今日もたくさんの人があの歌を「好きだ」と言うんです。

四畳半に雨が降る
湿った畳に横たわる

水浸しの自分を俯瞰して
「かわいそう」っていうのをやっている

好きなことから語りたい
「いやだ」と言うのは自分も傷付く


   自分の言葉に一番傷付いているのは
   自分の知る限り 自分自身で

   自分の言葉を一番否定したがっているのも
   自分の知る限り 自分自身です

   もっとも他の人が何に傷付くのか
   何を好きだと思うのか
   人が何かを好きになったり
   誰かを好きになったりする感覚がどういうものなのか
   うまくわからないんですから
   比較のしようがない


雨が降る
雨を歌った懐メロがラジオを潤す

この歌は好きだ
今日もたくさんの人がこの歌を「好きだ」と言うだろう

「たくさんの『好き』をシェアーしてください」

とラジオのDJが言ってまた次の曲へ移る
次の曲は
そんなに好きじゃない歌だった


   僕だって
   『嫌い』の感情だけで全部を見ていたいわけじゃないんです

   ただ好きになれないことばかり多くて
   困っているんです

   何かを好こうとする自分も
   なんか 嫌な感じがするし

   今日もたくさんの人があの歌を「好きだ」と言うんです
   だからわざわざ僕なんかが好きだと言っても
   なんの意味もない気がして

   なんだかなんにも浮かびません
   そんな自分もまた嫌で

好きになることから始めたい
「嫌だ」は自分も傷付ける

「好き」から語り始めたい
なのに

雨からして嫌い


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