見出し画像

三題噺小説版『手紙』『紙飛行機』『子供』

落語の三題噺の小説版を友人と遊びました。
【ルール】
☆三つ単語のお題を出して小説を書く
☆私から一題、友人から一題、適当な本を目隠しパラパラ指差しで一題
☆三題はちょい出しでもガッツリ主軸でも可
☆ジャンルはフィクションのみ、ノンフィクションは不可。フィクションであるならミステリーでも純文学でも可。
☆制限時間6時間



 前島が郵便祭について覚えている一番古い記憶は、小学校にも上がる前の幼い時分に祖父と手を繋いで書簡供養に初めて参加した時のものである。
 前島が住む街は郵便事業発祥の地と言われており、毎年盆の時期に郵便祭と呼ばれる祭りが行われる。一般的な神社などの祭りのように出店や有志による出し物なども行われるが、郵便祭という郵政が関わる祭りらしい演目もいくつか行われる。記念切手や記念葉書の販売、飛脚やタイプライターの展示や体験、書いて申し込むと十年後に届くタイムカプセルのような手紙、そして祭りの最後に行われる書簡供養。
 祖父も郵便職員だった。前島と祭りに来るような頃にはもう退職していたが、戦後の郵政立て直しの頃も駆け回っていた昔からの郵便局員は郵便に関わるあらゆることを知っていた。
「郵便局にはな、届かなくなっちまった手紙をしまっておく部屋があるんだ。夜になるとな、その部屋から聞こえるんだよ。だあれもいないのにこそこそ話すような声だったり、シクシク泣く声だったり。手紙が置いた場所と違うところに動いてたってのもあったな」
「お、おばけ?」
 怯えた顔をしてべそをかきかけている孫に、祖父はしゃがんで目を合わせて笑った。
「そんな怖いもんじゃねえよ。悪さなんかしないしな。手紙っていうのは込められた思いが特別濃いんだ。……心がいっぱい込められてるってこと。それが住所とか名前が間違えられたりわからなくなったりして届けられなくなると、手紙の中の心がどこにもいけなくて不安になっちまうんだろうな。……ライ坊も迷子になったら怖くて悲しくて泣いちまうだろ」
 ライスケという名前からライちゃん、ライ坊と子供時代からの顔馴染みには呼ばれていた。子供の前島は前の月にデパートで迷子になったことを思い出す。不安すぎて大声で泣くこともできなくてウロウロ彷徨いながら絶望した。手紙も迷子になるのか。前島は親と再会できたが、誰も迎えに来ずどこにも行けない迷子の手紙はかわいそうなのかもしれない、と思った。
 「そういう迷子の手紙を集めてな、みんなで慰めるんだ。届いて欲しい人に届かなくても、込められた心を誰かに受け取ってもらえたら、迷子たちもちったあ安心するんじゃねえかってな」
 それが書簡供養だ。
 そう締め括った祖父は幼い前島を肩車して広く開けられた本舎の庭に向かって歩き出す。普段は駐車場となっていて車がたくさん止められているその場所は、祭りの日は駐車スペースを近隣の中学校の校庭に移すため広々としている。中心付近にあった出店やステージは端に寄せられて、夕暮れも近づき薄く琥珀の光が混じり出した空気の中、小さな気球が一つ留められていた。その前に立っている昔の郵便配達員の格好をした職員の前に、本舎の郵便局長が大きな袋を手渡す。恭しく受け取った職員が気球に乗り込む。やがて火が灯された気球が空へと浮かんでいく。
「そうら、飛んでくるぞ。捕まえろよ、ライ坊」
