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自分が作りたいだけじゃない、みてもらう人のための映像。- ゲスト編 #05 関和亮監督

こんにちは、小布施短編映画祭広報です!

「わたしと映画祭」ゲスト編第5弾では、小布施短編映画祭ゲスト審査員である、関和亮監督にお話を伺いました。監督自身小布施町で生まれ育ちました。

インタビュアーは、高橋郷(以下、ごう)、岡田(以下、なほ)の2名が務めました。

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関監督の原点、小布施

ごう 関監督にとって小布施の魅力とはどんなものですか?

関監督 小布施は、あまり大きくないまちで、人もそんなに多くないですよね。小布施を離れてだいぶ経つからこそ思うんですけど、歩いていると声をかけられたりとか、御近所さんがみんな知っているとか、そういう交流があたたかいまちだなと感じます。そして自分たちの魅力や頑張るべきことが明確になっていたりすることも、まちのつくりかたとして良いなと思います。もちろん北斎の絵が残っていたり一茶の俳句が残っていたり、それ自体もすごいんですけど、それを最大限生かしていこうという、まちの意識が非常に特徴的ですね。

ごう 小布施で育ったことは、今のキャリアに影響を及ぼしていますか?

関監督 あまり環境が関係あったかはわからないですけど、自然豊かな小布施で両親も好きなことをするのを応援してくれて、すごく自由に育ったと思います。若い時からアートに触れていたかと聞かれると、そうではないです笑。ただ、雁田山(岩松院がある山の方)が遊び場だったんですけど、家にあったハンディカムを持ち出して、友達と映画作りという名の遊びみたいなことをしていました。当時は中学生くらいでしたけど、今思えばそれが映像制作の原点ですね。今だったらスマホやパソコンで簡単にできてしまうことかもしれませんが、当時はテープで撮ったものをどう編集するか、というところから手探りでした。編集ができないから、もう順番に撮っていくしかない!みたいな状況でした笑。NGテイクも間に入ったりしてましたね笑。振り返るとそれ自体はとても貴重な体験ですね。

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ごう そこからプロとしてやっていきたいと思ったのはどういった経緯だったんですか?

関監督 私は昔から音楽、特に洋楽がとても好きだったんですね。それで当時、今でいうカウントダウンTVのUK版みたいなチャート番組をテレビで見ていて、「こういうものをミュージシャンの方と一緒に作ってみたい」と高校生の時に思ったことが、この業界を目指したきっかけです。

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関監督が考える「短編」とは

ごう 関監督にとって『短編』とはどんなものですか?

関監督 短編の定義はわかっていないですが、単純に時間の定義なのかなと思います。時間は短いんだけど、一本の映画を見たような満足感、充実感を持つものなんですよね。そういう意味では短編も長編もあまり分け隔てなく、作品として『何を伝えるのか』ということが大切だと思いますね。

ごう MVも一種の短編なのでしょうか?

関監督 そうですね、MVはだいたい3~5分なんですが、やっている身としては、起承転結があって、音楽と映像で見てもらった時に充実感を感じてもらえるように作ってます。

ごう 長さによってメッセージの伝わり方、伝え方は変わってきますか?

関監督 長いものも短いものも、1つの作品で伝えたいことって最終的に1個くらいだと個人的には思っているので、長さは重要ではないとも言えますね。ただやっぱり長い時間積み重ねてきた中での「ありがとう」と、短い作品の中での「ありがとう」は、伝わり方が変わってくるような気がしますし、使う手法も変わってくるのかなと思います。

ごう 関監督の作品を拝見して、ポップなものから、シリアスな世界観の作品があったと感じるのですが、世界観というものは、メッセージに合わせて変えていくものなのでしょうか?

