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一億光年の宝

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北海道別海町中春別の小幡牧場の日常をモデルとした考察の中から産まれたポエム、エッセイの数々。酪農と宇宙を探偵作家土木警備員の著者がコラボさせるなど、好き放題やっている。創作なので…
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#小幡牧場

『男は荒野を進め』

僕だけが一億光年分の価値のある宝物を探しに行く。それは荒野を一人で歩く事と同じ位孤独な行為だ。 誰も僕の背中を押してはくれなかった。 誰もが一億光年分の価値のある宝物の存在を認めてくれなかった。 だから僕は、言葉で言葉で殴り付けてやることにした。 生かすか殺すか。生きるか死ぬか。 殴り付けても、殴り付けても、殴り付けても、誰も宝物の存在を信じてはくれなかった。 もう我慢の限界だ。 いつでも男は、荒野を一人で進む。 ヒタヒタと音を立てる。 足音が、僕の意識を軽

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『私は変わらない』

私は変わらない。 おそらくこの先しばらくは。 子牛たちの世話を終えて、牛舎のバーンクリーナーを整備した後、私はいつものように家族の為に夕飯の支度をする。 私の日常は変わらない。けれど変わり行く季節に、そっと足並みを揃える。 何故ならそれが、私たち農家にとっての仕事なのだから。 最近忙しかったから、夕焼けに目もくれず、空の変化を気にも止めなかったけど、空を見上げたら、スプーン一杯分くらいの気持ちが揺れた。 自然の中に身を置く私たちは、自然美に心を動かすことはほとんどない

『おーい、牛だよ❗』

おーい、そんな所で何してるんだよ? 放牧されてるんだわ。  遊んでないで、働けよ。   いやいや、のんびりしねーと、オキシトシンでねーだろうが?これ仕事だから。 丑年だからって、いい気なもんだよな。緊張感持てよ。オリンピックも多分やるし。 いやいや、のんびりしねえと、腸内細菌も胃腸も活動しないべさ。牛乳生産出来ねえだろ。 オマエラ、牧柵で仕切られてねえよな?絵的におかしくないか?   ああ、いつでもオレラは大脱走、上等❗ けど、満たされているから、ここらで飯くった

牛たちの寝床がキレイになっている。放牧帰りだろうか?気だるくて、スローだ。ゆっくりと動くことにする。牛たちは少しだけ、草が太陽から受けた恵みを人に分け与える事が出来る。 『今からゆっくり仕事をする』 写真 小幡マキ

仲間とね、新芽を探しに行く。 私たちは初夏と一つになる。 『初夏』

春を待ちわびていたら、あっという間に初夏が来た。ささくれ立っていた日々はすっかり忘れさられて。また、景色の一部になる季節が来ていた。 『放牧』

予感がする。 ピーンと空気が張り詰める。 思考しない。 ただ研ぎ澄ませる。 『予感』 写真 小幡マキ 文 大崎航

『番犬、じゅうばんばんです2』

小幡牧場の番犬、じゅうばんばんです。 新緑眩しい、どこまでも続く牧草地を放たれた牛たちが遊び、戯れる、素敵な季節が来ましたね。 今年も私は、数えて十五回目の夏を大好きな小幡家のみんなと一緒に迎えることが出来そうです。 私が生まれる前から小幡牧場はあったのかもしれないけれど、実は私は小幡牧場の歴史の生き証人なのかもしれません。 何故なら、昔おそらく相当ヤンチャしてたご主人さまが、放蕩の果てにこの地に流れついたことも。 過酷な労働の果てに、一から牧場を始めたことを決意した

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