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【どこの家にも怖いものはいる】ホラー×ミステリ=小説界のドラッグ!(※個人の感想です)

ハセガワ、テラウチともにずっと仕事が立て込んでいたせいで、『ゴリラ―マン』で更新ストップしてしまっていた“推し問答”ですが、少し時間ができた&あまりにも推したい作品に出合ってしまったので、なんの予告もなしに再開してみます。ハセガワくん、見てる〜〜〜??🤗

前回の最高ラスト選手権、藤田和日郎作品までは頷きすぎて首がもげそうでしたが、『ゴリラーマン』で頷きが止まって、往年の受けくん並に小首コテンしてしまった。ちなみにこの『ゴリラーマン』、続編『ゴリラーマン40』が2話限定で復活していたらしいよ。

さて、今回私が推したいのは、三津田信三著のホラー小説『どこの家にも怖いものはいる』(中央公論新社)です。これを読んでからホラー熱がどうにも止まらなくなってしまって、幽霊屋敷シリーズ作家三部作を秒で読破。9巻あるシリーズもの『厭魅の如き憑くもの』(講談社)に手を出したら社会人として終わってしまう気がして足踏みしているうちに、「そういえば『ぼきわんが、来る』(KADOKAWA/角川書店)も気になってたんだよね〜」と軽い気持ちで読み始めたら、いつのまにか全シリーズポチってたなう、みたいな感じで沼にズブってます。これでGWがまあまあ溶けましたよね……。

何が私をこんなに駆り立てるのかというと、「ホラー×ミステリ」というテーマが暴力的なまでに面白いんですよ。しかも作者本人が主人公というモキュメンタリー要素も加わって、それがまあ殺す気かってくらい面白いんです……。作家三部作の最後のほうは「本当はやらなきゃいけない仕事があるのに止まらない……」とやや半泣きで読んでいました。面白いのに辛いってなんなんだ……。

『どこの家にも怖いものはいる』は、幽霊屋敷に関する5つの資料と、ホラー作家・三津田信三とホラー好きの編集者・三間坂秋蔵がそれらの謎解きをしようとする「幕間」で構成されています。5つの資料は年代も場所もバラバラなはずなのに、不思議な共通点が見えてきて……という「霊的なホラー要素」と「ミステリ的な謎解き要素」ががっちゃんこされていて、恐ろしい真実が明らかになったときに、怖がれるしカタルシスも得られるしという、1冊2度美味しい仕組みになっているんです。

しかも、ホラー要素が実話怪談的というか、明確な解決が与えられないさじ加減が絶妙で、1冊読み終わった端から次が読みたくなるという、ドラッグ的な魅力を湛えています。気がついたら電子ポチってて、本当に危ない

怪談って「●●が祟っていたけれど、●●をしたので怪奇現象がおさまりました」的な話より、「あれは一体なんだったんだろう」と置いてけぼりにされる話のほうが圧倒的に怖いんですよね。ただ、長編小説で置いてけぼりにされるは辛い。超短編の実話怪談なら置いてけぼりが続いても耐えられるのですが。そんな強欲な読者を黙らせてくれるのがミステリ要素。個人的に「物語界のちゅ〜る」って呼んでます。なぜならずっとぺろぺろしゃぶっていたいから。

今回はリハビリということで軽めに終わろうと思うのですが、最後に、この空前のホラー小説ブームでアタリだった作品を紹介させてください!

『ぼぎわんが、来る』(澤村伊智 / KADOKAWA)
映画版とは結構ストーリー展開が違っている+映画より胸クソ感薄め+「アレ」が来た理由に納得=絶対読んで。ただ、映画のキャスティングはめちゃくちゃ“良い”ので、琴子はずっと松たか子で再生されてました。小松菜奈の真琴もよき。次巻の『ずうのめ人形』まで手を出したらもう止まれない……。

『拝み屋郷内 花嫁の家』(郷内心瞳 / KADOKAWA)
実際に拝み屋をしている郷内心瞳さんの体験談(という立て付け)。三津田作品のドライさに慣れていると、ややウェットな描写が気になりますが、描かれている現象のおぞましさやパズルのピースがぱちぱちとはまっていくかのような話運びに引き込まれます。なんで「母」ってこんなに怖いんでしょうね。

『怪談売買録 嗤い猿』(黒木あるじ / 竹書房)
作者が「怪談売買所」というイベントで集めた話を綴った実話怪談集。「定形に嵌まらない、生々しさの漂う、滋味深い逸話(まえがきより引用)」がぎっしり詰まっています。オチがないから圧倒的に「生」で、ぶつっと終わってしまうから想像力が掻き立てられる……。読むとしばらく、夜中一人で家にいるのが怖くなります。

『怪談のテープ起こし』(三津田信三 / 集英社)
こちらはノンシリーズ。6編の短編からなる作品ですが、メタ的な構成によって恐ろしさが倍増しています。個人的には1話目の「死人のテープ起こし」がトラウマ級に怖かった……。どうしてこんなに忌まわしい話が書けるんですか?(称賛)

これを書き終わったら歯を磨きに洗面所に行かないといけないのですが、誰もいないはずの階下から、スサッスサッと人が歩く音が聞こえる気がする。ほんとホラーって、日常をドラマティックに彩ってくれますね!(ニッコリ)

(文責/テラウチ)


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