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Zeiss IKON ZMを買った話

3年ほど前からずーっと欲しかったZeiss IKON ZMを購入しました。
フィルムカメラを取り巻く状況は悪くなる一方なのにIKONの値段はまったく下がらずむしろ上がっていく一方。
そもそも玉数が少ない。中古市場に出回らない=手放す人が少ないということはそれだけいいカメラなんでしょう。

IKONは数少ない絞りAE優先が使えるレンジファインダー搭載35mmフィルムカメラです。
同じセグメントにはMINOLTA CLE、フォクトレンダーBessaR2A、R3A、R4AとHEXAR RF、そして天下のLEICA M7があります。

個人的な趣向でどうしても絞り優先AEが使いたかったのでこのあたりを狙っていたのですが、
・MINOLTAは故障している個体が多く、修理業者を見つけるのが大変
・IKONは一番欲しいけど高い(市場に出回ってない)
・M7は頑丈だが重いしもっと高い(さらに市場に出回ってない)
・HEXARはいいスタイルだけど巻き上げぐらい自分でさせてくれ
という理由で最初はBessaR2A、もしくはR3Aを購入することにしました。
結局Bessaもそこそこ高いんですけどね…

探すこと数か月、某オクで外装ズタボロジャンク一歩手前のBessaR3Aを購入。約1年半ほど前の話です。製造元のコシナではまだパーツがあれば修理を受け付けているとのことだったのでジャンク歓迎。でも壊れてなければもっと嬉しい。

結局ギアボックスに異常があったり露出計が微妙にアンダーに寄ってたりだったのでコシナに丸投げ。修理費合わせても相場よりだいぶ安く手に入ったので満足です。

Bessaを使い始めて、レリーズ時振動の少なさ、等倍ファインダーの拡張現実感、重量の軽さに感動しっぱなしでした。

ですが1年以上もほぼ毎日のように使っていれば不満も出てきます。

不満①:シャッター音がうるさい
そりゃ一眼レフの「バシャコラ!!」みたいなミラーショックに比べたら静かですけど。Bessaはシャッターを金属幕にすることで最高速1/2000を実現しているので、トレードオフとしてその甲高い音が耳触りな時がチラホラありました。「バリィン!」とか「ジャリッ!」ってな感じの金属が反響している音です。

不満②:等倍ファインダー、メガネユーザーにはつらい
これはR3Aを買った自分が悪いです。常用している40mm枠はメガネ割れる寸前まで接眼レンズに押し当てないと枠が見えないです。50mm枠も怪しい。あと40mm枠は下線が一部しかないので水平出すのめちゃくちゃ難しい。
R2Aは0.7倍なのでそっち買えばよかったんですが、当時はお手頃な個体が無く…

不満③:ストラップアイレットの位置絶対おかしい
下に貼る画像を参考にしてもらえるとわかりますが、明らかに一眼レフみたいな場所についてるわけですよ。これがどういう影響を及ぼすかというと、軽いレンズ(~250gぐらい?)をつけると本体が軽い影響でレンズが上を向いちゃうわけです。私はNOKTON40mm(140gぐらい)をつけていました。
メガネユーザーなのでファインダーを覗いた際にメガネレンズに傷がつかないように今は生産されていない貴重なゴム枠のアイピースを使ってるんですが、レンズが上を向くと首から下げて歩いてるとアイピースがガシガシと服に擦れてゴム枠の上部分がすり減っちゃって気づいたら金属むき出しになっているわけですよ。
これがまあ腹立つ。なんでこんな設計にしたんかと。ノクチルックスつけたろかと(買えない)。
そもそもそんな重いレンズ付けたらレンジファインダーの良さなくなっちゃいますよね。
なので画像のようにファインダー横にデカいゴムブロックを張り付けてアイピースを保護しているわけです。
ちなみに裏蓋に貼ってあるのは亜鉛テープです。フィルム室の制振が狙い。

思想・道具・環境は個人に最適化すればするほどグロテスクになっていくのです

上:IKON 下:Bessa
裏面

そんなこんなでやっぱりIKON欲しいよな…と思いながら某オクにある高すぎて誰も買わないIKONをウォッチリストに塩漬けすること約数か月。
ぶっちゃけ買えないわけではないけどそこまでして買うかぁ?信念じゃなく道具で戦おうとするお前の悪いクセが出てるぞ!と自分を戒めて参りました。

