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高校生が遊戯王にハマった物語 〜第四章 遊戯王人生最大の敵〜

今回の話は前回の続きになります。まだ見ていない方は第一章から読むのをオススメします。


黄金期到来

 高校3年生、野球部として引退の年、学生としては受験の年、涙も汗も明るく色付く青春最後のこの年に、私たちは遊戯王の黄金期を迎えていました。
 学業よりも、恋愛よりも、野球と遊戯王に青春を注いだと断言します。事実、卒業アルバムのクラスのページには、遊戯王カードを持った私がいます。流石に何人かに引かれました。
 テスト前週間になると部活休みを利用し、学年中のデュエリストを集めてトーナメント大会をするのが恒例でした。丸一日使った健康診断の日は、私のいた3年7組の教室の後ろ半分が決闘場になっていました。気づけば野球部の枠を超え、学校全体に大決闘時代が到来していたのです。

テスト期間にも関わらず16人が集まりました


 学校全体とは言いましたが、私たち野球部七武海を他の一般市民と比べてほしくはありません。デッキの質・プレイングの質・決闘マナーどれをとっても1枚も2枚も私たちが上手です。私たちは大決闘時代を創り黄金期をもたらせた英傑集団なのですから。

さぁ、行こうか

 そして、遂にショップ大会へ赴くようになりました。地元の駅前にある行きつけのカードショップでトーナメント形式の大会に参加しました。
 初めてショップ大会に参加した2年前、、、あの頃は右も左もわからない赤ちゃん決闘者でしたね。月日は経ちました。色んなデッキを作りました。色んなカードを買いました。色んな動画を観て研究しました。サイドデッキも作りました。世のデュエリスト達に見せる時です。結果は、、、

 手応えしかありませんでした。
 
相手が繰り出すカード、相手の発言、全てに対して「うんうん知ってる知ってる」状態。「大会っておもしれえ」状態。「進研ゼミより進研ゼミ」状態。知らない人と戦う=自分の強さが試されている気がして、高揚しました。もちろん相手もいくつもの修羅場を潜り抜けてきた決闘者達です。強敵はたくさんいましたが、私も七武海のみんなも勝ち星をあげていました。残念ながら優勝は叶いませんでしたが、優勝できる実力はあると実感しました。

最恐の男、現る

 

 そして、何度目かのショップ大会で、七武海【クリフォート】使いのS君が遂に決勝へ進出します。あと1勝すれば優勝、固唾を飲んで見守りましたが、結果は負けでした。悔しい。
 次の大会でも、今度はY君が決勝に進出します。七武海初の優勝を目指しましたが、これまた敗北。あと1勝ができない、、、。ここで、衝撃の事実に気づきます。

 前回負けたS君、今回負けたY君、どちらも決勝の相手は同一人物だったのです。そして、私たち七武海は数回ショップ大会に参戦しましたが、私たちは誰一人としてその人物に勝ったことがなかったのです。
 
黄金期を創り上げた私たちでさえも超えられない男、優勝の夢を何度も打ち砕く男。その男の名は、“ダークフレイムマスター”さん。通称“ダフレ”。

 ガチです。ガチでこの名前だったのです。ショップ大会では勝った人の名前が呼ばれます。
 店員「優勝はダークフレイムマスターさん〜」
 私たちは笑いを堪えるのに必死でした。名前がズルすぎる。しかし、その強さは本物でした。そういえば毎回優勝していました。
 S君の中学の同級生“ホーリィ”や、「ハーピィはあるから。」「待って。このデッキすごい。」等の名言を残した“キューピー”さん、デカイのに声が小さすぎて聞き取れない“カゲロウ”さん、いつも取り巻きの小学生がいる“小山”さん、これらの常連デュエリストを撃破しても、決勝では“ダフレ”が仁王立ちで待ち構えている。序盤に出てくるフリーザくらいズルい。カードゲームというある程度運が絡むゲームにおいて、全盛期のマー君のような凄まじい勝率を叩き出すということは、「実力がレベチ」と考えざるを得ません。
 その衝撃に気づいてからというもの『打倒ダフレ』『ダフレを撃破するには』『ダフレはなぜあんなにも強いのか』『そもそもあいつは何の仕事をしているのか』『ダフレになりたい』などの考えが頭から離れませんでした。

悲願 ダフレ撃破

 ある日のショップ大会。なんともあっけない幕切れでした。私は決勝にコマを進め、当然のように決勝に勝ち進んでいたダフレと相対します。1勝1敗でお互い譲らずに迎えた最後の3戦目。

先攻ダフレがまずまずの展開をしてターンエンド。
後攻の私が展開をしようとカードを2枚ほど発動したその時、ダフレは言いました。
「負けで。ヒヒヒヒ。」

(え?)と思いました。(まだ始まったばっかりやぞ?決勝やぞ?まだ2枚しか出してないぞ?なんで諦めんねん?)

 遊戯王というのはどこか将棋に似ている部分があります。相手の手札が見えないという点のみ大きく違いますが、攻めと守りを繰り返す点、それにより自分と相手の盤面に優劣が出てくる点、ジワジワと攻める点、などは非常に似ています。ダフレは、私の最初の2手で自分の負けを確信したのです。それも僅か1秒で。
 確かに私は自分の手札を見て「勝てるかもな」と思いました。そしておそらく続けていたら磐石に勝っていたと思います。しかし、いざそんなに簡単に降参されると複雑な気持ちになります。今まであなたは俺たちの最終目標であり、超えられない高い壁だったんだ。間違いなく俺たちの今年の流行語大賞は「ダフレ」なんだ。ダフレに勝つっていうのはそんなに呆気ないもんなのか。そんなに楽にできるもんだったのか。もっとバチバチの死闘の後にあるもんじゃないのかよ。初めて決勝に行ってお前に敗れたS君やY君の気持ちは!序盤でお前と当たってしまったことで一戦しかできずに沈んでいった七武海の仲間達の気持ちは!そして何よりダフレに勝つためにデッキを考えサイドデッキすらもダフレに合わせて作っていた俺の気持ちは!

、、、私は勝ちました。









第五章に続く↓


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