 地面と気球とを繋いでいた綱の長さいっぱいまで登った気球の上から、パッと小さな白が散った。
 手紙だ!
 数十もの便箋や葉書がそれぞれすうっと滑るように飛んでくる。わあっと歓声が上がって周囲の人が腕を上げる。祖父は声をあげて笑いながら軽く体を揺すって捕まえろ捕まえろと煽る。くるりと回った祖父の肩の上で、視界が切り替わった瞬間、胸の中に白が一つ飛び込んできた。慌てて抱きしめたから少しひしゃげてしまったそれは、古い絵葉書だった。
「じいちゃん!つかまえた!」
「やったな、ライ坊!良いことあるかもな」
「いいこと?」
「書簡供養で飛んでくる手紙を捕まえられたらいい便りが訪れるってな、いつからかはわからんが言われてるんだ」
 周りにいた人々も捕まえたり落ちたものを拾ったりしている。手紙を手にした者はみんな嬉しそうである。親が捕まえたのだろうものを譲られて大喜びしている子供もいた。祖父は前島を地面に下ろすと「それ、落とすんじゃねえぞ」と言って手を繋いで歩き出した。祖父の手と葉書をぎゅっと握りしめる。本舎の建物近くには長机がいくつも並べられているテントが建っていた。案内役だろう職員が祖父に気がついて近づいてくる。
「前島さん、来てらっしゃたんですね」
「おう、ご苦労さん。いや、孫が手紙捕まえてな。机貸してくれな」
「ああ、ライスケ坊ちゃん。大きくなりましたね。前会った時はまだ歩けなかったのに。……よかったな、いいことあるといいな」
 郵便職員時代の祖父の顔馴染みらしい男を前島は知らなかったが、祖父にくっついて歩くと自分に覚えのない祖父の知り合いに構われることはしょっちゅうであったから、人見知りもせずにっと笑って自慢げに絵葉書を見せびらかした。男は微笑ましげに笑って、二人を机に案内した。机にはペンなどの文房具と手のひら大の白い紙が置かれている。祖父は前島を膝に乗せて机に向かって座ると葉書を見せろと言った。
「いいか、読むぞ。ライ坊は返事考えろよ」
 祖父が読み上げてくれた葉書の文は言葉も難しく内容も子供の前島にはわからないものだった。大人が大人に宛てた手紙らしい。よくわからない、と眉間に皺を寄せると祖父は笑った。
「お手紙ありがとうで大丈夫だ。ちゃんと受け取りましたって通じればいい」
 字はじいちゃんが書いてやるからなと祖父はペンと紙を手に取った。前島が拙くも紡いだ言葉を祖父の字が記していく。返事を書いた紙を糊で葉書に貼り付ける。
 おてがみありがとう、ハガキの絵のうみをぼくもみてみたい。
 夕闇が迫ってくると気球が飛んだ場所に太い薪のやぐらが組まれた。薪には何本も紙のテープが巻かれており、その隙間に葉書を挟むように祖父は言った。風で飛ばないようにするためのものらしい。祖父は斜めがけにしていたカバンから手紙を取り出した。不思議そうにそれを見つめる前島に「ばあちゃんにだ」と伝える。祖母は前島が生まれる前に亡くなっている。
「迷子の手紙と一緒にな、死んだ人への手紙も一緒に焼くんだ。どっちも受け取ってくれる人がいない手紙だからな。焼いて、想いだけでも届くようにって」
 周囲にも持ち寄った手紙をやぐらに付けにくる人がいる。薪の木の色がだんだん覆われていき、櫓は手紙や葉書で紙だらけになって遠目には白く毛羽立ったように見えた。そして火がつけられ、あっという間に白は赤の中に消えていった。
 祖父は目を細めてそれを眺めていた。

