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2021.10.16|福島@山形|マイペースはどこから

福島ファイヤーボンズはここまで4勝4敗。同じ東地区の強豪である仙台やFE名古屋との対戦を一度ずつ終えていることを考えれば、それほど悲観する必要はありません。むしろ開幕節で見事に仙台を破った時には、「今年はやるぞ」という強烈なインパクトを周囲に与えたものです。FE名古屋との対戦でも1勝をもぎ取りやはり強さを印象付けたものの、それに続く福岡、山形との対戦でも1勝1敗。今ひとつ波に乗り切れていないような試合が続いています。面白いのは、ここまで4節すべてGAME1に勝ち、GAME2には負けているところ。一体そこにはどんな秘密があるのか? 取材は郡山へと飛んだのです(飛びません)。

真っ先に思い浮かんだのはシュートの波。福島といえば思い切りのいいシューティングや速攻が持ち味。トランジションからでも躊躇なくスリーを打ってきます。今シーズンは長谷川智伸やアレックス・マーフィーを加えて、さらに磨きをかけようとしています。しかし、シュートは「水物」とよく言われるように、どんな選手やチームにでも入らない時はとことん入らない日があるもの。そこで福島のFG%関係のスタッツを調べてみました。

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グレーになっているのが負けた試合。うーん。確かにFG%が少し落ちる傾向はありますが、名古屋とのGAME2でガクンと3FGAが落ちた以外はそこまで変わらないんだよね。試投数も2試合で大きく違うのは名古屋戦だけ。むしろ山形戦なんて負けたGAME2の方が確率は良かったりする。名古屋戦を除けば5割前後はシュートを決められていて、水物のはずのシュートはある程度まとめられていることになります。ということはオフェンスに著しい問題があるわけではなさそう。

ところで、シューティングチームかと思われた福島でしたが、実は1試合平均のFG数を昨季から大きく減らしています(65.9→59.9)。しかもこれは3FGの減少とぴったり同じで(26.9→20.8)、B2の多くのチームがスリーのアテンプトを増やしている中、福島は代名詞のような存在だったスリーを減らしているのでした。

その理由として考えられるのはウォッシュバーンが加入し、ポストプレーが増えたことでしょう。実際、試合を観ていてもローポストで勝負させるシーンは目に付きます。ピック&ポップからスリーを狙える213cmのビッグマンは、福島にはぴったりだと考えていたのですが、こんなにインサイドで身体を張るとはね。オフェンスではてっきりスクリーナーやロールマンとして周囲を活かすのかと思いきや、ここまではむしろ正反対の印象です。

話を1勝1敗の理由に戻しましょう。オフェンスにそこまでの波がないとするとディフェンスに弱点があることになります。同様のスタッツを今度は対戦相手で見てみます。

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うん、こっちだね。GAME2では軒並み相手にシュートを高確率で決められています。特にスリーが全然守れていない。でもやっぱりわからないのは、なぜGAME2だけなのかという点。もちろん相手のスカウティングおよびアジャストもあるだろうけど、こんなにはっきり分かれるかね。より広い範囲を守らなければいけないという意味で、2戦目の疲労が影響している可能性もないわけではないでしょうが。

もう一つ興味深いのは、負けたGAME2ではすべてGAME1よりも試合のペースが遅くなっている点です。しかも試合を追うごとにだんだんとその傾向は強くなっているような。ペースの遅さと被FG%の悪さってどんな関係が考えられるんだろう? ディフェンスが機能していないから、いい形でボールが奪えず得意の速攻を出せなくなるという理屈は成り立ちそう。ちなみに、福岡と山形との対戦ではターンオーバーからの得点がGAME2ではGAME1の半分以下になっており、守備からリズムを生み出せなかったことが敗戦の一因になっていました。

不思議なのはペースが速いか遅いか(=勝敗)に関係なく、得点にそこまでのバラつきが見られないこと。そして、ペースの遅い試合=負けた試合はすべて10点差以上離されていること。ディフェンスでプレッシャーを与えられず、相手にしっかりオフェンスを組み立てられるとリズムが狂ってしまうということでしょうか。だとすれば、相手が対策を練ってくるGAME2で勝てないのも何となくわかる気がしていまします。

山形とのGAME2でもそうでしたが、福島の守備はヘルプディフェンスに難があり、オンボールのチェックは激しいものの、そこを抜ければリムまで一直線というシーンが何度もありました。2Qはそこを修正して山形が混乱したものの、後半は慣れてきたのか山形がのびのびとプレーしていたように見受けられました。後付けかもしれませんが、福島の守備の運動量が落ちたようにも思えます。

そして試合の最終盤、福島は確実性を重視したのか、ウォッシュバーンのポストプレーを多用していました。しかし山形はむしろそこを狙っていて、ダブルチームを仕掛け、スティールを奪うなどして試合を決めました。まるで福島のお株を奪うかのような攻撃であり、こうしたミスから崩れるパターンは福岡とのGAME2でも見られました。

やっぱり福島はガードが中心のチームで、どんどんシュートを打っていかないとダメなんじゃないかな。マグロが泳ぐのを止めると死んでしまうように、福島はシュートを打ってこそ福島になれる。そのチャンスをできるだけ多くつくり出すためにも、2試合を通して安定したディフェンスで相手のシュートにコンテストすることが必要不可欠だと言えそうです。



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