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札幌の福祉の後ずさり


夜にヘルパーが待機する時間を削る?

頭に来た。
さきほどいちご会の事務所に、あるヘルパー事業所から電話が来た。
重度訪問介護を受けている障がい者に対し「夜中にはケアが要らないから、夜のヘルパー派遣の時間を削る」と言ってきたそうだ。
これは大変な事件だ。黙ってはいられない。

読者の方でなじみのない方のために…ヘルパーが夜にする仕事とは排せつ、寝返り(体位交換と言って一人で寝返りが打てない場合に、人が手伝う)、人工呼吸器を使用している人にはケアの頻度も内容も増える。映画「こんな夜更けにバナナかよ」にも、主人公が寝返りをしてもらうシーンがあります。

おとなしく待っていて与えられた時間ではない。
介助がなかったら、私たちは死んでしまう。

一人一人の障がい者は、いろいろなプロセスを経て、介護を受けられる時間が月毎に決まるのだが、これはどんなに障がいが重くても、24時間必要な時に受けられるというものではないので、あらかじめ決められた時間数に沿って私たちは窮屈に生活を組み立てざるを得ないし、望むより少ない時間数しかもらえない場合は、あらゆる手を使って訴えてきた。

必死で戦って勝ち取ってきた時間数を削るなど、全く間違いだ。
私自身は来月から介護を受けられる時間数が増えたというのに、なぜか私と同じような重度の障がい者の時間数が減るなんて、あってはならないことだ。

最近の札幌市の障がい福祉課とは話が全くできなくなってしまった。
札幌市で制定しているまちづくりサポーター制度(障がい者10人が、他の障がい者の声を拾い上げて、街づくりに活かしていくための会議で任期は2年間)に参加しないかと呼びかけがあったので、応募したが私は落選した。落選理由は「若い世代にまかせたいから」とのことだ。

若い世代に舵をとってもらうのは大いに賛成だが、街づくりを本気でしていくためには、いままでのことも伝えていかないといけない。私は今まで44年間、札幌市内の公共空間にエレベーターを付けたり、ケア付き住宅(映画「こんな夜更けにバナナかよ」で主人公の鹿野さんが住んでいる団地は私たち当事者が考えて訴えて作ったのです)など具体的に色々なことをしてきました。これは行政や企業や社会との交渉の上で勝ち取ってきたものです。そのノウハウと切り離して街づくりは不可能だと思います。

従来、このまちづくりサポーター制度のような当事者を含めた委員会を行う時は、私たちが要求して、傍聴権、議事録の公開、質問や提言の窓口を設けることが可能だったので、「議事録はサポーター任期終了後の2年後に公開する」と聞き、ほんとうに開いた口がふさがらなかった。

障がいのある方が普段思っていることや考えていることを、同じ目線で理解や応援することができる障がいのある方に、聞き取り役や取りまとめ役となる「サポーター」になっていただき、障がいのある方の意見を市政に反映させていこうとするものです。

とホームページには記載されているが、その趣旨とは全くかけ離れている。またこの議論を2年後まで公開しない理由は、「各サポーターの障がいの状態等を踏まえた意見交換がなされる」ためだという。障がい者の障がいを理由に秘密会議をしてはいけない。

近所の真新しい公園も…障がい者の声を聞かないと失敗する

そんなことをつらつらと考えているある日、日光浴をしに、いちご会の事務所の裏にできたばかりの中の川公園に向かった。しかし石畳があり、電動車いすで歩くのが怖かった。さらに土地をすり鉢状にし階段をたくさんつけていて、川を愛でる造りではあるが、ここを車いすで歩くことは、とても危険で事故も起きやすいだろう。こういう造りを見るだけで、行こうという気は起きなくなる。こんな造りのところばかりだと、私たちはわかっているから、余計外に出なくなるし、街のことも知らなくなる。障がい者の声(も)聞かなければ、すべての人に優しい街ではない。

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障がい者差別解消法改定の今、札幌の福祉は後退している

奇しくも、障がい者差別解消法制定の2016年にこの公園は出来た。このたび障がい者差別解消法は改正され、合理配慮も含めて障がい者のための法や環境が変わってきているのに、札幌市では、公園から夜寝る時間に至るまで全く逆のことが起きている。大変なことが起きる。公園は象徴的だ。このような階段を見ると、札幌の障がい者の声は甘く見られていると感じる。

札幌市の福祉課とは長い時間をかけ、何度も話し合い、信頼関係を持って議論できるようにしてきた。それなのに、人事異動で人が変わると、議論はいつも白紙になり、できなくなってしまう。今年はそれがなおさら激しい。


もっとこれから、時間数を減らされた人の話を聞き、みんなが手をつなぎ、冷静に運動をやっていかなければならない。

黙っていては、私たちは生きてはいけない。


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