スノームーン
2週連続で月にまつわる話をするのは小っ恥ずかしい。
が、好きな人が好きなものは好きになる性分なので仕方なし。
今宵の月は、スノームーンというらしい。2023年で最も小さな満月。月が好きなあの人が教えてくれた。
寒くて空気が澄んでいて、綺麗に見えた。
少し太ったから歩こうと思ってるの、と細過ぎるくらい華奢な彼女が言うので一緒に歩いた。彼女が住む街へ。月がある方角へ。
月に向かって歩いているのに、いつまで経っても月に近づかない。不思議なものである。
でも、月が近づかない方が好都合だ。ゴールが来るのが惜しい、永遠に続いてほしい時間だったから。
1時間超歩いた。仙台の夜は寒い。耳が冷えるから、とモコモコのアウターのフードを被る彼女の姿が愛らしい。
道すがら、交わす会話は他愛もないものである。
スノームーンは何故スノームーンというのかという話、最近買ったスニーカーの話、道に残る雪を避ける方法、鼻をかむ方法、などなど。
特別ではない話が、特別ではない時間の流れの中で交わされることはとても尊い。
今年最も小さな満月に見守られながら、彼女の住む街へ着いた。心なしか、歩き始めた頃より月が離れて見えた。
恐らくあなたはすぐに忘れるであろうこのなんでもない1日を、きっと私はまた思い出す。それは来年のスノームーンの日かもしれないし、冬の夜風に当たって街を歩く時かもしれない。
そういえば、なんでスノームーンっていうんだろう。答えが出ないまま帰ってきちゃったな。