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眠れない夜に


私は寝付きが悪い。
というのは大人になってから気がついたのだが、寝床や環境が変わると中々寝付けない。
彼がいる時には、彼が寝付くのを確認しないと眠れない。私が先に寝付くほどの、安心感が自分の中で芽生えるには最低でも一年以上の期間を要する。私の身体は、私が思ってる以上に繊細なのだ。

眠れない夜に天井を見ながら、毎回思い浮かべる光景がある。

年子の兄と、ベッドを並べて寝ていた頃の記憶。あの頃はなんでも兄の真似をしてついて回っていた。兄は遊びの達人だった。

毎晩、兄は私に影絵を作って見せてくれた。かつての私たちは、寝ることもさえも遊びだった。私が作れるのはせいぜい蝶々だが、兄はカエルや恐竜も作れたのだ。窓から入る道路からの光で影が変形したり、動いて消えていくことも、何もかも魔法みたいだった。あの頃はそんな楽しい夜を過ごしていつの間に眠っていた。

そんな幼い頃の、兄への羨望と楽しかった記憶。眠れない夜に。私は未だに蝶々しか作れない。

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