「バレンタイン怖い」

A：はい、チョコ
B：チョコ！？
A：勘違いしないでよね、ただの義理チョコなんだから
B：チョコなのか！？
A：義理チョコだよ
B：……本当にチョコが入ってるのか？
A：入ってるよ
B：からっぽなんじゃないのか
A：え？
B：チョコが入ってると見せかけて実はからっぽなんじゃないのか
A：なんでそんなことしなきゃいけないの
B：去年そうだったじゃないか！！！
A：えっ……
B：去年も俺に渡してくれたよな？まさに今とおんなじような感じで
　「勘違いしないでよね、ただの義理チョコなんだから」
　「わかってるって、どうもありがとう」ってもらって家に帰ったら
　チ　ョ　コ　す　ら　入　っ　て　い　な　か　っ　た
A：あれ、そんなことあったっけ
B：いま初めて言う
A：１年越し！？
B：そのいかにもチョコレートが入っていそうなピンク色の小さな袋の中には
　　ただただ甘い香りのする空気だけが詰め込まれていた
A：なんで去年のうちに言ってくれなかったの
B：てっきり俺なんて義理チョコじゃなくて
　　義理袋と義理空気しかもらえない存在なのかと思ってたから
A：そんなことないよ、わざとそうしたわけじゃないの、ごめん
B：本当に？
A：義理チョコくらいはあげるよ、義理チョコくらいは
B：そんなこと、信じられるかよ……
A：うーん……じゃ去年の分と合わせて2個あげるから許して
B：チョコを？
A：チョコを。
B：空気じゃなくて？
A：チョコを。
B：本当かなぁ
A：お願い信じて
B：俺もう女子の言うこと信じられなくなってきてるから
A：1年間も引きずるからでしょ
B：女子怖い
A：一概に女子のせいにしないで
B：俺去年だけで袋に空気だけ入ってるの2人からもらったんだぜ
A：あと1人居たの！？
B：1個だけだったら「あ、うっかり入れ忘れちゃったのかな」って思えるじゃん？
　　でも2個続いたらさ、なんか女子たちの間で俺、義理チョコすら
　　あげちゃいけないブラックリストみたいなやつに名前書かれてるのかな？みたいな
A：そんなことない、大丈夫
B：本当に？
A：そんな怖いブラックリスト存在してないし、その人が忘れたのもわざとじゃない
B：本当に？
A：うん、まあ、たぶん
B：たぶんかー
A：たぶん
B：女子怖いなー
A：女子を怖がらないで
B：バレンタイン怖いなぁーーーー
A：バレンタイン怖くないよ
B：チョコ怖いぃぃぃいいい
A：ほーら怖くないよ、チョコだよ～
B：やめろ！！ど、どうせまたからっぽなんだろ……
A：お願いチョコを信じて
B：どうせまたチョコなんて入ってないんだ……
A：まぁ……先に言っちゃうけど今年はチョコじゃなくて私特製
　　手作りチョコクッキーにしたんだ
B：チョコ空気？
A：クッキー
B：チョコの匂いの手作り空気……
A：チョコの味の手作りクッキー！！
B：ああ、クッキー
A：よほど去年のエアー・バレンタインがトラウマだったのかしらこの人
B：本当にクッキー？
A：信じて
B：……信じていい？
A：信じていいよ
B：この袋には……チョコクッキーが……いや、きっとまた……ああ
A：お願い早く受け取って
B：どうして急がせる！？
A：ちゃっちゃと渡したいからよ
B：渡すだけ渡して逃げる気？
A：違うよ、このあと本命に渡すという大仕事が控えてるからたかが
　　義理チョコ渡すだけでこんなに時間かけたくないの
B：容赦ねえ
A：だから……受け取って？
B：えー……
A：私の、き・も・ち☆
B：女子怖っ
A：ごめん、普通に受け取って
B：じゃあ……わかった。ありがたく頂戴するよ、その代わり
A：ん？
B：こっちも後になってショック受けてまた1年間引きずったりしたくないから
　　袋開けてクッキーが入ってるのを確認するところまでは付き合って
A：大丈夫だよ入ってるから
B：本当に？
A：そんなバレンタインでチョコ入れ忘れるなんてことあるわけがないじゃん
B：去　年　！　？
A：それはそれ
B：……じゃ、開けるよ？
A：どうぞ
B：では。……おーーーぷん！
A：じゃじゃーーーん！
B：えっ……え、何、これすっごい豪華じゃない？
A：え？
B：っていうかクッキーじゃなくてちゃんとしたチョコじゃん！
　　わーすげえ、ありがとう
A：あっ……ごめん
B：え？
A：これ本命の……
B：……え？
A：いったん返して
B：ええっ！？

A：このたびは大変申し訳ございませんでした
B：ええええええええ
A：明日改めてチョコクッキー渡すから
B：いや、すっごいレベル高そうな手作り本命チョコ今見ちゃったんですけど
A：明日お詫びにたくさん焼いて渡しますので……
B：待って、え、ちょっと！！
A：お楽しみにー！
B：ああああああああ！！！ちきしょう！！！なんなんだ！！！バレンタインちきしょおおおおおおおおお！！！！

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