見出し画像

01.24|福島@熊本|何度目かのリセット

HOME|熊本ヴォルターズ
AWAY|福島ファイヤーボンズ

バイウィークを挟んで動きのあったチームの新加入選手に注目するシリーズの2回目は、熊本ヴォルターズに移籍したジャヒード・デービスです。熊本は石川海斗がいるのにPGのマーベル・ハリスを取ってしまうというとても特徴的な編成で、そのユニークさについて書いたこともありました。

ところが、ようやく石川とハリスの共存が見えてきたような気がした矢先、ハリスの退団を発表。熊本公式のリリースでは海外クラブへの移籍話が進んでいるらしいともあり、円満退社というわけではなさそう。やっぱり起用法に不満があったのかな。ちなみに、移籍について熊本は「承諾していない」とのことでしたが、契約に特記事項でもない限り、口出しすることはできないような。

で、加わったのが今回の主役であるジャヒード・デービス。こちらはこちらでチリジ・ネパウエの怪我によってインサイドに緊急事態が生じた福島ファイヤーボンズの戦略の見直しによって、押し出されるような格好で放出されていました。インサイドではなく、ウィングからのドライブやシュートで得点するタイプで、エリック・マーフィーやその他の日本人選手たちもシューティング好調な福島にしてみれば、それほどウィングからの得点力は必要としていなかった事情もあるでしょう。この辺の事情は試合と選手の動きだけからの推測なので、違ったらごめんなさい。福島もまたなかなか面白いラインアップになったので、書きたいことが見つかればその時に。

それにしても、そういう「動かざるを得ない事情」を抱えたチーム同士がいきなり対戦するんだから、マッチメイクというのは面白いものです。

そのジャヒード・デービスは、GAME1はベンチスタートからチームハイの17得点(FG7/12)をあげます。ただ、GAME1の熊本のオフェンスはとてもちぐはぐで、デビッド・ドブラスのポストプレーで押したいように見える割にはデービスが持てば1on1を始めるし、佐々木も木田もシュート打ちたいわで、なんだかボールが足りなさそう。新メンバーの合流直後らしい整理されていない感じがモロに出てしまっていました。

しかし、この「整理されていなさ」をイケイケ感と捉えれば、それは熊本のキャラクターでもあります。私が観た試合に限っても、石川のゲームメイク中心にしたり、ハリスを先発にして石川をベンチスタートさせたり、同時に起用して佐々木にボールを運ばせたりと試行錯誤をしていました。手なずけられれば個性になりそうなイケイケ感をどのように確立させるのか? 熊本の今シーズンはその方法を探るプロセスであり、絶えずリセットを繰り返しているとも言える。だからこそGAME1とGAME2では別のチームのような印象を受けることもあるのでしょう。

さて、絶えざるリセットを続ける熊本は、GAME2で早くもデービスをスターターに加えます。前日よりFG%は下げたものの、18得点10リバウンドでその期待応えたデービス。この試合ではドブラスのポストアップがほとんど見られず、インサイドにスペースをつくってアタックしやすいポジショニングが心がけられていたように思います。それはデービスのためのものというよりは、石川や佐々木や木田のためのものでもあり、誰がどういうタイミングでどんなシュートを打つのかという点についてはやっぱりよくわからない。デービスだってスリーをぽんぽん打ってくるし。どういう決まりなのかは不明なんだけど、とにかく全員から点を取ってやろうという気合だけは伝わってくる。それちょっと西宮に分けてやってくれよ。熊本を先述したような「プロセス」のチームであると定義するならば、これはこれでポジティブなのかもしれません。

考えてみれば、そもそもジャヒード・デービスはアウトサイドに開いてウィングからボールを持ってプレーを始めることが多い選手で、シュート力よりはキレ味鋭いドライブで勝負するタイプ。それってマーベル・ハリスとどう違うの? という突っ込みは成立するし、チームの柱に据えるよりは「アクセント」として機能させたい選手であり、それって佐々木や木田や本村の役割でもあるんじゃないの? という突っ込みもやっぱり成立しそう。となると、すでにアクセントだらけのチームにさらにアクセントを加えたような感じで、それってもうアクセントじゃないよね。どこからでも点が取れるオフェンシブチームを目指している、ということにしておきましょうか。

ボールをもらったらとにかくゴールへ向かえ。外れてもドブラスがリバウンドに競ってくれるさ。最後は石川ボスがなんとかしてくれるしね。どうやらイバン・ラベネルは引き続きチームに残るようで、ますます攻撃力には磨きがかかりそうな熊本。ただし、あくまで「攻撃力」であって、確実に得点できる「チーム力」にまで高められるかは怪しいところ。残りのシーズン、負けん気みなぎるイケイケ感とキレ味で勝負するバスケットボールを追究する中で、熊本は勝てるチームに成長できるのか。果たしてそのラストピースがジャヒード・デービスだったのかどうかわかるまで、それほど長い時間はかからないでしょう。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?