大きくするために、「真善美」の観点から問いを設定してみる
・【真】妄想にとって正しいことは何か、その根拠は?
・【善】妄想により誰が幸せになるか?妄想をどう変えればより多くの人が協働できるか
・【美】自分にとって美しいものとは?妄想のどこに人は魅力を感じるか
妄想と社会との接点を作り、大きくしていく。
感想
全体的に、デザイン思考を自分の内面に向けたバージョン。
今までにすでにあった手法に名前をつけて、点と点だったものを線で繋げた感じ。
事業のビジョンが自分のやりたいこととマッチしてるのかわからなくてモヤッとしてる人とか、日々忙殺されて人生の目標を見失ってる人とか、これから事業を立ち上げるぞ!って人には良いかも。
既存の事業でビジョン思考を取り入れてくのは、大幅なリニューアル時とか、新規サービスの立ち上げ時くらいしかイメージできないけど、日々の運用・開発で取り入れてるところあるのかな。
私はちょうど今年のテーマが「内省」なので、自分と向き合うという意味ではタイムリーな内容だった。
妄想 → 知覚 → 組替 → 表現のサイクルとか、センス・メイキングとかは、割とデザイナーやクリエイターは普段からやってる感じする。
クリエイターじゃない人に向けての本だから、やたらと「自由な発想の仕方」とか「ビジュアル化の方法」とかが書いてあったw
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