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2021.12.05|熊本@仙台|弱り目に祟り目

熊本ヴォルターズが苦しんでいる。ブースターたちも嘆いている。ドン・ベックの心中はいかばかりだろうか。

ジョーダン・ハミルトン、LJ.ピーク、ベンジャミン・ローソンという文句の付けようのない外国籍選手を補強し、「一体何勝するのか?」と騒がれたシーズンオフ。ところが蓋を開けてみればここまで19試合を終えて9勝10敗。おいおい、負け越しているじゃないか。今節ではアウェーとはいえ仙台89ERSを相手に痛恨の連敗を喫して西地区4位に転落。西宮や香川だけでなく福岡の後塵までも拝する始末。いや、福岡は端的に強いんだけどね。

今季のチームスタッツをざっと挙げるとこんな感じ。

■熊本ヴォルターズ 2021-22シーズン
3FG%|7.8/23.2(33.8%・8位)
IPFG%|18.5/32.3(57.3%・6位)
FG%|30.7/66.8(46.0%・5位)
FT%|12.9/18.7(69.1%・8位)
AST|21.1(9位)
TOV|12.8(8位)
ORtg|102.3(5位)
DRtg|98.0(8位)

まあ悪くはないけどさ、メンバーを考えればお粗末と言われても仕方のないところ。インサイドもアウトサイドもパッとしないし、ターンオーバーも多い。あれだけハミルトンがアイソやってるのになんでこんなに多いんだ。タレントレベルを考慮すればアシストももうちょっとあっていいよね。

波に乗れない理由はもちろんあって、ハミルトンやローソンの怪我の影響が大きく、チームの全員が揃った試合はここまで半分あるかどうか。やっとハミルトンが戻ったと思ったら、本村くんが怪我しちゃうし。そもそもが11人ロスターなのに、ずっと9人や10人で戦っていて、気の毒というかなんというか。でも、アクシデントのせいばかりでもない気がするんだよね。

シーズン当初の熊本は、オフェンスで上回って殴り勝つチームだろうと思われていました。100点取られても120点取る。目には目を歯に歯を。失点には得点を。守れなくても点を取ればいいじゃない。しかし、そのオフェンスが今ひとつ破壊力に欠けるんだ。さっきのスタッツを見ても、FG関係の数字はすべて昨季を下回っているだけでなく、平均得点すら低い。チームのシュート数の25%を占めるハミルトンの調子が今ひとつ上がってこないことが一因でしょうか。

そのハミルトンに関して言えば、約28分の出場で18.6点を稼ぎ、リバウンドも8.5本、アシストは4.8と個人の活躍としては申し分ないものの、3FG%がどんどん下降気味。平均27.8%ってどうしたんだ? 理不尽なディープスリーのイメージがありますが、この数字はいただけません。さらに今季は調子の波が大きく、仙台との対戦では、GAME1で1Qに4本のスリーを立て続けに決めるなど圧巻の働きを見せたものの、GAME2では5本すべて失敗。ハミルトンのシュートタッチが対照的な2試合だったのですが、調子が良くても悪くても負けてしまったというのがなんとも後味が悪い。

一方のLJ.ピークはむしろ絶好調なんだけど、ハミルトン復帰後はどうしてもFGAが下がってしまい、入りまくっていたスリーの確率も下がり気味。そもそもハミルトンと一緒にコートに立つと存在感が一気に薄くなってしまうという課題も継続中。ハミルトンのいない試合では押しも押されもせぬエースだったのにね。怪我で主力を欠き、なんとか残りのメンバーでやり繰りしようとしていたら、戻ってきてまたバランスを見失う。長いシーズンでは仕方のないところとはいえ、弱り目に祟り目の悪循環に悩まされています。

ただ、これは個人の問題というより、彼らに頼り過ぎるオフェンスのシステムの問題。なんだかんだあっても最後はハミルトンが遠くからスリーを決めてくれるからさ。あるいはローソンのスクリーンでできたわずかなスペースでもシュートを決めてくれるし。熊本の得点パターンとしては速攻からの得点も多いのですが(FE名古屋と同じくらい)、それは言い換えればチームとしては崩せていないとも考えられるわけで。最終的に調子の上がらない個人の得点力に頼らざるを得ないのは、HCの采配なのか、あるいは日本人選手の意識なのか。でも熊本の若い選手たちはそんなにヤワには見えないぜ。

もう一つ大きいのはディフェンスの悪さです。スティールこそ多い(7.7本・4位)熊本ですが、ボールサイドに5人全員が位置的にも意識的にも寄ってしまう悪い癖がなかなか抜けません。仙台との2試合でも、インサイドにボールが入るとアウトサイドがガラ空きで、簡単にキックアウトを捌かれていました。ピック&ロールへの対処もよくわからず、マークの受け渡しに関するやり取りもあまりないようで、スクリーナーのマークマンがただズルズルと下がって途中で追うのを止めてしまうみたいなシーンも散見されました。スクリーンプレーに対しては、ボールマンを「誰が」守るのかと同時に、「どこ」で止めるのかも大事になってくるのですが、熊本の場合はあまりちゃんと決まっていない印象を受けます。

GAME2の後半では、2ビハインドを跳ね返そうと、仙台のビッグマン→ガードのスクリーンに対してスイッチしてハードショウ気味に守るなど工夫も見せていたし、オンボールディフェンスのギアを上げることはできる。でも、それって結局は個人の頑張りに帰結するみたいなところがあって、チームとしてはスタンダードが上がっていないようにも見えてしまう。

これなんかもそうで、ローソンが高い位置でプレッシャーをかけてボールを止めようとするんだけど、その後ろがバラバラというかルールがあるように見えないというか。ハミルトンのポジションニングが悪いのか、木田がオーバーヘルプなのか。なんで最後のチェイスが佐々木くんなんだろうとか、古野さんはウィークサイドに対して目を切り過ぎでしょうとかとか。

仙台戦ではインサイドのサイズ不足も守れない原因の一つになっており、ハミルトン&ピークの時間帯には、ジャスティン・バーレルらのパワープレーで押しまくられていました。このへんは仙台の藤田HCの策略もありますが、そこの不利を補って余りあるオフェンス力というのが初期設定だったはず。ディフェンスのベースを上げて失点を減らすのか、やはり初志貫徹でオフェンスで打ち勝つのか。ベック老師の舵は果たしてどちらに切られるのでしょうか。


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