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ゲリラ豪雨のもとボン・ダンスをすること【Re:今年も郡上おどりへ行ってきた2023】
郡上おどりに取り憑かれて1年。
先日「今年も踊り下駄をカランコロンと打ち鳴らし郡上おどりをしてきたよ」という趣旨の記録を綴りました。
ですが、あれこれと心残りな出来事が起こりまして。
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8月下旬に再訪することに。ここまでの決断が早かったし、非常に良かった。
私は全てが順風満帆に進むと信じて疑わず、にこにこ日々を過ごしていたのです、が──
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な〜んだ、快晴じゃん
首都圏を出発し、郡上八幡に到着したのは15時頃。山に囲まれた町を、夏空が両手一杯に包みこみます。
「な〜んだ、ピーカンやないか〜〜い」
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今回は母も参戦。とりあえず踊りの輪に放り込みます。
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2023年8月26日の踊りは八幡神社での小野天神祭でした。
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今まで町中や城下町プラザといった広場でしか踊ったことがなかったため、神社での開催に少々どきどき。
おどりガチ勢の地蔵を発見。
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ツイッターのお友だち曰く「素人は黙っとれ……」顔だね、とのこと。まさにその通りの表情ですね。
水の町・郡上八幡のマンホールも愛らしい。清流を泳ぐ川魚が涼やかです。
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準備完了した瞬間に落ちる雷
さて、そんなこんなで夕方まで市街地の散策をし、宿で浴衣を着付けるなどして準備を進めていた我々でした。着付けと化粧直しをしながら「こんな感じかしらん」なんて女子っぽい会話をしていた矢先──
ドッッカーーーーン!!!!! バリバリバリ……ドカンドカン!!!!
おいおいおい……冗談、冗談だと言ってよハム太郎。映画でしか見たことのない雷鳴が窓の外で轟き、ビリビリと世界を揺らしているのです。
「まじかぁー……」
これが天気予報の精度。ドンピシャの的中です。
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レーダーも見ての通り。普通の祭りであれば、こんなの中止です。
ですが、私たちが参加するのは何を隠そう郡上おどり。無形文化遺産とユネスコに登録をされた伝統的な『クレイジー・ボン・ダンス・フェスティバル』。
郡上おどりが、ゲリラ豪雨に負けるワケがないじゃないですか……!
春駒バスが雷鳴の轟く町をゆく
2秒に1度は稲光が辺りを照らし、ドシャーンと山の向こうが轟きます。雨粒はビシャビシャと鋭く地面に突き刺さるよう。私たちは宿の玄関で呆然と外を眺めていました。同時に数多の稲妻が光る様子は、『天空の城ラピュタ』の「竜の巣」のよう。アレって実在するのね。
この日は会場から少々離れている小野地区の宿に泊まったため、踊り会場までは送迎バスを利用することに。玄関には同じように呆然としている観光客や、涼しい顔をしている地元の御姉様方、変なテンションになってしまった踊りファンがぞろぞろと集まってきます。
数分後、この人間たちが漏れなく雷雨の中で踊っていると誰が思うのでしょう。oh,クレイジー……。
マイクロバスに乗り込み、いざ出発。ピカッ、ドカーンと雷鳴が唸るなか、どこからともなく軽快な笛と太鼓の音、そして「ハイ〜」と調子の良いかけ声が聞こえてきました。
「あ、春駒だ」
(↑ここで再生し読み進めると、筆者の追体験をできます)
そう、粋にも運転手さんが車内スピーカーで郡上おどりの代表曲・春駒を流してくれたのです。ですが、外は大嵐。ごうごうと鳴り響く風雨、雷と極めてシリアスな状況と、ピ〜ヒャララ〜と愉快な笛の音が大変にミスマッチでしかない。いや、現代落語でありそう。そのくらい良くできている。
『平成たぬき合戦 ぽんぽこ』の百鬼夜行のシーンや、絵本『じごくのそうべえ』の地獄。
バスに揺られながら、次々と脳裏に浮かんできたのは「私の人生において、ふれあったことのある魑魅魍魎」でした。
これ、地獄天国行き特急バスじゃん──
稲妻に照らされる郡上八幡はラストダンジョンに決まってる。そして鳴り響く「七両三部の春駒ゝ♪」お囃子。これは夢、なのか?
これが郡上おどりの真髄なのか
そして小野天神に到着した我々は一旦腹ごなしをしようと、市街地へ退却。
カレーをいただき会場に戻ってきました。その日の踊りの様子がこちら。
一番天候が荒れていたのは行きのバスだったようで、雨脚は一向に強かったものの雷は遠のいていきました。いやそれでもずぶ濡れだったけどね。
そして雨の神社の境内は脚に"くる"。
ほら、水をたっぷり吸った砂利を想像してごらんなさい。そこをピョンピョコ跳ねるのですから、皆さんお馴染みの部活の筋トレですよ。砂浜を走るようなもんです。乳酸でパンッパン! 筋肉が喜んでるよォ!!
しかも踊り下駄ならではのカランカランといった音は一切鳴ることなく、水を吸った下駄の木材が砂利を踏みしめジャシュッ……ジャシュッ……と重苦しく鳴るばかり。はじめて郡上おどりなら、かなりしんどいものがあるはずです。
それでも我が母は踊りきりました。しかも笑いながら。
そして言うのです。
「来年は下駄を鳴らしたいね〜」と朗らかに。
何を言っているか分からないと思いますが、私もとても楽しかった。踊っているとき、これ以上感じたことないほどの高揚感があった。言語化できないくらい。
踊りの輪はいつもより小さかったけれど、誰もが目を爛々と輝かせてハイになって踊っていた。これが人間が本来本能として持つ原始的な集団的熱狂の本質なのであるな。
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濡れ鼠になりながら、私の今年の郡上おどりはこれでおしまい。これから寒い季節がやってきて末端冷え性に震える日々が続くのだろうけれど、その先にある踊り助平な夏を待ちわびて、強く生きようと思います。