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Movie log #001 Nuovo Cinema Paradiso

Nuovo Cinema Paradiso
1988年 イタリア映画 上映時間 イタリア公開版155分

邦題 ニューシネマパラダイス
日本公開 1989年 上映時間 国際版 124分

映画特有の感傷、故郷への郷愁を詰め込んだイタリア映画の傑作

最初に見た時が約25年前、中学生の時に見ていたのですが
正直うっすら記憶がなくなっている。
「ニューシネマパラダイスは良い映画だった」という印象で終わってしまっているのはもったいない、記憶を掘り返すよりも
今このご時世、サブスクで名画が見放題。そうなれば、もう一度観てみよう。そう思って見直してみました。

今、見直してみると……まぁー、泣きますね。
感動というか、後半になるにつれ、シーンひとつひとつが走馬灯そのもの
まるで主人公のトトの歩いている道を等身大で味わうかのような……。
思い出すだけで泣けますね。

全編に於いて卑怯すぎる……。映画が好きな人のための映画なんだなぁ。

映画好き少年の原風景

映画が大好きな人の「小さな映画館の映写室に入ってみたい」という憧れに
そのまま直にぶつけてくるこの映画の潔さ。

物語の中心人物二人の関係が、なんともまぁ柔らかい。
主人公トトは、地元の映画館で映写技師をやっているアルフレードに憧れ
アルフレードもまた、学校に通って勉強しているトトに未来を感じている。
その二人の関係性が、徹頭徹尾物語に根付いていて二人が親子のように錯覚する。

いつまでも街にいて居たいと思うトトに対して
アルフレードは故郷のことを忘れて自分の好きなように生きろと突き放す
「かつて映画を好きだったあの頃のように」と。
その間にある愛情の深さ。

憧れている人に一人の人間として認められるということが
人生にどれだけ影響するか
ハートウォーミング飛び越えて、もはや心が震える系映画。

「Cinema Paradiso」が燃えてしまうところなど
すわ、タワーリングインフェルノか!と思うほどに緊張しました。
あぁ、アルフレードの人生そのものが燃えていく……!

映画史を振り返るかのような映像表現と映写機

本編はカラー映画ですが、そのカラー映画の中にも鮮明さの違いがあって
少年時代や青年期は60年代の映画にフィックス(例えるならパナビジョン撮影)のような色があって
やがて故郷に帰ってくる壮年期は放映当時の1980年代の撮影を意識させるようにしているのではないだろうかと思ってしまう。
その映像の切り替えにオッとなってしまうのは、本当にその意図なのか
気のせい?それともこの映画にのめりこんでしまっているだけなのか?

映写機の歴史にも触れているのが、
映写技師にフォーカスしている映画であることを強調する面でアクセントになっている。
ニトロセルロース製の35mmフィルムは燃えやすいとか
表面に塗布してある感光乳剤をゼラチンと呼んでおり、舐めると甘いとか
いまやデジタル上映になってしまっているこの時代、知らない人も多いのではないかと思う映写技術の歴史を一気に知る事が出来るのも感慨深い。
上映中に映写用のフィルムが灼けてしまう事もあったことを題材にした火災事故や、
その火災事故が多くなってしまったために燃えにくいセルロース製のフィルムに変わったことなど、よくもまぁ、マニアックな部分に適度に踏み込んだものだと感心する。

その踏み込み方は、映写機やフィルムのことだけでなく、
最後の最後に登場する、必殺技とも思えるラストシーンにも顕れます。

映画のキスシーンだけを集めた映像から溢れる映画愛

ラストの試写室で放映されるアルフレードの遺品
火事で焼け落ちてしまった映画館「Cinema Paradiso」での思い出でもある遺品の内容、教会の検閲によって上映時に削除されたキスシーンを継ぎはぎにした「トト(とトトの半生を一緒に歩いた我々)にしかわからない映像」
その中に含まれるキスシーンの映像が、まぁぁぁ豪華。
中学生の時には気づかなかったあの映画この映画
例を挙げるならば
・風と共に去りぬ
・カサブランカ
・ローマの休日
……ほかにもダダダダ!と畳みかけてくる名画のキスシーン
それだけで、この映画を作り上げた方々の映画愛がわかる。
大人になってわかる、この渋さ。
見直して良かったと確信できる名画の美しさよ!

人生とはかくもうまくいかず、しかし、皆はあなたのことを愛している

「Nuovo Cinema Paradiso」は人生そのものを謡った人間賛歌です。
故郷や出会う人々、愛した人々、そして自分自身にたいする人間賛歌。
映画にあこがれ、映写技師に憧れた少年が、やがて映写技師になり
さらには映写技師が映し出す映画の監督になっていく。
その人生のロードストーリーの中には何があるのか?
それは時につらく、寂しく、しかしながら暖かく愛に満ち満ちた物語。

124分、とても美しい時間を過ごしました。

これを機に、今まで好きだと思っていた映画を見直すという事もやってみようかと思います。

映画は、やっぱりいいものですね。

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