 祖父が亡くなったのは前島が十歳の夏だった。
 その年の年始に新型の感染症が発見され、世界は混乱の中にあった。春頃から国内でも爆発的に感染者は増え始め、医療は逼迫し、突貫工事の医療施設がいくつも造られるがそれでも足りない。人が集まるようなイベントは軒並み中止され、移動も控えるようにと通達される。未知の病への恐怖と制限される生活への不満に世の中が満ちていった。
 ただの検査入院だった。春の健康診断で異常値が見つかったからその検査のために入院した祖父は一週間の予定で入院となった。たった一週間でも祖父がいない家は落ち着かなかった。病院は感染症流行のため面会を全面禁止されている。荷物の受け渡しも直接はできず、病院の玄関で病院スタッフに渡すだけだった。母親が荷物を持っていく時に前島はついて行きたいと駄々をこねた。行ってもじいちゃんには会えないと言われても、家でじっとしている方が嫌だった。行ったら、たとえば偶然窓からじいちゃんが見えるかもしれない。
 病院の玄関先にも子供は入れないことになっているらしく、車の中で待っているか、中庭で待っているかと母に問われて、前島は中庭を散策することにした。車の中よりは病院の窓がよく見えるかもしれないと思ったからである。窓を上から順番に一つ一つ目を皿のようにして眺めてみるが、祖父らしき人影は見当たらない。がっかりしてベンチに腰掛けて項垂れた。初夏の空は快晴で、日陰にいなくては暑くて汗をかきそうだった。今年は毎年楽しみにしている郵便祭も中止だと聞く。祖父もいない、郵便祭もない。今年の夏は最悪だ。全部カンセンショウが悪いんだ。不幸の只中にいる気分で唇を尖らせて臍を曲げる。お母さん、遅いな、と思って顔を上げる。
 すうっと白が滑り降りてくる。
 咄嗟に手を出して捕まえる。……紙飛行機!
 どこから、と思って見上げる。
 三階の窓からにいっと笑うじいちゃんの顔。
 祖父は前島に手を振って、大袈裟にキョロキョロ周りを見渡してからしぃーっと人差し指を顔の前に立てた。どうやら細くしか開かない窓の隙間から飛ばした内緒の行為らしい。くっくっと前島は笑って紙飛行機を抱きしめる。郵便祭の書簡供養みたいだな、と楽しかった思い出も思い出す。機嫌は急激に回復した。祖父はニヤニヤ笑いながら紙飛行機を開くように手で合図している。手元の紙飛行機をみる。それは入院の注意事項が書かれた紙を使って折られていた。
 ライボウ、ゲンキカ。ジイチャンハタイクツ。
 郵便祭でみた電報の展示みたいなカタカナの手紙。秘密の通信みたいで面白い。前島は手紙を抱きしめて満面の笑みで大きく手を振った。元気だよ、が伝わるように。母が呼びに来るまでずっと、手が疲れても振り続けた。それが祖父を見た最後だった。
 祖父はその入院中に例の新型感染症を発症した。みるみる容体が悪化していき、盛夏の頃、看護師に看取られて亡くなった。死に際にも面会はできなかった。遺体からも感染の可能性があると、姿を見ることもできず病院から直接火葬場へと運ばれて、やっと会えた時には祖父はもう骨になっていた。

