推しに初めて「好き」と言えたオタク話


私はとある若手俳優を7年半ほど追っかけまわしている。

他にもマンガキャラやアイドルなど、大好きで「推し!」と言える存在はいるが、この若手俳優に出会ってからの7年半はスケジュールや金銭面の都合はすべて彼が優先だった。

そのくらい第一で大好きな推しに、私はつい最近になって初めて「あなたが好きです」と言った。

どこにでもいるオタクのどうでもいい1体験にしか過ぎないけれども、私にとってはとんでもないクソデカ感動体験だったので、感情の整理をしながら、書く。

(ちょっと長すぎ&キモすぎになったのでクローズドにしよう。後半有料です……)


7年半の間、推しと話せる機会、思いを伝えられる機会は幾度となくあった。
でも私は最近まで一度も本人に面と向かって「好きです」と言ったことがないし、手紙にも極力「好き」と書かないようにしていた。

なぜ「好き」と言わないようにしていたのか考えてみると、

①まず私の自己肯定感が低すぎて私からの好意なんて嬉しいわけがないとしか思えなかったから

②俳優の仕事をしている人のファンになったので、ファンは推しの俳優としての仕事=演技を楽しむべきで、本人に向けた「好き」はお門違いな気がしていたから

→推しはアイドルではないのだ、好意・愛を集めてこそ成り立つ職業ではない。俳優として推しが取り組むべき仕事は、共演者や演出家、映像作品なら監督、プロデューサーやディレクターなど作品に関わる人たちとコミュニケーションを取り、芝居で作品作りに貢献することだ。そこにオタクが好き勝手に感情を投げかけてくることを認め受理する役目まで負わせるなんて業種違い・専門外・過労働のように思う。し、俳優本人ばかり見るのは本業の芝居を尊重していないことになるのでは、とも思う。
※そうしている人を非難するための意見ではなくて、自分を律するために考えていたことです。私以外の人には適用されない、私が私に課すものとしてご理解ください。

好意を伝えるのは相手にそれを受け取ることを強要する行為のように思っていたから

→推しとオタクに限った話ではなく、生活の中にある恋愛とか友人関係でもこう思う。好きになった人に告白したこともない。

「私はリアコじゃないですよ」と言外に示したかったから

今思い当たるのがこんなところである。

④について特筆しておくと、女オタク界隈で言う「リアコ」=推しにリアルに恋しているオタクは、なんとなく蔑称の印象がある。

 本気で推しに恋をしたオタクは、「恋愛感情」なので、他のオタクよりも推しを通して良い思いをしたいし、推しが他のオタクに優しくしているところなんて見たくないし、そのためなら他人を蹴落とすし、攻撃するし、ルールも守らないし、推しにも自分の思いに応えることを強要する。

思いつく限りの偏見がこうだ。
(思いをひっそりと抱えマナーを守ってリアコをしている方もたくさんいると思う。申し訳ない)

単に「マナーが悪い痛いオタク像」を「リアコ」に押し付け置き換えて、スケープゴートにしている自覚はある。
で、私はその(偏見像の)「リアコ」であると、推し本人にも同じ推しのオタク=同担にも思われたくないのだ。

「私は手の届かない男に夢中になって本気で恋愛感情を抱えておりいつか気持ちが叶うと勘違いしている者ではありません、周囲に攻撃もしません」とこっそりアピールするつもりがどこかにあって、好意ド直球の表れである「好き」という言葉を使うのを避けていた。

でも素晴らしいパフォーマンスをする人に感じるときめきと、本気の恋のときめきの違いなんて、明確に分けられるものではないな、と今は思う。

私は俳優としての彼が好き!演技が好きであって見ているだけでいい!本人に恋しているわけではないの!と思っていたところで、カーテンコールで客席を見渡した推しと目が合った瞬間は心臓が跳ねて全身が熱く固くなるし、推しと直接話せる機会があれば緊張して、優しい言葉をかけられたら心がとろけてしまう。

私にも(偏見に書いたような他人を蹴落としたいとか推しに恋愛的な対応を強要したいとまでは思わないけど)推しに対する「恋」に近いときめきの感情はきっとあって、けれど①~④に挙げた理由のために「好き」と言わないどころかその感情さえも押し込めていた気がする。


 

でも、どう考えたって私は推しのことが「好き」なのだ。

推しの演技が好きだ、私が舞台を観る時に期待する「生の感情のやりとり」を、今私が知っている限りで1番理想的に提供してくれるのがこの推しなのだ。

推しの愉快さが好きだ、思いもよらない発想と言動でイベントや配信番組をいつも盛り上げており、共演者たちも観客も笑い転げさせている。

尽きないのでここでは省略するが推しの見せてくれる色んなところが好きだ、どうしたってこの人からもらえるエネルギーは大きく、眩しく、魅力的で、私が推しのことを「好き」でないのは無理がある話だ。



とある日、私の推しとは別の若手俳優を追っかけている友人と、酒を飲みながらお互いの推しの話をしていた。
(2020年2月頭、日本に某ウイルスが蔓延する前のこと)(←こういう注釈つけなきゃいけなくなったの、世知辛い)

私が「推しに好きと言ったことがない」「手紙にも好きと書いたことがない」と漏らしたら友人にこう返された。

「推しさん、しりこちゃんが推しさんのこと好きって知らないんじゃない?」

目から鱗である。

そんなことある?

え、そんなことある?????

そんなこと……………………………………


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…………あるかも…………………………………………


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