見出し画像

西宮ストークス観戦記#60 スピードスターの目的地

松崎賢人選手の今シーズンのパフォーマンスは、どのように評されるべきなんだろう。ほぼ全試合でスターティングPGを務めた松崎選手の愛称は「スピードスター」。しかし、じゃあその名にふさわしいシーンがたくさんあったかと言うと、そうでもないんだな。

松崎賢人選手の2019-20シーズン
出場時間 22.4分(+4.7)
平均得点 5.7点(+1.7)
3FG%  27.6%(0.5/1.9)(-1.7) 
FG% 38.3%(1.9/5.0)(-4.0) 
AST 2.6本(+0.4) ※カッコ内は昨シーズンとの比較

例によってまずは今シーズンの成績から。出場時間が増え、得点も伸びてはいるものの、シュートの確率は下がっています。お世辞にもシュートが上手いとは言えないけれど、3FG%が27.6%はいくらなんでも寂しい。そもそもシュートを打つ機会そのものも少なくて、1試合平均5.0本は、15分以上の平均出場時間がある選手としては谷口選手に続いて下から2番目。アシストも2.6本とPGとしては決して多いとは言えません。

ただ、松崎選手をこうした得点関連のスタッツばかりで評価するのはフェアではないでしょう。何と言ってもディフェンスの上手いしげる先輩。オンボールでの守備はもちろん、ピックをかわす技術や相手のパスコースを切るポジショニングやカバーも上手い。フィッシャーHCによるマークマンやポジションを頻繁に入れ替えるシステムにも難なくフィット。1試合平均のスティール(1.2本)はバーンズ先生に次いでチーム2位です。

画像1

◉明確な役割とその稀少性

今シーズンの試合を観直してみるとわかるのですが、実は松崎選手の役割はとてもはっきりしています。まずはボール運び。うん、当たり前だよね。で、バックコートからフロントコートへとボールを運びセットプレーがスタートすると、道原選手やバーンズ先生にボールを預けて、だいたいウィングで待機。状況に応じて空いたスペースに飛び込んだり、キックアウトパスを受けてスリーを打ったり。意外に多いのがインサイドで相手ビッグマンに対してスクリーンをかけるお仕事。効いているのか正直よくわからないことも多いけど、ボールのないところで多忙なしげる先輩なのでした。

ただ、これらをPGとして考えると微妙というか、あるいはレアというか。セットのサインは出すけれど、それが始まれば自分は脇にいて、コントロールするのは別の選手。自分より大きな選手にスクリーンで挑んだかと思えば、スラッシャーのようにインサイドへ飛び込んでいく(ただし、そこまで確率は良くない)。フリースローのアテンプトが1.7本と、昨季の2.5倍になっているのはそのためでしょう。

スクリーンショット 2020-04-09 22.57.20

まあ、PGだからって必ずオフェンスをコントロールする必要はないんだよね。「ハンドラー」という言葉が示すように、今やポジションレスが当たり前。NBAのどこかのチームのコーチは、あるのはポジションではなく、「ハンドラー」「シューター」「ビッグマン」という3つの役割だと述べているようです。そう考えると松崎選手はシューターでもないわけで、やっぱりレアというか何というか。また同時に、フィッシャーHCが選手をポジションではなく役割で考えるタイプであることも透けて見えます。

ストークスの試合を継続的に観始めてからずっと思っていたのですが、松崎選手をPGとして考えると、あまり他にいないタイプだと思うんだよね。スピードが持ち味のわりに、自分からドライブを仕掛けてアタックすることは少ないし、HCの方針もあるんだろうけど、トランジションのシチュエーションでも、ワンマン速攻でもない限り味方の上がりを待つことが多い。

昨シーズンいた大塚勇人選手のようにボールコントロールから味方を活かすタイプでもなく、岸田選手のように果敢に仕掛けて突破口を見つけるタイプでもない。だったらやっぱりスピードを活かしたプレーをしてほしいと願うものの、じっくり攻めるタイプの西宮ではなかなかその武器は使いづらい。西宮の試合ペースは下から2番目だし、FBP(速攻からの得点)も下から4番目。実はこれでも増えた方で、昨シーズンからは2点くらい増えている。

スクリーンショット 2020-04-09 23.06.14

こうなってくると果たして「スピードスター」の看板がふさわしいのかどうなのか。強いて言うなら、小回りの利く何でも屋さん。ボール運びって疲れるからね。それだけでも十分に大仕事。主役は譲って、チームの隙間をお埋め致します(どーーーん)。

◉スピードスターはどこへ向かう?

ただ、ちょっともったいないは気するんだ。下は今シーズンの松崎選手の得点(緑の棒)とシュート試投数(赤い線)をグラフにしたものです。ところどころに山はあるものの、左から右、つまり開幕からシーズン後半にかけて、どちらの数値も下がっていく傾向がわかります。

スクリーンショット 2020-04-11 21.29.51

出場時間自体はシーズンを通してそこまで差はありません。となると、シュートする機会そのものが減っていったということ。調子の波はどんな選手にもあるけれど、打つ・打たないの判断は、戦術面だけでなくメンタル的な部分も影響している可能性もあります。あるいは、チームが使いこなせていないだけかもしれない。だったらそこは「伸びしろ」でもあるわけで。

逆に言えば、開幕直後はものすごく積極的だったんだよね。スペースが空いていると見るやドライブを仕掛けて、スリーポイントも躊躇なく打って決めていた。開幕節なんてすごかったよ。現地で観てたからよく覚えている。ちなみに、松崎選手は開幕からの7試合で27本の3Pシュートを放っていますが、これは今季の3FGA(87本)の約31%に当たります。これをどう捉えるべきか。

画像5


一体何が違ったのか、バスケットLIVEで観直したかったのですが、そこまではさかのぼって観られませんでした。シーズンスタート直後で、そこまでシステムが機能していなかったことも関係しているでしょうが、だとすれば自らそれを解決していたわけで、スピードを活かしたプレーを活かせる余地はもっとあるはず。

まだまだ老け込む歳じゃないとはいえ今年で32歳。同じポジションに岸田選手というフレッシュな選手が加入し、しかも存分に結果を見せつけられた今、いつまでもレギュラーの座が安泰とは思っていないはず。スタイルを変化させるのか、はたまた研ぎ澄ませるのか、スピードスターの目的地はどこへ向かうのでしょうか。


※このnoteは単なるファンの個人的な感想であり、
西宮ストークスとは一切関係のない非公式なものです。

この記事が参加している募集

私のイチオシ

Bリーグ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?