癖の話

私は良くも悪くも人に合わせようとする癖がある。

「この人こうしたいのかな」
「こう言ったら喜ぶかな」
「これは反感を買いそうだからやめておこう」
等等、、、
良くいうと協調性があり、
悪くいうと自分がないのだけれど、
これまで同じくらいそれぞれ指摘されてきた。

根っこにあるのは、波風立てたくない気持ち、「それ違うんじゃない?」ということによって労力を消費したくない、もっというと大体のことはどうでもいい適当な性格、とか色々とあると思っているのだけど、それ故に本当にどうでもいい嘘をついてしまう時がある。

たとえば前職の時。
会社はいくつかの企業が入ったビルで、その近くにあるコーヒーチェーンによく同僚たちと休憩がてら飲み物を買いに行っていた。
たまたまプロジェクトが同じ年齢の近い3人でコーヒーを買った日のこと。

「私、ここのコーヒー濃すぎるからいつもアメリカーノにしちゃうんだよね」

と一人が言った。するともう一人も
「すごい分かる」
「ドリップは濃くて飲めないよね〜」
などと相槌を打つので、

「、、、分かる!いつもアメリカーノ頼むわ」
となぜか話を合わせてしまった。
数分後、濃いコーヒー好きな私のもとに差し出されたいつもより薄いコーヒー。
ちょっと違いが分かる発言に憧れたのか、
濃い味と断定されたものを好きと言うのが躊躇われたのか、
その両方だと思うのだけれど、お陰でそのプロジェクトが終わるまで、薄いコーヒーを飲み続ける事になった。多少割高、というおまけまでついていた。


またまたある時は、
転職を機に海外との会議が増え、スキルアップ(という言葉は苦手だか)のためにオンライン英会話を始めたことがきっかけで。

筋金入りの三日坊主だが「高い授業料を払っている」プレッシャーで、週3日のペースで1年ほど続いていた。
登録していたサービスは、生徒が毎回スケジュールによって講師を選べるようになっており、
2〜3人の先生のレッスンをいつも予約していた。
そのうち入会した当初から週一くらいで授業を受けている若い女性の先生かいた。
文法や発音も丁寧に指摘してくれて、感じもよく、とても人気で予約を取るのが難しい人だった。

仕事が多忙だったり、タイミングが合わなくて、久しぶりにその先生のレッスンを受けて話していたときのこと。
何気ない雑談中にふと先生が言った

「そういえば2人のお子さんは元気?そろそろ夏休み?」

ええ、元気元気。いまちょうど夏休みなんだけど、向こうで遊んでて、と返事をした。
独身で、子供もいないんだけど。

「間違えたことを指摘するとプライドが傷付くかな」
「1年も授業を受けてて覚えられてないんかい!」
「私と似た生徒がいるのか?」
などなど、いろんな思いが瞬時に駆け巡り、自分でも分からないうちに「小学生の子供2人の母」になりきって返事をしていたのである。
ちなみにそれ以上なにか聞かれないように、以来その先生のレッスンは受けていない。


たぶんこれからもこうなんだと思う。
そんな特に誰かを傷付けるわけでもない、
自分がちょっと辻褄合わせをする無駄を生んでしまう、癖の話。

冒頭に言った消費する労力と天秤にかけると、いい勝負な気もする。

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