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01.31|群馬@FE名古屋|攻撃は最大の防御

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東地区の首位をひた走る群馬はとにかく負けない。なんでもBリーグの新記録だとか。もう群馬抜きでプレーオフやってもいいんじゃないの? 対するFE名古屋はついに佐賀を捉えて西地区の首位。つまり首位対決なのですが、そういう雰囲気は感じません。最強群馬を相手にホームでどう戦うのか。西地区首位とはいっても、あくまでも名古屋はチャレンジャー。

GAME1ではそんな実力差が如実に出ました。決して名古屋は悪くなかったのですが、とにかく群馬のシュートが落ちない。速攻を出されないよう丁寧な試合運びを心がけていた名古屋ですが、シュートを落とすたびに群馬のリードが広がっていき、結局は27点という大きな差がつきました。名古屋はソウ・シェリフをスタートさせて、群馬の高さやリバウンド面で対抗しようと試みていてたのですが、特にハーフコートのオフェンスではその強みはあまり活かせず。時間をかけて攻めるものの、中途半端な距離のミドルを外しては群馬にアーリーオフェンスを決められていました。

なんとなく、この試合の名古屋は群馬を「守ろう」として自らを追い詰めてしまったような印象がありました。投げやりな感想だけど、たぶん群馬に守り勝てるチームはない。これだけ高確率でシュートを決めるチームを防ぐのはまず不可能です。日本人選手の実力、ほぼB1クラスの外国籍選手のバランス、ボールを奪ったら全員が走る意識、そしてシュートの精度。どこをとっても穴がない。それならいっそがむしゃらな点の奪い合いを挑んで、どさくさに紛れて勝ってしまうような方法しかないんじゃないか。名古屋ですら寄せ付けなかった群馬を見て、そんな風に思ったのでした。

その思いを深めたのにはもう一つ理由があって、それは名古屋が「シュートを打たない」チームだからです。名古屋のチームスタッツを見てみるとFG%は3位、3FG%はトップと、さすが西地区首位にふさわしい数字です。ただ、FGA(シュートの試投数)はどちらも最少。どんどんシュートを打ってくるのではなく、シュートの精度を重視。量より質のコントロールされたオフェンスシステムのチームなのです。だからやっぱり試合のペースは遅くて15位。杉本、松山、鹿野、横江といったシュート力の高い選手を揃えているからこその戦術であり、彼らが動くことで生まれるスペースを使って、フィッツジェラルドやティルマンらも楽に得点することができています。

なぜ「シュートを打たない」名古屋なら群馬に対抗できると考えたのか。それは、群馬でもっとも恐るべきはリバウンドから瞬く間に相手ゴールへ向かって得点を奪う速攻だと思っているからです。トレイ・ジョーンズの1on1でも、山崎や野崎のスリーでも、ジャスティン・キーナンのポストプレーでもなく、トランジションゲームを繰り返されてしまうことで畳み掛けられて一気に試合を決められる。強度の高い守備で相手のシュートを落とさせ、リバウンドから走る。外国籍選手も走る。もうリバウンドとる前から走ってる。それが「シュートを決めないと走られる」というオフェンスへのプレッシャーにもなる。守っているようで実は攻めている群馬。

その意味では「シュートを打たない」、そして確実に決められる名古屋は、得点すること自体もさることながら、それによって群馬の攻撃機会を減らせるという逆説的な意味においても相性がいいような気がしていたのです。自分たちで巧みに試合のペースをコントロールできる名古屋ならば、接戦に持ち込めるのではないかという仮説。しかし、蓋を開けてみれば大きな差がつきました。それゆえに守り勝つのは無理だろうなと思ったわけです。走る群馬を止めるにはシュートを決めるしかない。中途半端なシュートミスはターンオーバーと同じ。攻撃は最大の防御なのです。

前置きが長くなりましたが、ようやくGAME2の話。正直、厳しいと思っていた。GAME1の内容に加え、GAME2にすこぶる弱い名古屋には明るい材料を感じませんでした。ところが、結果はご存じの通りの大熱戦。あと一歩というところまで絶対王者を追い詰めたのです。驚いたのは、GAME2の名古屋が志向していたのは、まさに「攻撃は最大の防御」だったこと。後づけだろうと言われればそれまでですが、一応こんなツイートもしているので貼っておこう(小心者)。熊本うんぬんはご愛嬌。