ある日いつものように某オクを見てると、また外装ボロめの動作確認済み個体が相場よりかなり安めで出ているではありませんか!
外装ボロいの好きなの?と聞かれるかもしれませんが、そういうわけではありません。外装ボロいとその分安めになるし、コレクタブルな物ではなくあくまで道具なので機能に問題なければOKです。むしろ外装ボロくて動作快調だと歴戦の老兵みたいでカッコいいじゃないですか?あ、やっぱり外装ボロいの好きです。
まあ万が一壊れててもまたコシナに直してもらえればいいですし。
その時ちょうど不用品を売っぱらったばかりで資金に余剰があり某オクのクーポンもあったのでこれも巡り合わせだ!と思い切って落札。道具に信念がついてくることだってあるでしょうがい!!(逆ギレ)
思いもよらぬ形で憧れのカメラを手に入れることになりました。
レンズのこと忘れててC Biogon35mm F2.8を血反吐吐きながら購入しましたけど。

ファインダーはIKON特有の症状である黄変がありましたが視認性に問題はありません。というかIKONのファインダー評判以上に見やすすぎる。Bessaの1.5倍ぐらい大きい。倍率は0.73のようです。
このファインダーの黄変、気にはならんけど各所動作チェックしてもらうついでに直らないかな?とコシナに相談。
すると、ファインダーブロックは距離計に組み込まれていてアッセンブリごと交換しなければならないが、もうアッセンブリが払底していて交換不可とのことでした。なるほど…
ちなみにこの黄変は何が原因か、ということを尋ねると、ファインダー反射率を上げるためハーフミラー部分に銀の蒸着を行っていて、この蒸着膜が酸化すると黄色く変色するので空気を遮断できるように構成をしているが、経過時間が長くなると防ぎきれずに変色してしまう、との事でした。大変勉強になります。
貼り合わせを剥がして銀を再蒸着して再接着ってのはかなり難易度高そうですね。
二重像の見え方には全く問題ないので気にしなけりゃ平気です。慣れです慣れ。

露出計も動くし巻き上げ・シャッターにも異常はなさそうです。

まだ撮影したテストフィルムは返ってきてないので撮影結果は確認してませんが数日使ってみた所感をBessaを比較しながら。

・シャッター音、巻き上げ音静かで滑らかで気持ちいい
Bessaのシャッター音が「バリィン!」ならIKONは「シャキッ」です。
Bessaの巻き上げ音が「キチキチキチ」なら「チャカッ」です。
いずれも静かで軽快。シャッター音に関しては同じ金属幕で最高速1/2000なのになぜこんなに差が出るのか?裏蓋もBessaと同じく叩けばポコポコ鳴るのに。
巻き上げも滑らか。Bessaはカウンターが進むにつれて巻き上げが重くなってたんですがIKONは最後まで同じ重さです。

・アイレットの位置、やっぱココよ
特筆すべきではないですが、Bessaを使っていた身としては言わざるを得ない。ストンと落ちるストラップ。前を向くレンズ。あるべき場所にある。
カメラが正しい向きをしているせいか、BessaとNOKTONの組み合わせから30gほど重くなったにも関わらずなぜか首の負担が軽くなった気がします。

これぐらいかなぁ。結局機能もやることもBessaと変わらないですし。

IKONといえば長い基線長が有名ですが、これは逆に二重像がピーキー過ぎてちょっと目障りかも。ゾーンフォーカスでスナップしかしないので。あとシャッタースピードはBessaに比べると逆光時に見づらい。IKONは左端、Bessaは下です。絞り優先AEなので気にする必要はあまりないですけどね。

絞り優先AE機を2台使って思ったんですが、電子制御のカメラってやっぱり10年後20年後も使い続けるのは難しいですね。
コシナは今でこそパーツがある部分に限っては修理を受け付けていますがそれらもいつかは払底されて修理不可になりますし。製造元のコシナが直せないカメラを他のカメラ修理業者は直せるとは思わないですよね。調べたことないのでよくわからないですが。

そうなると強いのが電子回路を使わないカメラ、もしくは電子回路を使っているけどまだまだ現行のカメラ、つまりライカ最強って話になってくるワケです。

フル機械式のM2~M5、M-Aはそもそも壊れにくく修理も(電子式と比べて)容易いでしょうし、露出計付きの復刻M6、MPはバリバリ現行なのでパーツも豊富でしょう。M7は唯一電子式シャッターで生産終了しているので修理は困難のようです。ううむ、電子式…
重いし高いしライカライカ言ってる人は何が良いんだ?と思ってましたがやはりこういうところに強みがあるんですね。ううむ、ライカ…
なんか数年後にライカ買ってるイメージしかないので今のうちから絞り優先AEを脱却する練習始めようかな…なんて思ったりもしてます。

そういえばコシナは体力あるだろうになんでIKON復刻させたりしないんだ?とずっとボヤいてましたが、そもそもシャッターユニットやらその他のパーツが外注品だったりしてそのメーカーがもう作る余裕が無い、みたいな話を見かけてなるほどね…となりました。そりゃそうだ。

いつかライカを手に入れるまで、ひとまずはIKONで楽しみたいと思います。

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