関監督 実はMVは作りだしてから仕上げるまでに早くて1ヶ月くらいで作ってしまうんです。同じアーティストでも前回はカラフルだったから今回はシックにやってみようとか、その楽曲に合わせて意識してやっているかもしれないです。やっぱりずっと同じものだと見ている方も飽きてしまいますし、楽曲もハートフルなものもあれば、シリアスなものもあると思います。また、ハートフルなものをシリアスに見せるというのも「音楽を別の視点から解釈してもらう」というメッセージにもなると思っています。そこは、毎回どういう世界観がこの曲に合うのか考えながら作っています。

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ごう 個人的にいろんなMVを見て、まさにこの曲のイメージはこんな感じだった!とか、逆に、こういう見方もあったのか!と感じることがあるんですけど、関監督ご自身は曲から映像を作るときに意識していることはありますか?

関監督 個人的には、曲のイメージにあった方がいいと思って作品作りをしていますね。ファンの方や、この曲を初めて聴く方がその曲の世界に入りやすくするということが映像の1つの役割だと思っているので、そこは外さないようにしています。僕の場合は、曲のタイトルについてる言葉からあまり離れないようにしようと意識します。例えば、海をテーマにした曲なら、山では撮らないですね笑。ただ、難しいのは、男女の恋愛をテーマにした曲だったとき、単に男女にお芝居をさせてしまうとありきたりになってしまうので、じゃあ人間じゃなくてカエルにたとえよう!とか、人形にたとえよう!とか、そうすると想像がいろいろできるように仕上げられますよね。いつもそんなこと考えてます。

ごう 個人的には、関さんの作品が近代的で、最先端の技術を使っているなと感じます。これって30年後とか、もっと先に見られたときに全然別の感じ方をされる可能性があると思うのですが、映像を作るときに最先端の技術を使うことについてどのような意識をされていますか?

関監督 実はあまり意識してやってないです。新しい技術や手法のことを知るのは好きで、これを使ったらどうなるのかな、という軽いノリでトライアンドエラーしています。もちろんうまくいく時もありますし、あれぇー…って時もあります笑。先ほどおっしゃった通り、あまり意識して時代を写すぎてしまうと、どんどん古くなってしまうような気もしています。それよりも、割とベーシックなもの、普遍的なものも結構好きです。そういう普遍的なものに新しいものを組み合わせていくのが面白くてやっています!

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ごう 好奇心とかそういうものに掻き立てられているんですね!

関監督 まさに、毎回実験しているようなものですね。わからないことの方が多いですし、最後までやってみないとわからないので、毎回本当にトライアンドエラーをしています。それに、結果が分かっているような作品作りをしていても自分が面白くないですし、きっとみている人も面白くないと思うんですよね。自分がどう面白がれるかを毎回意識しています。

ごう 関監督の色使いも独特で面白いと思っているのですが、色に対するこだわりについても伺いたいです!

関監督 実は、僕はアートの勉強をしてこなかった人間なので、「人間がどういうときに興味を持つか」ということを考えてやっている程度でしかないです。色の組み合わせで言うと、画面がどうやったら映えるか、どうしたら素敵と思えるかなどは、理論的にではなく感覚的にやっています。

これまでの作品づくりを振り返って

なほ コロナ禍での映像作りで変わったことはありますか?

関監督 撮影の仕方に気を使うようになりましたね。人が集まったり密接に絡むことをする時には、立ち止まって考えるようになりました。テレビ会議も増えました。それに関して雑談が減って少し物足りないような気もしますね。変なアイデアが生まれにくくなってます笑。

なほ 今回コンペティションの応募作品の中にはリモート作品もありますが、リモートで映像をつくったりとかはあるのでしょうか?

関監督 あまりないですね。海外の場面を現地の人に撮ってもらったことはあったので、それはある意味リモートだったかもしれません。ただ、リモート作品自体は多くの人がやっていますし、たくさんの人がやっていることはあんまり興味がないんです笑。コロナ禍ではないですけど、「サーチ」っていうちょっと前の作品は興味深かったです。一度もヒロインと会わないんだけど、2人が親しくなっていくというのも面白かったです。

なほ 関さんにこれから審査していただく作品にもリモート作品があると思うので、是非楽しみにしていてください!