GAME2の名古屋はスターターをこれまでのように戻し、横江・鹿野が先発。一つだけ違うところがあって、ティルマン→フィッツジェラルドを変更。正直、「え?」と思った。名古屋のブースターでもそう感じた方はおられたのではないでしょうか。得点力には文句の付け所のないフィッツジェラルドですが、機動力に欠けるためにディフェンス面で穴になることも多く、群馬の勢いのある攻撃に対応できないのではと考えたのでした。

ところが、フィッツジェラルドとローソンを並べたインサイドこそ、この試合のミソ(名古屋だけに)でした。2人のピックを使って横江・杉本・松山らがペイントへと侵入。群馬のビッグマンを引きつけておいて、スイッチバックしようとした瞬間、タイミングよくディレイロール(スクリーナーがタイミングを遅らせてゴールへ向かう動きを見せること)してきたフィッツやローソンに易々とパスが通ります。これがむちゃくちゃ効いていた。だからと言ってPNR一辺倒になるのではなく、レーンが空けば一直線にゴールを目指すし、プルアップのスリーも思い切りよく打って決まります。GAME1ではあまり観られなかったインサイドアタックで名古屋がリードを築くなんて、夢にも思わなかったよ(すみません)。とにかく、小細工を練るより真正面から攻めるんだという気概が試合を通して伝わってきました。

この気迫に押されたのか、珍しく群馬のシュートが決まりません。少々のコンテストなど物ともせずにスリーを沈める群馬ですが、オープンシュートですら決まらない。大勝の後には得てしてこういう試合があったりしますが、群馬も人の子だったんだな。

残り5分、オフィシャルタイムアウトの時点では名古屋が11点リード(78-67)。しかし、ここから群馬の猛猛猛猛猛追が始まります。最終スコアが83-87なので、ここから5-20のランを喰らうわけですが、それでも残り2分の時点ではまだ83-76。つまり最後の2分間は0-11。恐ろしい。名古屋はこの大事な局面で3連続ターンオーバーを犯してしまい、大逆転負けをお膳立てしてしまったわけですが、それまで素晴らしいバスケットをしていた名古屋の選手を責める気持ちにはなれません。むしろ、チャンスをすべてものにした群馬を褒めるべきでしょう。果敢にアタックを繰り返す名古屋のシュートをゴール下で紙一重のところで防ぎ、球際の集中力を欠かさずにリバウンドを死守して速攻に繋げた群馬が一枚上でした。

それは言い換えれば名古屋はひたすら群馬のゴールを攻め続けたのです。残り5分を切り、群馬の追い上げに晒されてもなお名古屋は素早い攻撃を繰り返しました。調べてもらえればわかりますが、ショットクロック残り10秒とか12秒くらいでも躊躇なくシュートへ行っている。しかも、そのシュートのほとんどがペイント内。正直、もうちょっと時間をかけてもいいんじゃないかと思ったし、焦りを感じないわけでもなかった。だって、相手はシュートミス=(ほぼ)速攻で2点の群馬なんだから。時間を使って群馬の攻撃機会を減らした方がいいんじゃないか。無理にシュートを打ってリバウンドを取られるより、ショットクロックバイオレーションを犯して一旦試合が止まる方が、シュート確率を下げられるんじゃないか。そんな消極的なそぶりは一切見せず、名古屋はゴールを目指したのです。まさに「攻撃は最大の防御」を実践していたのが、他ならぬリーグで一番シュートの数が少ない名古屋だったのです。

その戦略はあと一歩のところで成功するはずでした。1本でもシュートが入っていれば結果は違うものになったはずです。それまであんなに決まっていたシュートが、よりにもよって一番大事な時間帯でリングに嫌われる皮肉。それでも折れずにシュートを打ち続けた名古屋の戦いぶりは天晴れでした。強いようで取りこぼしも少なくない今季の名古屋ですが、この試合が何かのきっかけになるかもしれません。ORtgはそれほど高くない名古屋ですが、確実性の高いオフェンスを誇るチームだけに、試合への姿勢やペースを変えることで、「火力」を増幅させる伸びしろはあるはず。守りながら攻める群馬に対して、攻めることで守ろうとした名古屋は、新たな可能性を手にしたのかもしれません。



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