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暗いところで静かに産みたいと思っていたけれど、動物の本能みたいで嬉しかった

2020年6月28日、助産師の田中敬子さんのもと、三女を自宅出産しました。3度目の出産にして初めての自宅出産。入院中の上の子たちのお世話を思うと、どうも病院で産むという選択がしっくりこなくて、夫も賛成してくれたので、家で産むことにしました。本当に良い選択だったなと今でも思っています。今までの出産の時に感じたことなどを振り返ってみました。

(広島県 野崎 綾子)

3人目で思い出す長女の出産体験

3人目は妊婦健診が毎回楽しみでした。

「今、お腹の赤ちゃんこんなんよ」とイラストを見ながら話し、夫のこと、上の子たちのこと。敬子さんが目を閉じてお腹を触り、赤ちゃんの大きさや位置を探る様子から、とても大事なものがお腹に宿っているんだなぁとあらためて思う時間にもなりました。

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長女を出産した時、陣痛中につけているモニターから聞こえる赤ちゃんの心音をうるさく感じて、お腹に巻き付けていたケーブルを引きちぎりたいと思ったこと。

産まれてすぐ、長女は過性多呼吸と診断され、救急車でNICUのある病院に運ばれることになり、おっぱいを吸わせることもないまま、エレベーター越しに呆然と、保育器に入った娘を見送ったこと。

その後のおっぱい育児が軌道に乗るまで助産師さんの元へ何度も通ったこと。

話しているうちに、どんどん想いが溢れて、涙することも。

自分で感じ取った陣痛に安堵

「いきむタイミングは産む本人しかわからない」って本当だったんだ。

敬子さんに唯一出したバースプランは「いきむタイミングがわからないので教えてほしい」と伝えたところ、敬子さんに「産む本人しかわからないよ。絶対わかるはず!」と言われ、びっくりしました。

今まで2度の出産で2度ともわからなかったからです。

長女の時は全く初めての体験で、とにかくずっと棒か何かで膣を広げられているような感覚がありそれが痛すぎて、いついきんでいいのか、全くわからなかった。

次女の時は破水から24時間たっても陣痛すら起きず促進剤を使っての出産でした。この時もやっぱりわからなくて助産師さんのリードに合わせて産んだ記憶があります。

そして、今回のお産。
出産当日、夜中に少し痛いような気がする・・・と思い間隔を計ったら5分間隔ぐらいで敬子さんに電話。予定日を過ぎていたので「あー。陣痛来た?よかったねぇ」と言われすごくほっとしたのを覚えています。

予定日を8日過ぎた土曜日の朝、平日ならいないお姉ちゃんたち、パパもいるこの日を待って選んで産まれてきてくれたんだなぁ。可愛いなぁ。

揺れる、でも自分を信じて

朝5時くらいに敬子さんが到着され、「うんうん。間違いなく陣痛ね。今日産まれるからね」

「7時ぐらいには産まれると思うよ」と夫に話しているのを聞き、(7時ね、それまで頑張ろう)と思える。陣痛中はいつもの朝の光景。夫が食事の準備をして、子どもたちと食べて、洗濯物を干したり屋上で遊んだり。

時計を見ると約束の7時。でも、でも、やっぱり産まれない。あぁ、私はやっぱり下手なんだ。赤ちゃん苦しくないかな。

頭の中をどこかの誰かが書いた出産レポートの一文「2人目は3回いきんだら産まれました」が頭を回る。私は今何回いきんだんだろう。これで合ってるのかな。このまま病院に運ばれたりしないかな。本当に家で産めるのかな? と思い、悲しくなる。

「これで合ってますか?」と、敬子さんに確認。
「大丈夫。上手よ。いきみたかったらいきむ、で大丈夫。もう頭見えとるけんね。」

再び自信を取り戻す。そう、私が今産むしかない。私しか産めない。と痛みに集中。いきみたい時にいきむ。

思い切り。

そしたら敬子さんの「赤ちゃんでてくるから少し暗くしましょうか。明るいとびっくりするけぇね。」との声が聞こえてくる。

「ああ、産まれる!」自分でいきんで産めた。

赤ちゃんはぶりんぶりんしていてとっても可愛かった。ただひたすら可愛かった。すぐにおっぱいを吸わせる。間髪いれず。長いことそうしていたと思う。

そこで気づきました。私、今、ダイニングテーブルの下で汗だく。ここで産んだの? テーブルの下で? そういえばいきむ時、夫にしがみついてたけどテーブルの足も必死でつかんでたなぁって。暗いところで静かに産みたいと思っていたけれど、動物の本能みたいで嬉しかった。

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自分も家族も安心して過ごせるお産の幸せ

産んだ後も静かに時間は流れます。産む瞬間を敬子さんの横で見ていて「ママのおちんちんから赤ちゃんが産まれてきたねぇ」と今日、お姉ちゃんになった次女。聴診器を貸してもらい赤ちゃんの心音を聞く長女。

敬子さんがお産に間に合わなかったら、自分がが取り上げることになる、と予定日を過ぎてから毎日ソワソワ・ドキドキが続いていて、無事産まれたことに安心している夫。

産まれたその日からみんなで一緒に寝れる。幸せ。

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産後も赤ちゃんとの生活は「病院に行くほどでもないけどこれってどうなんだろう」という出来事にあふれています。そんなとき、お腹にいる時から見守ってくれている助産師さんに相談できるという幸運。

この出産体験を通して、育児はずっと続くから、お産をゴールにして産む所を選ぶのではなくて、自分が主導権を握って、しっかり痛みを感じて産んで、愛情いっぱいな子育てをする人が増えてほしい、そのために産む前に助産院を知る機会がどの人にもあるといいなと思っています。

最後に、私の自分を信じる力を強力にサポートしてくださった助産師の田中敬子さん、本当にありがとうございました。

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