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B2|2021-22シーズン展望#8|西宮ストークス

2021-22シーズンを勝手に展望するシリーズも第8回。後半戦へ突入です。今回は西宮ストークスを取り上げます。ちなみに取り上げる順番はまったくの思いつきです。

■2020-2021シーズン

今野翔太、渡邊翔太、福田真生とB1経験者を獲得。外国籍選手もこれまでとは異なるユーロラインで揃えるなど、「らしくない」補強で意気揚々とシーズンインした西宮。ところが、コロナの影響で外国籍選手の合流が遅れたことからスタートダッシュに失敗してしまいます。合流後もなかなか噛み合わず、試行錯誤を繰り返すうち、今度はその選手たちが決められた隔離期間を守らずにチーム練習に参加していたことが発覚してリーグからけん責処分。そうまでして獲得したにもかかわらず、アレクサンダー・ルオフは起用法に不満を持ちシーズン半ばで退団してしまいました。

どうなることかと思いきや、代わりに獲得したマット・ボンズが爆当たり。チーム新記録の14連勝をマークするなど後半戦でぶっちぎって西地区優勝。3月には新アリーナの建設も発表され、お膳立ては完璧。さああとは昇格を決めるだけだったはずが、プレーオフ1回戦で仙台に敗退。悪夢のブザービーター負けは一体何の因果か、内山田洋とクールファイブ的な感じで西宮は今日も西宮だったことを思い知らされたのでした。

気合の入り方から見て昇格以外はすべて失敗のシーズンだったわけで、レギュラーシーズンを振り返る意味はあまりないかもしれませんが、谷・松崎・道原のトリオが、後半の軌道修正を導くベースになったことは間違いないでしょう。前半苦しんでいたアウトサイドシュートが改善していくと、マット・ボンズのオフェンスリバウンドやボールプッシュも優等生の多いチームにとっては格好の起爆剤となり、安定感と爆発力を兼ね備えた理想的なチームの形が見えたかに思えました。結果だけを見れば御の字だけど、目標には遠く及ばない。なんとも評価の難しいシーズンとなりました。

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■オフの動き

昨シーズンを成功と見るか、それとも失敗と考えるか。動き方によってそれが垣間見えてきそうだったこのオフ。後者と捉えるならば地元トリオの解体をも含んだ大ナタが振り下ろされる可能性だってありました。ところが、オフシーズンが始まると同時に次々とリリースされる再契約情報。なんだよ、満足してたのかよ。

【IN】
シャキール・ハインズ  中西良太  川村卓也
■継続
今野翔太  松崎賢人  谷直樹  道原紀晃  渡邊翔太  福田真生
濵高康明  デクアン・ジョーンズ  シェイク・ムボジ  劉瑾
【OUT】
岸田篤生  マット・ボンズ

※シーズン途中の退団などは含まず

抜けたのが2人で加わったのが3人。3歩進んで2歩下がる。調べるのが楽でありがたいです。加わった方の3人が強烈なわけですが、そのことに触れる前に、まずは全体について俯瞰しておきましょう。果たして西宮は変わったのか、変わらなかったのか、それとも変えなかったのか。

プレーオフ敗退直後にも書いたように、私は西宮のフロント陣がシーズンを成功と捉えればマイナーチェンジ、失敗と捉えれば変革という風に考えていました。ところが、それほど単純でもなさそうだと思い始めたのはシャキール・ハインズとの契約が報じられたあたりからです。

シーズン後半の巻き返しを牽引したマット・ボンズの退団はある意味では予想通りで、あれだけの活躍をした翌シーズンに大型契約を狙わないはずがない。西宮にとってオフシーズン一番の目玉はあっという間にB3長崎へと移籍していきました。これが西宮のフロントにとって計算外だったのかどうかは知る由もありませんが、どうもシーズン中からの移籍オファーが当たり前のような状況から察するに、移籍は前提というか、少なくともかなり早い段階でわかっていたような気がします。

そしてやって来たのハインズは、201cm・90kgの細身でウィングスパンの長い典型的な3&Dタイプのウィングです。タイプ的にはデクアン・ジョーンズのバックアップといった感じで、守備はデクアンよりも得意かもしれない。手脚の長さも含めて身体能力もなかなか。これを見て思ったことは「マット・ボンズの代わり」を探そうとしなかったんだな、ということ。もしかするとこれは、昨シーズン後半の戦いぶりはフィッシャーHCの理想とするものではなかったことを示唆しているのかもしれません。

