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コミュニティ運営には鍛錬が必要で

 企業のユーザーコミュニティ運営の相談をいただく中で「コミュニティって売上に直結しないから予算は出せない」、「手が空いてるときにコミュマネとして手伝ってくれたら良いんで」と言われることがある。(個別の事象も、組み合わせの事象もいずれもある。)
 気持ちはわかる。
 まず、「コミュニティが売上に直結しない」とは何と比べての話か。営業活動か?それであればたしかに、コミュニティで目に見える売上増を達成するのは難しいかもしれない。
 そもそも、コミュニティに対して色んな役割を期待しすぎている。「コミュニティで新規顧客を獲得したい」、「既存顧客のカスタマーサクセスの役割を」、「アップセル・クロスセルに繋げたい」これらがすべてごちゃまぜで会話されることがある。営業活動もマーケティング活動も、それぞれフェーズによって切り分けられているはずなのだが、「コミュニティをやりたい!」と言われたときはこれらがごちゃまぜにされることが多い。
 「売上に直結しない」という言葉は、コミュニティが必要な肌感はあるものの上司や関係者(ときに株主)などを説得できない言い訳として用いる理由なのではとも思う。 
 コミュニティは魔法じゃない。

コミュニティマーケティング第一人者の小島さんと、数々のコミュニティ立ち上げをされてきた高橋さんのMarkeZine記事をぜひご覧いただきたい。

 ユーザーコミュニティを運営したい企業は多い。そこで最初に、「何の目的でお客様(ユーザー)を束ねる必要があるのか」、「そのコミュニティはお客様にとってどんなメリットがあるものか」を整理したい。立ち上げる側の意図がてんこもりになっているだけでは、誰も集わない。目的をひとつに、シンプルにお客様に必要な状態を考えビジョンを描く。

 目的の整理をして無事にコミュニティを立ち上げたのち、運営し続けることにも鍛練が要る。コミュニティ運営に5年以上携わってきた今でも新たにコミュニティを立ち上げるときには頭を抱えるし、無事に目的を達成できるか、仲間が増えてくれるか、ドキドキが止まらない。これは起業したての頃と同じ感覚。会社経営の目的とビジョンが重要で、そして最初の数人が要なのだ。
 イベントを立ち上げて最初の頃は人が集まったけれど、2回目、3回目と参加者が減っていったり、続けているうちにトラブルが発生したりと、気を揉むこともある。コミュニティは人と人との繋がりだから、このようなアクシデントは常に隣り合わせだ。
 もしトラブルが起きてしまったら、他のコミュニティ運営をしている信頼できる知り合いに相談できたらきっと少しは気が晴れる。話し終えたら「よし、明日もコミュニティ運営がんばるぞ」と思えるものだと思う。後ろ盾のない状態のコミュマネは本当にキツい。心細くて死にそうになる。だから、コミュニティ運営者も、コミュニティ運営者同士の仲間が居ると良い。CMC meetupやCLS高知、CMX Japan、COMUCALなど、コミュニティマネージャーの集いに参加するのをおすすめする。
 そしてコミュニティ運営はたしかに、「手が空いているときに手伝い」ができる。大歓迎である。けれど、手が空いているときに【コミュマネ】するのはなかなか厳しい。これは、思いがある人が、ある程度時間をかけてコミュニティを運営しないといけないからだ。思いとは、製品が好き、お客さんが好き、コミュニティを通じたビジョンがあるなど、なんでもいい。コミュニティ運営はきっと家庭菜園の運営に似ていて、今日の種が明日突然美味しいトマトになるわけじゃない。一から時間をかけて、信頼と関係性を育てる必要がある。
 そして、コミュニティを始めたら後戻りするのはなかなか難しい。いろんな人の想いと人生を巻き込んでしまっているから、引くに引けない。
 だから、運営し続けるのは鍛練が要る。

 ここまで書いたけれど、これからも世の中にたくさんの意義あるコミュニティが誕生してくれることを願っている。


 幼少期も大人になった今も、私はコミュニティを通じて仲間を見つけてきた。これからも心が通じ合う仲間に出会いたいと心底願っている。なんとなく人間関係が築かれるのも素敵だけど、意思を持って人と関わっていきたい。良いコミュニティがあるとそれが実現できると信じている。(クルミドコーヒー影山さんの「続・ゆっくりいそげ」を読んでより実感した。)
 だから、私たちは今日もコミュニティの可能性を信じて、コミュニティ運営を支援している。

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