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ファミレスを享受せよのおススメ

こんな人におススメ!
*深夜のファミレスが好きな人
*SF要素が好きな人
*短編小説が好きな人


 こちらの作品タイトルが発表されたとき、私は運命を感じました。これは私がやらなきゃいけない作品だ、と。
急な自分語りになりますが、私は深夜のファミレスが大好きです。今から15年ほど前、当時大学生だった私は映画のレイトショーを一人で見に行き、帰りに一人でファミレスに寄るのが何よりも最高の楽しみでした。そんな昔の記憶をフラッシュバックさせた本タイトル。少しだけ内容に触れる部分もありますので一応ご注意ください。
 とりあえず、インディーノベルゲームが好きだったら買いましょう!

 本作の内容について触れる前に、まず深夜のファミレスって何?という方(居るかは分かりませんが)の為に、深夜のファミレスに心を奪われた人間がいかに魅力的な空間かを語らせていただきます。
 今では減りつつある深夜営業のファミレスですが、これはファミレスというにはあまりにも空気感が違います。ファミレスであってファミレスではない、それが深夜のファミレスです。
 客数は少なく5組もいれば多いくらい。当然店員も少なく、私が行っていた店舗は深夜帯は3人で回していたようでした。なので厨房スタッフがホールの手伝いしたり、接客もちょっと適当だったり。客も客で接客なんてものは求めておらず、座ってゆっくり出来る空間とドリンクバーがあればそれでいい、くらいの感じです。客層は残業で終電を逃したのか、生気のない顔でご飯を食べてるサラリーマンや、夜のお仕事の方々、勉強をする風でノートを広げてるけど全然やってる感じのない学生等。ランチやディナータイムでにぎわう店とは同じ店と思えないような裏の顔になるのが深夜のファミレスです。この謎の空間がなんかたまらなく好きで、一人で店舗に入り客の特徴や会話なんかをその日見た映画の感想と共にメモ取ったりしてました。今考えるとちょっと怖いですね。
 たしかコスト面で見合わないこと・家出のたまり場になったり店員の数の少なさから警備面の難しさなど、いろんな理由があったように思いますがその後深夜営業のファミレスはどんどん減っていき、人によっては幻のファミレスになってしまった人もいるのではないでしょうか。そんなことはないか。

ドリンクバーもあります

 前置きが異常に長くなってしまいましたが、「深夜のファミレス」というものを理解した上でプレイするとこのゲームの良さがさらに広がってきます。
 主人公は勉強をするために深夜のファミレスに行きますが気づいたら何かがおかしい、不思議なファミレス空間にいます。
 しかしさすが深夜のファミレス。謎のファミレスに閉じ込められててもあまり慌てたりパニックを起こす人はいません。ここで思い出してほしいのが深夜のファミレス論。深夜にファミレスに行く人々はどこか世間の日常とズレた人や日常から切り離された空間に行きたい人です。まぁこれは私の勝手な憶測と自分自身の話ですけど。なんかズレてきましたがとにかくこの謎のファミレスで途方にくれたり早く元の場所に戻らなければ!と躍起になる人はあまりいません。ドリンクバーを楽しみ、死ぬこともなくただただ時間だけ経過していく空間で過ごすことを受け入れてしまいます。これが昼のファミレスだったらこうはいかないでしょう。映画「ミスト」のごとく疑心暗鬼が渦巻きパニックスリラーのような展開になっていたと思います。

ドリンクバーの前は「王」

基本的にクリックで進むノベルゲーなので短編小説を読んでいる感覚ですがこれがまたすごくいい雰囲気に仕上がってます。
音楽はチップチューンでイラストも線と黄色と青と背景の黒で構成されたシンプルで味のあるテイスト。やっぱりちょっとノスタルジーな感じなんでしょうか。深夜のファミレスって。
 ドリンクバーが楽しめるのはもちろんですが間違い探しも出来ます。某チェーン店のオマージュですね。これもめちゃくちゃ良かったです。一部激ムズです。

こんな月夜はファミレスに行こう

ノベルゲーなのでストーリーについて触れてしまうとどうしてもネタバレになってしまうのであまり触れられないのですがどうしてもここで触れておきたい点が1つ。
冒頭でも出てくる「青い薬」。それこそ15年前私が深夜のファミレスに魅了されていた頃、青い薬というだけである作品を想起してしまうくらい超有名なネタがあるのですが、結論から言えば「まさにそれ」でしたね。時期がピッタリ+めちゃくちゃ好きなものが合わさってる、ということもあって本当に自分の為の作品かと思ってしまうくらい楽しめました!他にも小ネタはあったかもしれませんが私はめちゃくちゃわかりやすいこれしか思い出せず…
元ネタが分からなくても全然問題ないので若い方も是非プレイしてほしいですね。特に今大学のモラトリアム期に入ってる人とか!
 ゲームの体験的に言うと、セーブめちゃくちゃ大事!私はノベルゲーをあまりやってこなかったのでついついセーブを疎かにしてしまってある分岐の所でめちゃくちゃ後悔しました。めんどくささ的に。

キャラクター達も魅力的

 深夜のファミレスなので当然登場人物は少なめですがかなり深くまで掘り下げられてます。どこか浮世離れしてる人に見えても過去や心の中は一般的に共感できるものばかり。ただその過去との向き合い方がちょっと普通じゃなかったりするんですがこの辺りは「深夜のファミレス」の方々らしさが出てていいなーって感じました。
 話が進んでいくと「ファミレス」の必要性を感じなくなる人もいるかもしれませんが間違いなくこのキャラクター達が集まることができる場所は深夜のファミレスです。この雰囲気も深夜のファミレスだからこそのものだと思います。私から言えるのは

ファミレスを享受せよ

おせん

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