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【3】年収290万の派遣社員、挙げ句の果てに子ども部屋おじさん(43)が結婚した

重い腰を上げる

新型コロナがきっかけで、何をするにも制限が掛かってしまった。気にする人もいれば、気にせず行動していた人もいる。私は前者で、会社に行く以外は外出を控えた。人とも会えない。よく言われる「家と会社の往復」だけであった。

——何か、変化が欲しい。

その頃からマッチングアプリを利用し始めた。そもそもの始まりが婚活ではなく、ただ単に人との繋がりが欲しかったのが本音だ。違うな、婚活の土俵に上がれないのが事実だ。寝言は寝て言うことだけは唯一自信を持っているところである。

寝言はさておき、並行して考えていたことがもうひとつ。仕事して家に帰るだけなら、どこでも一緒。住み慣れた実家から出よう。

好きな部屋で、好きなものに囲まれての生活——。
低収入かつ不安定なので、ささやかな夢もいつしか大それた夢になってしまった。

移住と転職、時々マッチングアプリ

「仕事をしながら、休日は山に登って暮らしたい。あわよくば、一緒に登ってくれる人がいれば尚良し。」

以前から山登りが趣味で、そうなれば理想的だとは常々思っていた。重要なのは逆算だ。

まずは住む土地。北アルプスがある長野あたりを思い浮かべるのが普通だろう。北アルプスどころか、中央及び南アルプス、八ヶ岳など日本屈指の名峰がひしめく理想郷。婚活でいうところの年収1000万だ。

だが生活はどうだろう。車の維持費が高い、光熱費が高い、仕事が無い。実際、長野在住の山好きの方とマッチングした時に尋ねてみると予想通りだった。現実とはこんなものである。

ちなみに何人かマッチした方々の職業は看護師、公務員といった職種であった。彼女たちに共通していたのは「好きなことを続けるため」とのこと。安定して稼げる職種についた筋金入りである。根無草の私は恥ずかしく思った。

実際に生活費だけでなく、趣味の活動費も加味するととんでもない額になりかねない。早々に諦めた。贅沢はたまにするからいいのだ。

長野みたいに軒並み標高2000m以上じゃないとダメというわけでもない。低山でもいい山はいっぱいあるので、条件を変える。40代のこれからを意識すると、近くの低山で無理なく登れる拠点を探すことにした。

県の名前は伏せるが、自然がたくさんあって、都会に出るのは車で何とかなる。日常にきらびやかさを求めるわけではない。かといって、生活が不便ではないところに決めた。ここなら心の平安も保てそうだ。

土地が決まれば、次は職。「選ばなければ何でもある」とはよく聞く話だが、拍子抜けするほどあっさりと決まってしまった。職種は伏せるが正社員である。概算で年収400万くらいか。将来的に上がる見込みはないだろうけど、田舎で独りならむしろ今まで以上に貯蓄と資産運用に回せる額も増えるので十分やっていける。何より、拾ってくれただけでもありがたい。

そして、新車も買った。予算の都合上、コンパクトカーだが、車を所有したという事実がたまらなく嬉しかった。残価設定で年間距離などを気にしながら乗るのは嫌だったのと、カーローンの金利が高いので男の一括払い。通帳からごっそりと数字が減ったのがショックであった。人生で一番大きな買い物をしたのもこの頃であった。

マッチングアプリに手をかけていくのだが、これが一番難航したかもしれない。それはまた別のお話。

つづく

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