 祭りの朝は気持ちよく晴れていて、青い空に白い小さな雲がぽつりぽつりと散るように浮かんでるのが見える。それはこれから祭りの中で行われる演目を想起させるようなもので、似合いの空だな、と前島は思った。今日はいつもの郵便配達業務ではない。いつもより少しだけ早起きをして、常の職場である小さな郵便局の前を通り過ぎて大通りへと出る。この地域の郵便の本拠地となっている本舎と呼ばれる場所が今日の勤務地である。祭りの運営は郵便職員と、地域の祭りも兼ねている都合上町内会のボランティアやアルバイトで行われる。出店や有志出し物は町内会が、郵便に関わるものは郵便職員が担当することとなっている。
 「あら!前島さんのとこの!ライちゃん!今年から職員さんだものね。制服、よく似合ってるわ。頑張って、今日はどこの担当なの」
  準備中の出店のテント下で昔から知る婦人に捕まった。前島はこの街の出身であり、子供の頃からこの祭りに参加している。幼少期は祖父に連れられて何度も親しんできた。制帽を軽く上げて挨拶をする。
「おはよう、おばさん。それ、焼きとうもろこし?俺は今日、書簡供養だよ」
「まあ、大役じゃないの。しっかりね、新人さん!」
 前島は今年度郵便職員として就職した。子供の頃些細なお手伝い役として町内会側で運営に携わったこともあったが、今年からは郵便側として参加することになる。会話が聞こえたのか他の町内会の顔見知りたちまで寄ってきては口々に挨拶や激励を交わしてくる。新人が遅刻するわけにはいかない。まだ構いたそうにしている昔馴染みたちをやんわり振り切って本舎の建物の中に逃げ込んだ。
 時間になると朝礼と今日の分担の確認が始まった。新人の前島は教育係の先輩と二人で動くことになっている。担当の書簡供養自体は午後最後であるが、午前中は午前中で準備作業を行う必要がある。供養される書簡は保管期間を過ぎたものである。その期限が本当に切れているかの最終確認を行った後、封筒に入っているものは開封していく。一般人の参加がある以上、触れられる個人情報は少ない方がいいため、封筒は気球から撒かずに封筒だけで集めて宛名や住所が見えないようにいくつかに分けて紙で包んでいく。便箋に住所などが書かれているものや葉書は宛名隠しの特殊な印鑑を上から押して隠す。社会の情報化が進み、通信は手紙からメールや電子メッセージへと移り変わっている。書簡供養で撒く手紙は年々少なくなっていると先輩職員たちは話す。電子通信で届かないメッセージはぐっと少なくなっている。それは届かない想いを抱えた迷子の手紙が少なくなるということ。それは喜ばしいことなのだろう。そうではあるが、幼少期に祖父の肩の上で手紙を捕まえた時のあの気持ちは、いつまでも前島の心に煌めくように残っている。いつの日かなくなってしまうのは惜しいと心から思う。
 準備作業は正午過ぎには終了し、担当していた職員は暫し自由時間となる。前島も鋏や印鑑を片付けながら昼食をどうするか考え始める。朝のおばさんのところの焼きとうもろこしも食べたい。
「前島、ちょっと来てくれ」
 席を外していた教育係の先輩に呼ばれる。部屋の外から手招きしており、前島は怪訝に思いながらついていく。二階に上がり、郵便祭本部と書かれた紙が貼られた部屋に通される。そこには郵便局長や部長といった組織の中枢職員、所謂“偉い人”が揃っていた。普段は関わることのない面々に緊張しながら立っている前島を、嫌に穏やかな笑顔が向けられる。
「提案なんだがね、君が良ければ今日の気球係をやってくれないか」
 前島は面食らう。あれはくじ引きで決まっており、今年は勤続二十年の大ベテランが引き当てた。そう、この部屋で局長の横で混乱する前島を微笑ましげに見ている職員である。いや、でも、と考えがまとまらないままの前島の前にその職員が進み出る。
「いやね、君のためというより、僕ら年寄りの我儘なんだよ。あの感染症の流行で例年中止していた郵便祭がやっと開催された今年、君が入職してくれて一緒に働ける仲間になったなんて、前島さんに世話になった僕らには嬉しくて仕方ないんだ。……大きくなったな、ライスケ坊ちゃん」
 あの日、捕まえた手紙へ返事を書いたテントにいた職員であった。彼は制服のポケットから手紙を取り出すと前島に見せた。宛名は祖父の名前だった。
「書簡供養はまあみんなでやるんだけどね、やっぱり要となる役割ってあってね。気球から手紙を撒くこととやぐらに火を入れること。くじ引きで決めてるんだから本当は平等であるべきなんだけど、やっと再開できる今年っていうのは心待ちにしていた分特別に思えてね。ぜひ、君にやってもらいたいんだよ。そうすればこの手紙もしっかり前島さんに届くような気がしてね」
「……孫だからですか」
「まあそれも無いとは言わないけど。前島さんに連れられて毎年祭りに来る君は、子供の頃から一等手紙に向き合っていたから。真剣な顔をして落ちてくる手紙を追いかけて、眉間に皺を寄せて返事を考えて、炎を見つめて祈ってた。僕ら古い職員はみんなそれを見て、いつか供養の一番目立つところでその祈りの姿をみんなに見てもらいたいって思ってたんだ」