ごう ずっと気になっていたんですけど、関さんが影響を受けた作品はありますか?

関監督 山ほどありますね。ずっと言っているのは、『Taxi Driver』という映画です。中学生の時に父が録画していたVHSをこっそりみたんですよね。とても衝撃的でショックを受けましたね。おそらく僕は対象年齢ではなかったんですけど、この作品は今でもファッションとかデザインとしてもずっと残っていますし、非常に印象的な映画です。『Field of Dreams』という小学生の時に観た映画もかなり印象に残っています。初めて映画館で観た作品なんですけど、主人公と亡くなったお父さんがキャッチボールをするシーンで感動して大号泣したのを思い出しましたね。MVはたくさんありますけど、僕の20代はMVが世界的に華やかで、技術やアイデアが日々進化した時代だったんです。特に影響を受けたのはMichel Gondryさん、Spike Jonzeさんとか、当時の第一線で活躍していた方々から非常に影響を受けていたと思いますね。

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ごう 特に関監督が映像づくりにおいて大切にしていることはどんなことですか?

関監督 いちばんは見る人がどう思うか、どう感じるか、ということを意識しています。ただ単に自分がつくりたいものをつくるだけじゃないなと思ってます。全員じゃなくても誰かに面白いと思ってもらえるような作品をつくりたいですよね。30人は面白くないといってても10人は面白いといってくれるならそれでいいんだと思います。

ごう 見る人を意識するようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

関監督 実は最初から監督の仕事をしようと思っていたわけではなく、19歳くらいから制作現場の仕事をしつつ編集の勉強をしていたんですよね。当時は高かったパソコンを買って。でもやってもやっても上達しませんでした笑。その中で考えたのは、監督をやれば編集が上手い人にやってもらえるだろうということでした。でも24歳の時に初めてMVの監督をした時に、完成した映像が客観的に見ても全然面白くなかったんですよね笑。その時に、「自分がただやりたいことをやっていてはうまくいかない。最終的にどう見えるのかを考えて撮らないとダメだ。」と思うようになりました。この若い時に失敗した経験によって考え方が変わったような気がしますね。当時そういうチャンスを与えてもらったこともラッキーだったなと思います。

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最後に

なほ 映画祭に応募してくださった方や、若手のクリエイターに一言伝えるとしたらどんなことを伝えますか?

関監督 今の時代道具や機会に悩むことってあんまりないと思います。スマホやパソコンが普及しているし、YouTubeという発信の場もありますしね。そんな環境があるのでとにかくやってみて、いろんな人に見てもらうのがいいと思います。個人的に後悔しているのは、もっと若いうちに勉強したり、いろんな本を読んだり、映画を見ておけばよかったなということです。って言ってるとなんかお父さんみたいなこと言ってるみたいですね笑。

ごう ありがとうございます!最後に映画祭に期待することはありますか?

関監督 この映画祭のように、それぞれの監督たちの想いが詰まった短編をたくさん見れるというのも、なかなか贅沢な機会だと思っています。それを身近に楽しんでもらえるような映画祭になっていくといいなと思います!

ごう・なほ 今日は本当にありがとうございました!

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関監督、貴重なお話をありがとうございました!            これからもよろしくお願いします!!
宮本浩次 『P.S. I love you』
監督:関和亮
Perfume 『Challenger』 
監督:関和亮 
原案:Hiroto
関和亮監督 プロフィール
1976年生まれ、長野県小布施町出身。
音楽CDなどのアートディレクション、ミュージックビデオ、TVCM、TVドラマのディレクションを数多く手がける一方でフォトグラファーとしても活動。
サカナクション「アルクアラウンド」、OK Go「 IWon’t Let You Down」、星野源やPerfumeのミュージックビデオなどを手がける。第14回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞、2015 55th ACC CM FESTIVAL 総務大臣賞/ACCグランプリ、MTV VMAJやSPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDS等、多数受賞。

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