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めっけた

「ウチの暖房燃料は、薪なんですよ」
 という話になると、ほぼすべての人が、
「えっ、薪ですか?」
 と驚く。スイッチ1つで部屋が暖まるエアコンやファンヒーターが当たり前となっている時代だけに、薪を焚くというのは、よっぽどの酔狂に見えるらしい。…。

 …。あれっ!? どこかで書き覚えがある文章だなぁ。ま、いいか。続けよう。

 昨日は、サバゲ&飲み会&ツーリング仲間が家を新築したので、お祝いかたがた見物に行ってきた。
 早速話が脱線してしまうが、このサバゲ&飲み会&ツーリング集団のメンバーには、それぞれコードネームが付けられていて、今回家を新築したメンバーのコードネームは「背油」さん。笑っちゃうようなコードネームだが、命名者のセンスは抜群で、他にも思わず吹き出しそうなコードネームがいっぱいある。
 「背油」さんのことは、「背油さん」としか呼んだことがないので、本名は知らない。職業も知らない。他のメンバーも同様で、本名や職業を知らない人ばかり。それでもみんな仲が良いという不思議な集団で、妙に居心地が良かったりする。
 実は、当ウェブログでリンクを貼っている「パカ山」さんもメンバーの一人で、掲示板経由で話したことはあるものの、お目にかかったことは一度もない。
 新築された「背油邸」は、屋上で象が飼えると宣伝している鉄骨3階建て。1階部分は、玄関とトイレと納戸があるだけで、車が3台入れられそうな広いガレージとなっていた。いかにもバイクマニアらしい作りで、ここで思う存分バイクをいたぶるのだろう。確か、背油さんはバイクを10台くらい持ってたはずだ。
 工具もコンプレッサーも揃っていたし、分電盤は、いつでも200V動力が引き込めるようになっていた。さすがだ。羨ましい。
 これだけ広ければ、ジープが4台置けて、薪も10tくらい平気で積んでおけるだろう。やっぱり羨ましい。若くてきれいな奥さんもいるし…。関係ないか。

 で、なんでこの原稿のタイトルが「めっけた!」なのか。そう、めっけちゃったのだ。大事なものを。
 「背油邸」の南西側に隣接しているのは、お寺の敷地で、雑木林が広がっている。象どころかメフィラス星人でさえ飼えそうな屋上に上がり、ふと、その雑木林に目を向けた時に見つけてしまった。
 ツル草等の雑草に覆われているが、そこに横たわる黒々とした物体は、紛れもなく伐採されたクヌギだ。直径は25cm前後といったところか。ひぃ、ふぅ、みぃ…、折り重なっているが、ざっと数えて6本はある。
「おお~っ、宝物だ!」
 その状態は、どう見ても「放置」だ。ひょっとしたらタダでもらえるかも知れない。
「ねぇねぇ、背油さん、あの木、欲しいんだけど…」
「は? 木ですか? 木なんかどーすんですか?」
「薪だよ。薪っ! あれ、クヌギじゃん!」
「あ、そっか。ジイ(私のコードネーム。漢字表記だととっても恥ずかしい)さんちって薪使うんでしたね。イイっすよ」
 交渉は、あっさり成立した。
 聞けば、今年の5月に日照権の絡みで伐採したのだという。若葉が出て以降の樹は、水分をとても多く含んでいるので、これを薪として使うには、割ってから最低1年は乾燥させなければならない。でも、そんなことは、この際無視。
 現在、拙宅の薪棚と薪小屋には、約8tの薪が備蓄されている。さらに屋外の駐車スペースにも屋外乾燥(別名:放置もしくはキクラゲ栽培)の丸太が山ほどある。
 これ以上丸太を運び込む余地などないのだが、そんなことはどーでもいい。とにかくクヌギが欲しい。私にとってクヌギの薪は、「超」が付くほど貴重なのだ。
 クヌギの丸太は、斧を振り下ろすと気持ち良いほどパカッと割れる。直径50cm超のクヌギを一撃で割る快感は、他に例えようがないほどだ。それほど割りやすいのに、比重が大きいので火持ちが良い。
 市場で流通している薪は、ナラやコナラ、クヌギといった樹種が多く、クヌギは一般的でポピュラーな存在。薪ストーブ愛好家の間でもナラやクヌギが入手しやすく、ケヤキやカシといった堅くて割りにくいものは高級品扱いされることもある。しかし、我が家の薪事情は、入手経路の関係もあって、ケヤキが約50%、カシが約30%、ムクが約10%で、残りがナラ、コナラ、クヌギ、エゴ、キリ、シイ、イヌシデ、サクラ、モクレン、イチョウなどなど(いずれもタダで入手している)。私にとって、クヌギは稀少種なのだ。

 という訳で、思わぬ場所で、貴重なクヌギの薪材をみっけてしまった。雑草が枯れる頃になったら、チェーンソーと鉈を軽トラックに積んで、運び出しに行こう。気分はホクホクである。

 薪が暖めてくれるのは、家や体ばかりではない。薪は心も暖めてくれるものなのだ。

画像は、埼玉県某所で見つけたケヤキたち。エンジンチェーンソーや鉈といった伐採道具一式を積んだ軽トラックでドライブを楽しんでいると、時々こういう「宝物」を発見する。もちろんその場で交渉して手に入れる。時間と労力を要するが、買値は0円。


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