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【自戒】確定申告を速攻で終わらせた私は、春の美しさを知った

「春が嫌いである」
数年前までの私は、そう唱える人間であった。
雨水の頃には湿気をはらんだ空気が町を覆う。啓蟄の頃には地より虫が蠢き這い出て、花粉が鼻孔にちょっかいを出し始める。なんだかムカつく。

そして、確定申告──またの名を苦行、個人事業主の拷問、自省、苦悶。
ここではあえて”何を”確定させて、”どこ”に申告するかなど言わない。察してくれ。
このイベントのせいで、本来ならばツボミが膨らみ、命が瞬く美しい季節がすべて灰色に見えるのだ。確定申告、許すまじ。

確定申告前の目に映る花

……と、思っている時期が私にもあった。
考えてもみてくれ。いつ到来するかを予め伝えてくれており、毎年手順もほぼ同じ。確定申告クンは至って真摯な存在だ。嘘もつかなければ、自分勝手に納期を早めたり、詭弁でまくし立て論破などもしてこない。
それと比べ、「めんどくせえな〜」と領収書を山積みにし、ヘラヘラと駄文を綴り、気ままに睡眠を貪り、すべて確定申告クンに罪を背負わせる人間こそが、現代のサタンなのではなかろうか?

うむ、悪いのは正真正銘、私である。

確定申告RTAやってみた

RTA(リアルタイムアタック)とはいかに早く効率的にクリアするかを目的としたゲームのプレイ方法であり、少しでもインターネットカルチャーに触れていれば一度は見たことのある言葉であろう。

人生というものは常に本気で向き合うと、心労絶えないことが度重なる。時折、ゲームや小説など、自らが第三者として関わるコンテンツとして「己の人生」に向き合うと、ちょうど良い湯加減になるのだ。

申告完了後、私は春の美しさを知った


ありがとう…ありがとう…

不思議だ。「電子申告・申請完了」画面を見るだけで、胃の鈍痛、頭痛、背中の痛みが瞬時に和らぐ。どんな薬よりも効きが良い。君を常備薬にしたい。

くすんで見えた部屋が、愉快な生活を送るための宝石箱に見えてくる。窓を開ければ、畝雲に埋め尽くされた空でさえ輝いて見える。
これは確定申告を早めに終わらせた人間だけが見ることの世界だ。

RTAを完走した私が感じた「確定申告を早めに終わらせるメリット」を書き連ねてみようか。

【メリット①】季節の移ろいに対して寛容になれる

1月下旬よりかぐわしい芳香とともに花を咲かせる梅を、いつしか恨めしく思うように感じる私がいた。花は何も悪くない。悪いのは確定申告を先延ばしにし、勝手に焦る自分自身である。

三寒四温という言葉がある通り、2月になれば気温が大きく変動する。本当は暖かな日に喜びを覚えたいのに、確定申告の〆切が来てしまうと焦り、不快な気分に苛まれる。

そんなのイヤだ! 私だって春を全身全霊でお迎えしたい!!
晴れやかな気持ちで祝日の多い2月を享受し、ひな祭りには少女趣味なちらし寿司を作り、桜前線のニュースに胸を躍らせたいよゥ〜〜!!!!

確定申告を終わらせるだけで、上記のような心の叫びが叶うのだ。沿道に彩りを添える花々に顔を綻ばせ、淡い春色の空を両手一杯に抱きしめることができる。

要するに、さっさと終わらせれば、春を気持ち良くお迎えできるという話だ。

確定申告後の目に映る花。きれ〜い

【メリット②】優しい人間になれる

これは当方の人間性の問題かと思ったのだが、やはり人間というもの、常に優しさゲージをフルに満たすためには、余裕が大切である。
〆切前は菩薩のように寛容な人も、チクチクとしたトゲのような感情や、ささくれだった思考を抱くに違いない。

例えば、風呂上がりに使用した濡れバスタオルを家族がソファに放置していたとしよう。確定申告前の私なら活火山のように憤怒し、必要以上にキレ散らかしてしまう。
だが、申告後の私はちょっと違う。「もう〜、くさくなっちゃうでしょ〜」と柔らかな言葉とともに、鼻歌交じりにサッと風通しのよい場所に干すのだ。
確定申告を早く終わらせることで、保たれる仲もあるということだ。

確定申告後は近所の鳩もかわい〜

【メリット③】前向きな収支計画を実行できる

個人事業主にとって、確定申告は昨年度の成績管理のような作業でもある。昨年の収入や経費をまとめ申告するのだから、小学校でもらった「あゆみ」のような役割を果たすといっても過言ではない。

欲を言えば、年明けに始めるのではなく、該当年の10月頃にしっかり見直したい。その時点で、もう少し経費を使えそうならば機材を新調したり、収入が足りないなら仕事を増やしたり、健全な経営判断を下せるからだ。

私は3ヶ月ごとに1回、収入はある程度まとめて見直すようにしているが、経費については放置していた。そこらへんの大枠を年内に掴めれば、前向きな収支計画を実行できるのだろう。

【メリット④】年度末に舞い込みがちな特急案件を受注できる

これはライターをはじめカメラマンさんやデザイナーさんなど、フリーランスあるあるかもしれない。確定申告をさっさと終わらせておくことで、3月末までの飛び込み案件、いわゆる「年度末特急案件」に対応できる。

年度末特急案件というのは、年度末までに予算を消化したいというクライアントが、短期間でどかっと発注くださる案件を指す。(そのため1月〜3月にかけて声を掛けていただくことが多い)
納期や分量もなかなかだが、同時に予算も良い意味で男気溢れていたりする。これを丸ごと受注できれば経営的にも非常にありがたいのだが、確定申告が終わっていなかったら受けることさえできない。これを自らの怠惰による損失と呼ばず、何と呼ぼう。

【メリット⑤】個人事業主としての信頼度が上がる

これは主観だが、確定申告をさっさと終わらせている個人事業主は、信頼されるような印象がある。

早めに終わらせられる→計画性と責任感があり、期日内に終わらせられる

というような図式も成り立つと思われるので、早く終わらせておくのが吉なんだろう。きっとそう。

確定申告はさっさと終わらすべし。自分のために

ということで2023年の確定申告が終わった。フリーランス生活も気付けば7年目に突入する。いつ食いっぱぐれるかとヒヤヒヤしていたが、意外と持ってくれて我ながら感心しているし、なんなら一生この働き方で生きていこうと細々と前向きに暮らしている。

この生活、金は潤沢にない。だが、季節の移ろいを慈しんだり、旬を味わったり、何気ない風景に心を震わせる豊かさはある。
確定申告の〆切などに、世界を、自分自身を濁らせてなるものか。

仕事の合間に平日の公園を散策するのも、たのし〜

数年前まで3月に焦り始める生活を送っていた自分へ。
2月中旬に確定申告を終わらせて見る世界は、こんなにも美しいぞ。

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