推し燃ゆ(宇佐見りん)感想

あいさつ

2回目の記事になります。こんにちは。
今更って感じですが、宇佐見りんさんの『推し燃ゆ』という本を読みました。実は1週間前に本屋で見かけてからすごく気になっていて、今日お出かけしたついでに買ってしまいました。こちらの作品は、21歳、史上最年少で芥川賞を獲得した本です。2020年に出版されたそうです。当時ネットですごく話題になっていて、私がさらっと見た感じ賛否両論ありそうな感じで、なんとなく私の琴線に触れそうな予感がしてたのでタイムリーに追いかけてしまうと自分が傷つくか、先入観を持ったまま読んでしまってもったいないことをしそうな気がして、なんとなく避けてました。というわけで、気になっていたけど買う機会を逃して逃して今、やっと縁がめぐってきた~って感じで、本屋さんで買って、帰宅してすぐ読んで、読み終わってすぐこのブログを書いてます。

感想

みんな思ったんじゃないかな、この本は私のために書かれたんじゃないかって思いました。この本は、推し(応援しているアイドル)が炎上してしまった女の子の話です。簡単に言うとそういう話なんだけど、この作品は誰しも持ってる何とも言えないグツグツした感情が的確に文にされていて、心臓と記憶、私の実体験を指でなぞられてるような変な感覚になりました。アイドルの炎上を通して、ひとりの女の子の人生が描かれてます。言い方むずかしい。推しがいる人はぜったい分かるところいっぱいあるし、バイトうまくいかんとか、微妙な家族関係とか、明確に書かれてはないけどたぶん主人公ADHDとかASDとか発達障害がらみの何かがありそうで、そういうのごった煮でグツグツした感じの話!すごい現代的な感じがして、今を生きてる私たちに向けた小説というか、リアルな感じがした。
言語化能力がすごい。欲しいところにパチッパチッと当ててくるから、結構おぞましい描写をしてても気持ちいい。リビングで就活の話になって、両親がいて、足をやけに広げて座る父親にむかつくところとか、勝手に状況話し始める母親の感じとか、姉がソファでテレビ見ながらも話を聞いててピリついてる感じとか…一場面切り取ってもこの解像度の高さ、やばすぎだろ。あくまでこの本の中の女の子の話なのに、リアルすぎて勝手に追体験というか、共感してしまって、最後の方は泣いてしまった。高校を中退して、就活も進まず、バイトもクビになって、とりあえず一人暮らし始めたらって言われて亡くなった祖母の家で一人暮らしするけどいい加減自活しろって、毎月振り込まれるお金もどんどん少なくなって…。推しが生きてるみたいに、女の子も生きてて、連動して物事が進んでいく感じがすごい、なんか季節の匂いまで感じてしまった。別にこの話には女の子に職が見つかってハッピーエンドとか、推しの炎上は嘘だったとか、そんな分かりやすいハッピーエンドはない。帯に書いてあるみたいに、ほんとに、一つの青春だった。この女の子の人生はまだ続いてくんだなって、この本がこの女の子の人生そのものなんだなってなった。読む人によって、この子の将来は明るいとか暗いとか色んな感想がありそうだなと思った。女の子の今後どうなんの、どうなんのってすごいソワソワしながら読んでしまった。わたしはこの後のことは想像にお任せしますみたいな投げっぱなしの作品ってかなり嫌いなんですけど、この作品はちゃんと意味があるというか、ほんとに読む人によって色んなifがありそうだなってキチっとした終わり方に見えた。書けないからじゃなくて、ここで終わりの作品なんだなって。すごかった。面白かった。月並みな感想しか言えないけど、気になった人はぜひ読んでみてください。最後に、この話に出てくる推しのメンバーカラーが青色で、青色に関わる描写がたくさん出てくるんですけど、表紙のピンクの裏というか、カバーを外した裸のむき出しの状態の本自体の色が綺麗なブルーで、そういうこだわりが、ああ…ってまた余韻をくれた。

推しの話

実はわたし、推しがいる。好きすぎて、周りにとやかく言われたくなくて、その子に対して抱いた感情は私だけのものにしておきたくて、なんとなく公言するのをやめてしまったんだけど。『推し燃ゆ』に出てくる「推し」の不器用な感じとか、まっすぐな感じとか、なんか歯がゆい感じとか、でもそれが全部かわいくて、愛おしくて、本文から引用しますけど「推しを取り込むことは自分を呼び覚ますことだ。諦めて手放した何か、普段は生活のためにやりすごしている何か、押しつぶした何かを、推しが引きずり出す。だからこそ、推しを解釈して、推しをわかろうとした。その存在をたしかに感じることで、あたしはあたし自身の存在を感じようとした。推しの魂の躍動が愛おしかった。必死になって追いつこうとして踊っている、あたしの魂が愛おしかった。叫べ、叫べ、と推しが全身で語り掛ける。あたしは叫ぶ。渦を巻いていたものが急に解放されてあたりのものをなぎ倒していくように、あたし自身の厄介な命の重さをまるごとぶつけるようにして叫ぶ。」←神文すぎる。オタクってこれじゃん、話それた。私が好きな推しアンチがいっぱいいて、よく炎上するから最近なんとなく見るのがつらくなっちゃって追いかけてなかったんだけど、推し好きな気持ち思い出させてくれた。こんな文かけるひと、いるんだ。天才だよ。もっと世の中に評価されるべき(もうされてる)。まじで気持ちいくらい言語化してくれるからみんな買って読んで。