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ボンズの武器は最高到達点までのスピードが速い跳躍とそれを何度も繰り返すことのできる脚力、それによってオフェンスリバウンドを量産し、ボールプッシュから速攻の起点とフィニッシャーになれる点でした。それは西宮の秩序だったバスケットボールにはなかったもので、だからこそブースターたり得たわけです。しかし、言い換えればこれらはすべてアンコンストラクチャーなシチュエーション。セットオフェンスと規律正しい守備によって自分たちの意図のもとに試合をコントロールしたい西宮にとって、そうしたアンコントローラブルなシーンが増えることは実は歓迎すべきことではなかったのかもしれません。

つまり、マイナーチェンジによって完成度を高める方向性を目指しながらも、決して昨シーズンを成功とは捉えていないあたりに、伸びしろとまでは言わないものの、ある種の覚悟のようなものは感じられるのでした。相手どうこうより、自分たちの強みを前面に押し出して勝とうとする西宮のスタイルには合っていると思うよ。

■今シーズンのロスター

PG|松崎賢人  渡邊翔太
SG|道原紀晃  今野翔太  濵高康明    
SF|谷直樹  川村卓也  福田真生
PF|デクアン・ジョーンズ  シャキール・ハインズ  中西良太
C|シェイク・ムボジ  劉瑾

※順不同、ポジションは適当です

PGを削ってウィングを増やしてきました。道原・濵高ほかハンドルできる選手は多いからね。インサイドには中西を加えて、スモールボールフォー&ファイブをこなせるタイプが揃っています。ポジションの垣根をどんどん取り払うのが好きそうなフィッシャーHC。

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さて、数としてはマイナーチェンジだけど、内容的には大きな意味を持つ選手の動きがありました。ビッグニュースが飛び交った今オフを締めくくるように発表された川村卓也選手の加入です。

プレースタイルはさておき選手の格としても段違いの川村が西宮にフィットするのか、いろいろな声がありそうですが、私は案外ハマるんじゃないかと思っています。それは与えられた役割をまっとうできるという意味ではなく、川村自身が戦術であるためその他をあまり変える必要がないと思うからです。もう少し説明しましょう。

川村選手の加入を懐疑的に捉える人の意見は、これまで押しも押されもせぬエースとしてプレーしてきた川村が、チームバスケットを信条とする西宮に合わないのではというものです。ボールを持つ機会が多ければ多いほど輝きを増す選手だけに、無理にチームの戦術の中に組み込もうとすると、最大の武器である得点力を活かせないのではないか。あるいは、得点は取れても、チームを勝たせることができるのかという疑問です。

真っ当な意見ではあります。確かに川村卓也とは西宮にとって異質な存在であり、ケミストリーを不安視する気持ちはわかります。ただ、こう考えてみてはどうでしょうか? すなわち、異質過ぎるのなら合わせようとしなければいいのです。

昨季のプレーオフで露呈したように、西宮の最大の弱点は勝負のかかった場面での脆さであり、停滞局面を打開できる存在がいないことでした。そんな時に川村ほど打ってつけの選手はいないでしょう。困った時にボールを渡せばきっとなんとかしてくれるはず。普通、誰かのオフェンス力に頼った攻撃はあまりいいものではありませんが、川村ならばそれを「停滞」としてではなく「戦術」として納得した上で組み込むことができます。川村自身が戦術であると書いたのはこういうことです。

谷・松崎・道原では遂に弱点を克服することができず、だからこそ今野や渡邊(あるいはルオフ)を獲得したわけですが、それでもダメだった西宮には付ける薬がないのかと思っていました。しかし、今度こそ特効薬を手にしたのかもしれません。起用法は6thマンやクラッチタイムのフィニッシュあたりかな。年齢的にエゴもなさそう。意外なようでいて、実は西宮のニーズにはぴったりの川村加入なのでした。

■鍵を握る選手
中西良太

ところで、逆に納得感はあるけどいまいち起用法は読めないのが中西選手。それもそのはずで、昨季はアジア枠として期待がかかった劉瑾の出場機会も少なく、インサイドをそもそも武器にしていなさそうな西宮において、果たしてどんな使われ方をするのか。場合によってはビッグラインアップも組めるわけで、それは純粋に昨季からの上積みになる部分ですが、そんなことを試したりするのかな。中西の活躍次第で西地区の勢力図や昇格争いも大きく変わってきそう。

チームの核は残し、戦術の完成を目指しつつ、足りない部分は補強。これでダメならいよいよ解体するしかないよね。そう考えると、真の意味で今季が西宮にとって昇格のラストチャンスなのかもしれません。



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