 なんだかまだ夢心地のような気分だった。ふわふわとした思考のまま歩いていると、グスグスと泣く子供の泣く声が聞こえた。テントの影に女の子。黄色いワンピースを着て、蹲って泣いている。聞くと迷子だという。あやしてやると少し落ち着いて話ができるようになった。本部テントで迷子放送をしてもらおうと手を繋いで歩き出す。
「きょうはね、おばあちゃんときたの。えっとね、しょ、しょか……」
「書簡供養かな」
「そう!しょかんくよー!おてがみがね、ひらひら〜っておちてくるのをひろうんだって」
 前島に慣れてきた女の子は存外おしゃべりで、おませに話している。テントについても少女は前島から離れようとはしなかった。懐かれたらしい。迷子の放送はすでにお願いしてあり、迎えが来るまでおしゃべりに付き合ってやろうと隣に座った。
「書簡供養をどうしてやるのか知ってる?」
 同じ歳の頃に自分も祖父に話してもらったことを思い出して話の種に聞いてみる。
「しらない!おにいちゃんしってるの?」
「俺は郵便屋さんだからね」
 祖父の話をなぞるように届かない想いの手紙の話をしてやる。テント内にいるスタッフは微笑ましげにその光景を見ている。
 終わると少女は俯いて少し考えてから口を開いた。
「あのね、かみひこうきもやいてもらえる?」
「紙飛行機?」
 去年、飼っていた犬が死んで、その犬に手紙を送りたくなったらしい。
「ミツってなまえなんだけどね。ミツはワンちゃんで字はよめないから」
 どうして紙飛行機なのか聞くと、お気に入りのフリスビーが壊れてしまった時に紙飛行機で代用して遊んだ思い出があり、それが楽しかったことを今でも大切な思い出にしているそうである。
「だからね、たのしかったのわすれないよってミツにつたえたいの」
 スタッフに紙を分けてもらって紙飛行機を折る。前島はあの日病院の中庭で捕まえた紙飛行機を思い出す。会いたいと願っていたら飛んできた紙飛行機。紙飛行機なら彼女の愛犬の元まで風を切って飛んで届くだろうと根拠もないのにそんな気がして面白かった。祖父に教えてもらった速く飛ぶ折り方を教えてやるとそれがいい!と折りなおしている。途中で少女の祖母が慌てた様子で駆け込んできた。泣き顔どころか真剣な顔をして飛行機制作に勤しむ孫娘に面食らった顔をしている。前島は事情を話して書簡供養の時に紙飛行機も供えてもらうように伝える。
「ありがとう!ゆうびんやさんのおにいちゃん!」
 伝えたいって気持ちはいつの時代でも、子供も大人も関係なく持っていて、それはたとえ伝える人がいなくなってしまったとしても生まれ続けるものなのだろうな、と少女を見送りながら前島は思う。そうであるのだとしたら、迷子の手紙が減っていっても、書簡供養は無くならないかもしれないなと。

 手紙が入った袋を受け取る。目を閉じて祈る。目を開けると袋を手渡した局長が薄く微かに微笑んでいた。
 気球が上がる。無線から合図があり、手紙を散らせる。上から見ると思ったより多くの人がいるように見える。今年が久しぶりの開催だからかもしれない。ふと、視界の端にニヤニヤと笑う祖父がうつった気がした。慌ててそちらを向くが遙か下に蠢く人の顔なんて判別がつかない。しかし、盆の夕暮れである。気のせいだと否定しなくてもいいかもなと思いふっと笑う。受け取りに来たのかもしれない。誰かの伝えたい思いを。
 白がひらひらと舞っている。いずれ火が灯される。


2023.8.15

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?