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火をつけて燃やした薪炭の上を裸足で歩き、今日も日報を書かずに帰る。

先日、高校生の妹がデザイン系の専門学校のオープンキャンパスのため、住処である大阪に来た。私は保護者として、イベントに賛同。人見知りで全く話せない妹と打って変わって、学生スタッフや講師とヘラヘラ喋り倒し、「お兄さんが講師なってくださいよ〜」とお世辞までいただいた。ごめん妹。

上記の通り私もデザイン業界、ただし末端も末端、半歩後ずされば崖に落っこちるようなところで広告やパッケージ、コンセプトみたいなもんを作らせてもらっておりまして、いつも予算は暴発祭(⌒▽⌒)、どうしたら給与上がるんですか、上流からいただきました案件を「泣きそう吐きそう壊れそう」の三原則で従事させていただいております。

上の原則になってしまうのは、すべからくスケジュールが理由であるが、今現在もスケジュールに追われすぎて大変なことになっている。明日やればいいか〜がもう通用しないので、今はせっせこ

「デザインどうすればええねん、これがこうであれがこうでしょう、スケジュール的にクライアントからFBもらう前に走り出さないと納品できませんで、土日もお盆も返上していただけませんか」

と開発側に価値のなくなってしまった頭を下げ、文句にまみれながらどうにか作業してもらっている。イベント中、こんなにデザインって大変なのよ、最後まで頑張りたいけど、こういったことが頻発するのよ、日本のプロダクトデザイン史の観点からも、お金になりづらい土壌なんだよ、と妹に愚痴まじりの言葉を投げかけようとしたが、人見知りの彼女が、一生懸命学生スタッフと会話しながらIllustratorやPhotoshopを触っているのを見ると、そんなこと言えるわけがない。あと、2人で近所の河川敷まで散歩して、私はスケボーに乗って、当時未就学児だった妹はニコニコしながら自転車で追いかけてくる、という十数年前の風景をなぜか思い出してしまって、どうぶつ奇想天外くらい涙を流すかと思った。あとはお酒を一緒に飲めるようになってしまったら干からびてしまう。

仕方のないことをつらつらと書いているが、こうしている間にも納品が迫っている。明日の朝までに映像を1本作り上げなければならない。朝から別件のMTG、午後からは炎上中の案件のデザイン相談があるため、今やるしかない。どこを見渡しても燃え盛っているので、チマチマ消火するんじゃなくてそのまま歩いていくしかない。

「遅刻しすぎると、諦めて落ち着いて支度をし、優雅に朝食をいただく。」

このあるあるがずっと続いている。スケジュールを作成しなければならないのに、noteなんか書いている。書き終わったらコンビニ行ってお水買って、煙草なんか吸っちゃおうかなとも思っている。

サラリーマンならばこれまたほとんどの方が行う庶務として、日報、タイムカード制度がある。弊社はその日に行った業務の作業時間と項目を逐一報告しなければならない。日々追われまくっているせいで、明日書こう・・・3日分書こう・・・1週間分書こう・・・と弱音を吐き続けた結果、「遅刻しすぎた理論」に則り、月末に優雅に1ヶ月分書くという暴挙に出ている。日報は自社開発した登録システムにて行うのだが、社をあげて常習犯として認定されてしまったせいで、システム改修が行われた。毎日日報を提出しない人物はAPI連携したチャットアプリの全体チャンネルにて報告される。また、システム側でも誰が書いてないか一発でわかるようになってしまった。次は提出しなかった場合上長にメールを飛ばすように改修するらしい。

私のおかげでよりよいシステムを開発するのは良いことだ、と詭弁を吐いている。また、事務員の方々から毎日名指しで日報を書けと言われるおかげか、勤怠についての全体報告があると私の似顔絵スタンプが真っ先に押印されるようになった。頭にタオルを載せ、ラジカセを持っているというなんとも間抜けなイラストがふんぞりかえっている。

また、日報書き溜め常習によって、あまり交流のなかった事務員の若い女の子が美大出身というのも知った。月末になる勤怠に関してのリマインド、1、2日の報告漏れだった数名は「お願いしますね〜」と柔らかな文章が書かれているが、同じく柔らかな文章で私の急所を刺してくる。

1ヶ月働いて、2日分しか出してない自分もよくわからん。
筋トレしてるイケメンお兄さんからチョークスリーパーされるらしい。

技を決められるのはもうわかっているので、いつもなら書こうとしない。ただ、今回は画像も添付されていた。

上手すぎだろ、たかだか勤怠報告でここまで描く?

ペンで一発描きであろうチョークスリーパーの一節。構図やらなんやら、素人ではないことは明瞭である。ちょっと絵が上手いですレベルじゃないのよ。技をかけるイケメンお兄さんとギブアップを懇願する私、なかなか判定を下さない事務員の女の子。

すぐさま事務室まで飛び、「絵、上手すぎません!??!??!?!?笑うでしょそんなん」と早口でまくしたてた。そのあと、
「案件でイラストおねがいしてもいいですか、というよりちょうどあるんでこれお願いします、詳細チャットします。では。」
と最低すぎるお願いをして、その場を立ち去った。本当は「やりたいです!」快諾してくれたのだけど、後から高低差ありすぎて飛び降りてるじゃんと後悔した。ごめんね事務員さん。

ここまで描いてくれたんだから、日報、毎日書くしかない。でも、今度は何のイラスト描いてくれるんだろか、とあえて書かないのもありだなと思っている。日報を書かないせいで、システムは改修されたし、隠れていた才能も見つけてしまった。

日常でも仕事でもそうだけど、整列された中に一つ崩しがあるだけで、新たな視点が生まれるものであると改めて考えさせられた、と言い訳する。

夜なべして書きます。終わりです。

やっとこれ読み終わりました。

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