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01.09-10|熊本@山形|両雄相並ぶには

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西地区5位と東地区6位の対決。プレーオフ進出には負けられない熊本と、順位はあまり気にしていなさそうな山形。正念場とのびのびといった感じで、対照的なチームの対戦です。

熊本はPGに外国籍選手のマーベル・ハリスがいる特徴的な編成なので注目していました。だって熊本には石川海斗がいるんだから。そこにわざわざPGを取ってくるというのはどういう意図なんだろう。何試合か観た印象では、それぞれに力のあるPG同士がうまく共存できている試合と、そうでない試合がはっきり分かれています。前節の越谷との対戦では、石川とハリスのどちらかボール運びをしていない方はコーナーで待機していて、それとは逆のサイドで行われるオフェンスをワイドに展開するためのトリガーのような感じになっていて、これなら面白いなと思っていたのでした。やっぱりボールハンドルができて決定力もある選手が後ろ側にいるのってディフェンスとしては守りにくいもんね。

石川とハリスという両雄をどう相並び立たせるかに苦労していた印象のある熊本が、ようやくその答えを見つけたかに思えて、ここからどう発展させていくかを楽しみにしていました。ところが。

GAME1では終始、石川が司令塔としてオフェンスを組み立てていたのですが、これが全然うまくいきません。木田・佐々木のウィング陣が崩れていないディフェンスにわざわざ突っ込んでいってタフなショットを打っては外すばかり。特に山形のディフェンスがいい気はしなくて、とにかく熊本のプレーとショットのセレクションが酷い。そりゃ1on1だけで点が入るなら苦労はしないけど、いくらなんでももうちょっとボールを動かさないと。対する山形はアンドリュー・ランダルやランス・グルボーンら外国籍選手も含めてスリーが確変気味。あっという間に点差は離れて、前半でほぼ勝負はついてしまったのでした。なんなんだ一体。

2試合も観るつもりはなかったのですが、あまりにGAME1が悪かったので熊本が修正してこないはずがないだろうという不純な動機でGAME2も観戦。するとやっぱり。熊本はPGというかボール運びを佐々木隆成に任せます。石川はというとボールと逆サイドにスタンバイ。ボールを運んだ佐々木がスクリーンを使って自らオフェンスを始めることもあるけれど、ほとんどはサイドを変えて石川がコントロールし直し、オフボールでスクリーンを受けた木田がアタックしたり。そのシュートが面白いように決まります。誰かがドライブすれば、逆方向のオープンにちゃんとラベネルや本村がいて、そのスリーもまた決まる。前日とは同じチームだと思えないほど、ボールの動きがスムーズになっていたのでした。まったくなんなんだ。

山形のオフェンスプランは、高い位置でボールを回しながら、スクリーンを絡めてズレができたところでドライブを試みるというもの。そのプラン自体は一貫しているのですが、こちらは逆にそのドライブからのシュートがまったく決まりません。山形はスリーはそれなりに入っていたので、序盤にもう少しゴール近くのシュートが決まっていれば展開は変わっていたはず。まるでGAME1の裏写しのように、熊本がどんどん差を広げていきました。

GAME2では石川・佐々木・木田・ハリス・ラベネルというスモールなラインアップの時間帯が長かった熊本。なぜかこれが山形に対してうまくハマりました。なんでだろう? 山形のオフェンスはパス交換が多いのですが、フットワークの使えるラインアップにしたことで、スティールからの速攻や、山形のターンオーバーを誘発することに成功していました。キース・クラントンをはじめ、ポストアップをあまり使わない山形にはこれでいけると踏んだのかもしれません。

2試合を通して観ると、熊本が石川とハリスの関係を中心に修正を加えてきたことがわかるのですが、なぜGAME1からそうしなかったのかとも思うけれど、まあコーチもいろいろ試してみたいのでしょう。

周りを活かしながらアシストを量産して試合をコントロールできる石川と、鋭いドライブから一直線にゴールまで行けるハリス。どちらも点を取れる選手であり、同時起用すれば爆発力が生まれそうですが、ボールを持っている時にこそ輝くという点で、共存するのはそう簡単ではないのでしょう。それに加えて佐々木・木田・本村といった生きのいい若手ウィング陣も使いたいし、単純にPG石川、SGハリスにするわけにもいかないといった熊本の台所事情。サイズ不足も気になるしね。

山形とのGAME2では、石川をあえてボール運びから外して逆サイドに待機させ、一旦ボールサイドでオフェンスを始めることで、石川の強みである推進力とパスセンスを流れの中で発揮できるようにしていました。その結果、自然とボールムーブが生まれ、オフェンスにリズムが出たのだと思います。司令塔がトップの位置から自分でコントロールしてオフェンスを始めるのは王道ですが、逆に言えば相手にとって攻撃がどこから始まるのかわかりやすい。石川のようなケアすべき選手が、オフェンスの開始時にトップの位置におらず、ボールを持っていないというのは、案外守りづらい側面はあるでしょう。

一方のハリスはGAME2ではベンチスタート。ほぼSGやSFとして得点に専念していたようなところがあり、これはこれで適正なポジションかもしれません。日本人選手が相手ならポストアップだってできるし。PGがコートに2人いる状態は、攻撃の起点が多いという意味では相手の脅威になり得ますが、自チームのシステムとして考えると複雑になりがち。ハリスが2〜3番を担うことでチーム内での役割がはっきりし、木田・佐々木・本村らとも共存しやすくなったのでは。「互換性」と言ったら悪いけれど、誰が出ても同じようにプレーできる、どんな組み合わせでも同じシステムでオフェンスができるのは強いし、プレータイムの偏りを見てもそれを目指していそうな熊本。

「ボールを持ってなんぼ」の選手のたちの、「ボールを持っていない部分」を整理し、言い換えれば少しずつボールを持たせないようにして攻撃を活性化させたGAME2の熊本。組み合わせや使い方によって強みにも弱みにもなるチームの編成上の諸問題を試行錯誤している様子と、あえて石川でもハリスでもない選手にボール運びをさせるという斬新なアイデアは、なかなか見応えがありました。もっとも、他の試合ではすでに観られた形なのかもしれませんが。




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