「学校にチョコを持ち込む」
A:ハルちゃーん
B(走ってくる)はぁ、はぁ、はぁ……
A:ハルちゃん……?
B:だめだ。やっぱりあの犬、バレンタインチョコ探知犬だ!!
A:チョコ探知犬!?
B:学校にチョコを持ち込もうとした生徒は
みんなどこかへ連れていかれてしまったみたい!!
A:どこかって、どこ?
B:わからない……多分、生徒指導室じゃないかな
A:生徒指導部……
B:ああっ!!もう!!
こんなことならチョコなんて持ってこなければ良かった!!
友チョコなんて持ってこなければ良かった!!
A:そんなこと言わないで!!
B:えっ!?
A:私ハルちゃんにチョコもらえたら嬉しいよ?
B:ユウ……ごめん
A:1個ちょうだい?
B:ああ
A:一緒に食べよ?
B:うん……
B:なんで、なんでチョコ持ってるってだけで自分の学校に入れないんだっA:ね。
B:……ユウのチョコは?
A:え?
B:義理?
A:……私ね
B:うん
A:生まれて初めて、本命チョコ作ってみたんだ
B:ユウ、すごいじゃない!
A:ゆうべからずっとドキドキしてたんだよね。
その人に、ちゃんとチョコ渡す勇気、出せるかなぁって
B:出せる出せる!
A:でもうまくいかなかったら、やだなぁって。ずっと考えてたんだ
B:ユウ……
A:笑っちゃうよね。まさかあんなドーベルマンに阻まれて、
学校に入ることすら出来ないなんて想像もしていなかった。
でもさ……本当言うと、どこかで「上手くいかないんじゃないか」
っていう気持ちはあったんだよね。
だからきっと、ここで食べてしまうのが、私の……
B:諦めるなよ!!
A:ハルちゃん
B:諦めるなよ。好きな人の気持ち、まだ聞いてないんだろ?
学校にチョコ、持っていこう?
A:……いいよ。私が持ってきてるのはその1個だけだから。
ここで食べちゃえば、きっとあの犬も追いかけてこない
B:待てって!!落ち着けって!!
A:落ち着くのはハルちゃんのほうだよ!!
B:えっ
A:知ってる!?犬の嗅覚は人の100万倍あるんだよ!?
しかもドーベルマンは本物の麻薬探知犬や警察犬としても
採用されている犬種なの!!逃げ切れるわけないじゃない!!
B:く、詳しいな
A:それにさっき見たでしょ!?ムツミ先輩が……
バッグの中からチョコ引きずりだされて……それをあのアオキ先生が……B:……っ。かわいそうだったね
A:あんなハゲメガネ豚ジジイに食べられるくらいなら
今私がここで食べるほうがマシじゃん!!
B:だから諦めるなって!!
A:止めないで!!やっぱり私にはホンダくんに告白なんてできない!!
B:ユウ!?
A:あっ
B:ユウ、ホンダくんのこと、好きだったの
A:……うん。えっ?
B:……い、いや。いいんだ。別に
A:ハルちゃんまさか
B:ユウ、提案があるんだけどさ
A:……なに?
B:私がおとりになって、あの犬を引き寄せるから
A:ハルちゃん!?
B:ユウはその間に突破して
A:待って、ハルちゃんのチョコは
B:いいんだ。私のチョコは、もう、渡せないものになっちゃったから
A:……嫌だよ、一緒に渡そう?
B:いいんだ
A:一緒に2人でホンダくんに渡そう?
B:いい?チャンスは1回限りだからね
A:待ってよ!!
B:じゃ、行くよ
A:ハルちゃん!?
B:ユウ……ハッピー、バレンタイン。
(ドーベルマンの声)わんわんわんわんわん!!!!!
A:ハルちゃーーーーん!!!
B:ほーら!犬野郎め!!こっち来てみろ!!ほれほれー
A:ハルちゃんの気持ち、無駄にできないっ……
私がこのチョコを守らなきゃ!!
N/A:大事な親友の尊い犠牲を目の前にしてユウはようやく走り出す。
気弱な少女は果たしてバレンタインチョコを守り通し、
大切な人に届けることが出来るのか!?
次週「サバイバル・バレンタイン(後編)~ホンダくん実はホモ疑惑」
乞うご期待!!
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★ 表紙画像は「写真素材 足成」(http://www.ashinari.com )様の画像を加工させていただいたものです