発達障害の話

明確に書かれてはなかったけど、小説の中の女の子はたぶん発達障害だと思う。それで、わたしも2か月前くらいに通ってる心療内科の先生に「自閉症の気があります」って言われた。これ最初のブログで書いたかも。あと通い始めのときに「ADHDの傾向がある」って言われて薬飲んでた時期があった。何が言いたいかっていうと、発達障害あるあるみたいなものがたくさんこの小説の中には落ちてて、それを見つけるたびに心がギュっとなった。分かんない人は素通りしちゃうんかな、主人公がただの仕事できない人間に見えるんかな、とか主人公の家族の反応をみて自分に重ねて、他の読者のこと想像したりしてなんかよく分かんない気持ちになった。作中で「わたしふつうじゃないんだよ」って言った主人公に対して「あ~またそれのせいにするんだ」って感じの流れがあったんですけど、ほんとに、なんかわかるっていうか、私が勝手に連想してしまったのは、どこまでが自分の病気でどこからが自分の甘え(自分自身の問題なんだろう)っていう問いが自分の中にずっとあって、病気のせいなんだって訴えの正当性を自信もって主張できない感じがすごい分かりました。自分で自分を信じられないから根底が揺らいでて、地面がグラグラな感じ。私が通ってるところの先生は「うちでは甘えって考え方はしなくて、その甘えがどこからくるのか一緒に考えていきましょう」って言ってたかな。で、そのあと主人公が肉体のせいで勝手に涙出てくるから邪魔。みたいなこと言ってたのもすごい共感した。これは統合失調症だったか、離人症だったか、なんかの特徴であったんだけど自分と肉体を分けて考えてしまうやつで、私もうつの症状がひどいときは傾向が強くて、検索したことがあったから、とにかく自律神経とか発達障害とかその周辺の特徴の一つにそういうのがあったんですね。でもこういう知識うんぬん別にして、なんか本能的にわたしこれ分かるって思った。
わたし、文章下手だな。わかる、共感する、ばっかでごめんなさい。理由を分かりやすく言語化するのが今の私にはまだ難しいな。
まあ、で、女の子は欠勤連絡忘れてバイトクビになったり就活うまくいかなかったりで、その状況が今の自分の状況(大学4年、就活やめた、バイト面接落ちて心折れた)と重なりすぎて、発達障害ってまじで生きるのむずいよなって。で発達障害のせいにしたいけど発達障害持ってても器用に生きてる人はいて、「大丈夫だよ」って誰かが言うんだけど、そんな人引き合いに出されてもさ…って、無責任なこと言うなよって逆上しそうになるのを勝手に頭の中でシミュレーションして。この先どうやって生きていこう、実家に帰って子供部屋おばさんやるとして、それがどれだけもつだろう。どれだけ周りに見下されるんだろう。親に「金出してやってるんだから」って言われたくなくて、自立したくて、逆転するために、何なら才能を発揮できるんだろう。わたしにそんな才能あるんだろうか。発達障害って何かしら才能があるから、それを武器にしてがんばってね☆ってどこ見ても書いてあって、無責任だなと思う。才能あるやつだけが生き残って目に見えているだけで、ないやつはとっくにくたばったよ。普通のことを普通にできる人になりたい。『推し燃ゆ』で主人公が幼少期にお風呂に入れてもらってるシーンで、アルファベットが言えなくてずっと風呂に入れられて、先にすらすら言い終わってあがってく姉を羨ましく思ってたところが今頭に浮かんだわ。主人公とおんなじだよ。
私はこの本の終わりの主人公のその先が見えなかった。私が今まさにそこだから。大学4年生でそろそろタイムリミットがくる。東京にのこるか?地元に帰るか。実家に帰ったとしてどうやって人生逆転しようか…なんて考えて、漫画でも描くか小説書いて賞でも取るか、とか妄想して全く努力もせずに気持ちよくなって、少ししてそんな自分に鳥肌が立つ。そうして『推し燃ゆ』21歳芥川賞という帯に惹かれて私は本屋さんでこの作品を手に取った。

まとめ

私はこの作品から発達障害と社会のかかわり方(家族・就職)について考えた。私も発達障害の気があるって医者に言われたから、より身近にいろんな問題に共感した。作品と作者を結び付けて勝手にいろいろ考えちゃうのはよくないけど、作者がもし発達障害や精神疾患を抱えていていろいろあったけど賞とったとかなら、まじで成功例すぎて。すごい下品というか俗物的な見方でごめんなさい。21歳でこんだけ文才あって評価されて、羨ましすぎる。私も成功したい。最近米津玄師とかビリーアイリッシュとか発達障害や病気を抱えている人をよく検索してみている。こういう人って、わたしたちの成功例で希望なんだけど、でも決定的に私とは別個体の存在で、わたしではないっていう絶望でもあるんですよね。こういう人をみて頑張れるって思うときもあれば、なんかすごい憎くて嫉妬してしまうときもあって、ぐちゃぐちゃの感情になる。そんな暇失くすくらい、自分の制作(とりあえず卒制)に集中しよう。なんなんだこのブログ。まあこんな感じでこれからも気が向いたときに好きなこと書いていこうと思います。読んでくれてありがとう。


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