マガジンのカバー画像

一億光年の宝

68
北海道別海町中春別の小幡牧場の日常をモデルとした考察の中から産まれたポエム、エッセイの数々。酪農と宇宙を探偵作家土木警備員の著者がコラボさせるなど、好き放題やっている。創作なので…
運営しているクリエイター

#北海道

『男は荒野を進め』

僕だけが一億光年分の価値のある宝物を探しに行く。それは荒野を一人で歩く事と同じ位孤独な行為だ。 誰も僕の背中を押してはくれなかった。 誰もが一億光年分の価値のある宝物の存在を認めてくれなかった。 だから僕は、言葉で言葉で殴り付けてやることにした。 生かすか殺すか。生きるか死ぬか。 殴り付けても、殴り付けても、殴り付けても、誰も宝物の存在を信じてはくれなかった。 もう我慢の限界だ。 いつでも男は、荒野を一人で進む。 ヒタヒタと音を立てる。 足音が、僕の意識を軽

有料
10,000

『男は死ぬまで夏の死神を殴り付けろ』

一億光年分の価値のある宝物を探す最中、雨上がりの後「夏」が影が差すように訪れて、乾いた大地を青く染めた。 北風が吹き付けてきた時、太陽の眩しさを恋しく思っていたけれど。 新緑の中にこそ、宝は存在すると考えていたけれど。 夏は死を演出していた。 蠅の大群が群がり、屍が黒々と蠢き、揺らめく陽炎のように死神がダンスを踊っていた。 生きるか死ぬか。 食うか食われるか。 死んで腐るか、生きて腐らすか。 狂気を孕んだ夏の香が死神のように忍び寄ってきた。 だから僕は死神を、殴って

有料
10,000

昨日行った所とは違う、しばらく訪れていない放牧地へ早く行きたい。昨日とは違う発見があるはずだから。何よりも体が新緑と適度な繊維質を欲しているし。 小幡牧場

俺は確かに牛だけど、ちょっと痩せすぎだって?探偵さんは病気でもしたの?と推理したけど大外れ❗小幡牧場では放牧向きの、小さくて軽い牛が好まれます。乳量は少ないけど、寿命は長い❗最近は一個体の乳量を求める酪農家が多いのですが。 長生きの牛の牛乳は、軽やかで美味しかったよ。 小幡牧場

牛たちの寝床がキレイになっている。放牧帰りだろうか?気だるくて、スローだ。ゆっくりと動くことにする。牛たちは少しだけ、草が太陽から受けた恵みを人に分け与える事が出来る。 『今からゆっくり仕事をする』 写真 小幡マキ

春を待ちわびていたら、あっという間に初夏が来た。ささくれ立っていた日々はすっかり忘れさられて。また、景色の一部になる季節が来ていた。 『放牧』

予感がする。 ピーンと空気が張り詰める。 思考しない。 ただ研ぎ澄ませる。 『予感』 写真 小幡マキ 文 大崎航

『番犬、じゅうばんばんです2』

小幡牧場の番犬、じゅうばんばんです。 新緑眩しい、どこまでも続く牧草地を放たれた牛たちが遊び、戯れる、素敵な季節が来ましたね。 今年も私は、数えて十五回目の夏を大好きな小幡家のみんなと一緒に迎えることが出来そうです。 私が生まれる前から小幡牧場はあったのかもしれないけれど、実は私は小幡牧場の歴史の生き証人なのかもしれません。 何故なら、昔おそらく相当ヤンチャしてたご主人さまが、放蕩の果てにこの地に流れついたことも。 過酷な労働の果てに、一から牧場を始めたことを決意した

有料
10,000